君が「孤独」と名づけた場所
そのさらに奥に
小さな部屋がある
くすんだ象牙色の壁紙
いくつかの黒ずんだ木の棚
そこには本 小函 硝子壜
円い置時計 何処かの土産といった風情の
人形や ....
あの……おれ、夢見るんですよね、海の。ときどき夢のなかに海がでてきて、おれはサーフィンやってるんです。でっかい波にのってると、そのままヒューッて空に飛んでっちゃったり……あと……パイプ・ラインのなか ....
波リズミカルに打ち寄せる
浜辺 灰白にて広がり
貫く漆黒の直線、
後光帯びる弧空、
やがて訪れる
深い夜闇に
点る明澄な灯り
手を繋ぎ寝そべる二人に
対立し合う世界の響き、 ....
「70歳のきみが読んでおくべき本のリスト」を
いま、作っている
レポート用紙にたて線引いて
万年筆で
大きな文字で
書き損じたら二重線で訂正しながら
「70歳のきみが読んでおくべき本のリ ....
昔のように
直ぐに見られる場所は
かなり少なくなった
山奥の綺麗な川に行けば
たくさんの蛍に逢える
まるで銀河のように
魅力的に飛び交う
蛍な夜
蛍の歌が聞こえてきそう
....
芝居観て朝顔市や万太郎
この風とバルコニーはいま猫のもの
父さんの歯のない笑い百日紅
キッチンの椅子は三脚センダック
六歳の背丈の君の夕焼雲
今日もまた庭の掃除に時間使う木々の生きてる声に聴き入る
テレビ欄似た番組が多くあり視聴率合戦繰り広げられ
大雪を降らす寒波は来なかった雨だけが降り寒い一日
年明けて時の流れが加速して ....
家の窓の中にいると
そこが家の眼だということを
うっかり忘れそうになる
薄いカーテンを開け放ち
風を出迎えると
人の眼も
家の眼も
まばたきする
季節のかわりめに
少し驚くようにして ....
真夜中、夜の川
川面に突き出た瀬岩を
{ルビ躱=かわ}しかわしながら
ぼくの死体が流れていく
足裏をくすぐる魚たち
手に、肩に、脇に、背に、尻に
触れては離れ、触れては離 ....
太陽が創り出す
光の道が伸びていく
自分が進む道が
わかりやすく光って見える
迷うこともなく前進出来る
太陽はいつも側にいる
雨の日は見えないけれど
見えないだけで側にいる
光 ....
横断歩道の上の白線は
決して真っ白であったためしがありません。
必ず、幾多の轍が、靴の踏み跡が刻印されています。
もしも、真っ白な白線がひかれていたなら
ぼくは、その上を這って渡りましょ ....
卵がない
と言うのとまったく同じ重たさで
愛してない
と言う
君は
軽やかに靴を脱いで
眠りはじめる
鳥たちは
詩の滅亡、と言う
巣の作りかたを忘れてしまって
帰る場所がないの ....
ああ吾のあたまがこわれてゆく音がするからからかっつんころこっつん
るりいろよ梢の冬のとけゆくをコーヒーを手に君のとなりで
あるがままを享ける明日は花まつり
アイネ・クライネ・ナハトムジーク弥生尽
音の鳴る部屋で春猫着席す
誰も知らない部屋からの春の歌
パルティータに託す春一つ屋根の下
私は何も聞かないでしょう時鳥
君と在る風景や花知らずとも
自称詩人から
発せられた自称詩が
風に飛び宙を舞って
どこか自称詩人から
ずっと遠いところで
自称詩単独で成立するもんじゃねえんだよ
自称詩は何処まで行っても
自称詩人から切り離されはし ....
大江健三郎が死んでも
誰も何にも言わないからさ
マジで自称詩投稿サイトだと
再認識させられたけどよ
まあ、一応飼育、死者の奢り、芽むしり仔撃ち
性的人間ぐらいまでは
かなり熱心な読者だった ....
そしたら
遠まわりをして、
ゆっくりと忘れていこう
したことのすべて、
思ったことのすべて、
何度でもおなじふうにするしかない
春のすべてを
すみれ、れんぎょう、えにしだ、は ....
いますこし
あなたのかたわらで
あなたのつくる木陰に
わたしをやすめさせてください
かつて
あなたから遠く
遠くはなれていったわたしを
あなたの幹にもたげさせてくだ ....
基本、自称詩には
どんな言葉も使ってはならないのですが
なかでも世界とか宇宙とかは禁句です
そんな言葉に見合うだけの拡がりは
全くありませんし、とどのつまりは
私、思いつきのまま
それらし ....
花の時期を過ぎれば気にも止めないでいた
児童公園の隅にある
赤茶けて錆びた鉄の 大きな藤棚
敷かれた石畳に 風雨で変色したコンクリートの
ベンチ三脚
ちいさな葉が滴り落ちる ....
銀の絃まなうらに響き
吐息に狂う去年の蝶
苦味に触れてくちびる腫らし
ささえ切れずにいのちを散らす
わたしの生は福寿草の見た夢
風にそばだてながら
太陽のパン屑を拾う
土が乾くころ燕 ....
濡れたお客さんの靴が
キュッキュッ、と音を立てている、あちこちで
たくさん売れ残っているコロッケ
棚の照明が消える瞬間を見た
わたしは
いくつ見逃して生きてきた?
死んだ蛙の匂いが ....
とするならば
この世に一切の偶然性はなく
すべて必然性で成り立っていることになる
幸福な生も不遇な生も
安寧な死も悲惨な死も
すべては神の意思で決められ
我等はただその摂理を受け入れ
....
軽やかに
紡ぐ
内から
沸き上がる
思考の糸を
生まれたての
子供のように
普遍の宇宙を
舞いながら
世界の響きに
身を委ねて
沈み込む虚脱は
苦痛の肉体と共
忍耐を背負 ....
わたくしのいのちはたかだかすみれぐさ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26