数えよう
印あかり

濡れたお客さんの靴が
キュッキュッ、と音を立てている、あちこちで
たくさん売れ残っているコロッケ
棚の照明が消える瞬間を見た

わたしは
いくつ見逃して生きてきた?

死んだ蛙の匂いが
アスファルトからむわっとにおい、
アーケードの下の自動販売機は
売り切れの赤いランプがいくつか、

"たくさん"に"いくつか"…
適当に数えてきたものの報いが
少しずつ頭を蝕んでいた

そう遠くない崩壊!

楽しみにしていた映画に
行く気が無くなってしまった
一瞬の悪魔が歯茎をむき出しにしたとき、
在りし日のわたしは
空を見上げて阿保の面をしている

鱗雲を数えている…


自由詩 数えよう Copyright 印あかり 2023-03-25 19:05:22
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