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{ルビ朝=あした}の香りはかそけく、まだ醒めやらない眠りのなかのように。

梅の実がオレンジに色づいている。母は、その二つ三つを手折り。

そよ風に吹かれて、体の熱が解かれてゆく。ああ、わたし ....
ヨランの後に続いて、ゆっくりとした足取りで、
エイミノアが執務室の床に飛び降りる。
「おや、これは何の真似かね? 戦士をわたしに差し向けるとは?」
オスファハンは、いささか困惑したように呟いた。 ....
オスファハンの周りで、いくつもの炎が揺らめいた。魔法の衝撃弾である。
これならば、窓ごとヨランたちを吹き飛ばすことができよう。
ヨランはにやりと笑った。そして、窓のサッシに手をかける。
エイミノ ....
「ヒスフェル聖国でも、エインスベル様は戦犯なのだな?」
エイミノアが囁いた。ヨランはゆっくりとうなづく。
「それで、お前はいったい何をしようとしているのか?」
「それは、時が来れば分かります。エ ....
エイミノアとヨランとは、オスファハン邸の壁を昇って行った。
時折、窓から中の様子が見える。そこでは、
侍従たちが始終忙しそうに立ち働いていた。
それもそのはず。オスファハンはヒスフェル聖国の筆頭 ....
盗賊ヨランと傭兵エイミノアは、
オスファハンの邸宅の前に佇んでいた。
「おい、ヨラン。オスファハンへの取次はもう済んでいるのであろうな?」
「取次ですか? そんなものが必要でしょうか?」

 ....
「祭祀クーラスは何よりも政治を重んじる人間です。
 ですから、前言を翻せば、多くの者が彼から離反すると心得ているのです。
 今、エインスベル様は、アースランテとの戦争を引き起こした、
 政治犯と ....
「どうやらお前は、わたしの知らないことを知っているようだな」
エイミノアが静かな声でヨランに話しかける。
二人はすでに、夜の森に向かって歩き始めていた。
もちろん、野営の跡は消しておく。誰が疑心 ....
盗賊ヨランはにやりと笑う。
その笑いの意味を、エイミノアは推し量れなかった。
「くそっ、これはエインスベル様を助けるための旅ではないのか!」
「あなたにはまだ焦りが見えます。エイミノア様」

 ....
強烈な光が瞬いている間に、エイミノアは三体のグルレッケを葬った。
(敵にも焦りが出てきている。人の造りし物に怯えているのだ)
ヨランは、盗賊にしては不気味なほどに落ち着いていた。
(これが、エイ ....
エイミノアはヨランの皮肉など意に介さなかった。
続いて、第二、第三のグルレッケへと向かってゆく。
狙うのは喉元。致命傷になる部位だ。
「ヨランの攻撃と合わせて、これで半数のグルレッケは葬った」
 ....
「ございます。しかし、魔法弾を浪費することは避けたほうが良いでしょう」
「ならば……」と、エイミノアはひときわ大きなグルレッケに向かって、剣を構える。
「お前がグルレッケの{ルビ頭=かしら}か。い ....
グルレッケたちは獰猛だった。ヨランとエイミノアを食餌にしようと、
襲い掛かってくる。ここは荒野、誰に助けを求めるべくもない。
エイミノアが一頭のグルレッケに向かって斬りかかる。
しかし、群れの長 ....
ヨランが魔法弾を投じる。空が割れて、幾条かの雷が閃いた。
そして、グルレッケ数頭に向かって放たれる。
「ギャッ」という声を上げて、それらグルレッケたちは倒れた。
エイミノアは唖然とする。

 ....
ヨランの落ち着き払った様子に、エイミノアは苛立った。
自分にしろ、数々の戦いを経験してきている。
それなのに、このヨランの冷静さと来たらどうだ。
まるで、怖い物を目にしても物怖じしない赤子のよう ....
「奴の自負などどうでも良い」と、エイミノアは思っていた。
「奴は、ただ逃げようとしているだけではないか?」と、
ヨランからは離れたところに寝所をしつらえながら、エイミノアは思う。
「盗賊の考えな ....
ヨランは苦笑した。彼にはエイミノアには見えていないものが、
見えていたのである。それは盗賊としての本能のようなものだった。
「わたしがどこを目指しているのか、お分かりですか?」
と、ヨランはエイ ....
季節は夏から秋へと移り変わろうとしていた。
盗賊ヨランは今、旅の途上にある。
目指しているのは、ヒスフェル聖国だった。
そして、ヨランの伴としてエイミノア・ラザンが同道している。

「もう少 ....
「なんだと? お前は虹の魔法石を盗めるというのか?」
リグナロスは気色ばんだ。それに対して、ヨランは即答する。
「可能でしょう。わたしが虹色の魔法石を盗み出しても良いのですが……」
何か訳ありの ....
「そして、次々にその位相を変えていく」リグナロスは言葉を継ぐ。
「それが虹の結界だ。どんな魔導士でも、この結界は破れない」
リグナロスはため息をついた。ヨランは意外だ、という表情をする。
「それ ....
「時間変化する結界」と聞いただけでは、ヨランには何のことか
分からなかった。ヨランは再び、リグナロスに問いかける。
「つまりは、何が問題だと言うのでしょう?」
「お前はこの監獄に入ってきた時、何 ....
「仕方がない。お前を信用しよう」リグナロスはため息をついた。
彼とて、祭祀クーラスの謀略は知っている。
エインスベルには、もう時間的な猶予がないのだった。
「しかし、これは我の命にも関わることだ ....
「あなたがエインスベル様を助けるというのは、どうですか?
 リーリンディア監獄の秘密をお教えくださいませ」
落ち着き払った瞳をして、ヨラン・フィデリコが言う。
「秘密とは何か? 何をもって秘密と ....
「祭祀クーラスの現状をご存じでしょうか?」盗賊ヨランが言葉を継ぐ。
「知っている。戦争の咎のすべてをエインスベル様に押し付けて、
 国家の敵として、告発するつもりでいる……」
「そうです。わたし ....
「こんにちは。わたしはヨラン・フィデリコ。
 エインスベル様の側近でございます。今日は、
 あなたにとって重大な用事で参っております」
盗賊ヨランは、おもむろに口を開いた。

その時に眼前に ....
さて、どうしてエインスベルを救出しようかと、盗賊ヨランは考えていた。
常套手段からすれば、監獄の監守を篭絡することが得策だろう。
しかし、それだけで上手くいくのだろうか?
エインスベルが拘禁され ....
しかし、エインスベルは、祭祀クーラスが考えるほど、
弱くはなかった。叔母ミーガンテに対する復讐を終えて以降、
彼女は達観していたのである、すなわち、
「わたしはクールラントの国とともにある」と。 ....
盗賊ヨランは、エインスベルの救出に、
妖精ファロンの力を借りることにした。
ちょうど祭祀クーラスとは逆の手を使おうと考えたのである。
これで、監獄の衛兵たちの心を意のままに操る。

盗賊ヨラ ....
そのころ、盗賊ヨランは久しぶりにクールラントへと戻っていた。
そして、カラスガラの酒場で、美酒に酔いしれていた。
「やっと見つけたぞ、ヨラン・フィデリコ。
 大方、次の盗品の目星でもつけていたの ....
    囚われのエインスベル(二)


「祭祀クーラスは、貴女の命を奪う心づもりでいます。
 すべての国家の実権を、彼に、と考えているのです」
「それはまずいな。ああ見えて、祭祀クーラスはタ ....
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タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
短歌雑詠- 朧月夜短歌1*22-7-6
オスファハンと盗賊ヨラン(五)- 朧月夜自由詩2*22-7-5
オスファハンと盗賊ヨラン(四)- 朧月夜自由詩2*22-7-5
オスファハンと盗賊ヨラン(三)- 朧月夜自由詩1*22-7-4
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オスファハンと盗賊ヨラン(一)- 朧月夜自由詩1*22-7-3
盗賊ヨランの旅(十二)- 朧月夜自由詩1*22-7-3
盗賊ヨランの旅(十一)- 朧月夜自由詩1*22-7-1
盗賊ヨランの旅(十)- 朧月夜自由詩1*22-7-1
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盗賊ヨランの旅(八)- 朧月夜自由詩1*22-6-30
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盗賊ヨランの旅(五)- 朧月夜自由詩1*22-6-28
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盗賊ヨランの旅(二)- 朧月夜自由詩1*22-6-27
盗賊ヨランの旅(一)- 朧月夜自由詩1*22-6-25
囚われのエインスベル(十四)- 朧月夜自由詩1*22-6-25
囚われのエインスベル(十三)- 朧月夜自由詩1*22-6-16
囚われのエインスベル(十二)- 朧月夜自由詩1*22-6-16
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囚われのエインスベル(十)- 朧月夜自由詩1*22-6-7
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囚われのエインスベル(八)- 朧月夜自由詩1*22-6-2
囚われのエインスベル(七)- 朧月夜自由詩2*22-5-30
囚われのエインスベル(六)- 朧月夜自由詩1*22-5-30
囚われのエインスベル(五)- 朧月夜自由詩1*22-5-29
囚われのエインスベル(四)- 朧月夜自由詩1*22-5-29
囚われのエインスベル(二)(三)- 朧月夜自由詩2*22-5-26

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