声を置く
場所がある

かつて
あなたの声が
聞こえていた
時に

声がなくても
時は
流れている

その琉心に
時々あらわれて消える
記憶の岸辺から
泳いで ....
 
 
ため息が
カモメとなり
秋の空高く羽ばたいていく

ヒツジ雲のせなかで
羽を休めていると
ヒツジたちはみな
おなじどこかから
もうひとつのおなじどこかへ
歩いてきたことが ....
 
 
現代詩手帖を
ツタヤで立ち読みした

 イチローが
 内野安打を打つたびに
 子どもが一人死ぬ

というような、うろ覚えだが
そんな詩があって
胸を打った

その後
 ....
 
 
秋は
だれなのだろう
すずしげな顔をして
そのひとが
やってくると
しん、と
静かな音がする

みのりの秋と
ヒトはいうけれど
秋は
みのりなどではない

あまい ....
 
 
朝五時になれば
二階の廊下を軋ませて
起きていた
早起きの父が
祭壇の裏でまだ寝ている

ひさしぶりに
子吉川に
鯉釣りに連れていって
父に話しかけても
眠ったまま
 ....
 
 
死に目に会えなくて
後悔してるなら
その数分前
まだ意識があった時に
電話すればよかったのに
できなかった

ここ数年
父に電話したことがない
理由は
ただ照れくさくて ....
 
 
父よ
あなたをうしなって
私が何を
うしなったのかと言えば

男どうしだからこそわかる
男に生まれた
宿命についてなのだった

父よ
あなたはいつも
私を庇護してくれ ....
 
 
ゴールデンベアの
帽子を買った

父が好みそうな帽子だったので
贈ろうとしたけれど
もういないので
私がかぶることにした

ある日
エレベーターに乗る ....
 
 
味噌汁の
袋をあけると
あなたはいなかった

お湯が沸いてなかった
だから私は
信じることができなかった

もし
お湯が湧いてれば
あなたがそこに
いたのかもしれない ....
 
 
むかしジャイアンツの
王貞治選手が
七百五十六本目の
ホームランを打った

なんてことは
君たち若者は
知らなくていいことだけれども

ちょうどそのあたりに
同級生のお ....
 
 
土曜の夜
妹に
メールを送った
明日暇かと

なんで
と返事が来た
妹は
おなじ市内で暮らしてる

どうして
なんで
なのだろう
思い出を
残したいからなのか
 ....
 
 
空を見あげると
文字のような
白い雲が浮かんでいる

読めそうで読めない
白い文字
もし体があったなら
もっと上手に
書けたかもしれない
けれども
体がないからこそ
 ....
 
 
おさない頃
倉庫に閉じこめられた
なにか悪さを
したのかもしれない

わたしは泣いた
父の足音が遠ざかり
もうだめかと思っていると
ふたたび父の足音が近づいてきて
鍵があ ....
 
 
母の家までいくと
まだ幼い母が
家の前でひとり泣いていた

なにか悪さして
家に
入れてくれないのだと言う

私は扉をたたいた
悪いのは
この娘ではなく
私なのだと
 ....
 
 
もう解約したはずの
父のメールアドレスに
メールを送る
すぐに返事がくる
なんだ
やっぱり生きていたのだ

Delivery Status Notification (Fai ....
まだ続く父の命の残暑かな  
 
連休になると
白いクルマに乗って
父がやってくる

私は連休に関わらず
仕事だから
玄関に届けられた新米で
そのことを知る

ああ、男の宿命とは

親の死に目にも会え ....
 
 
今日もまた
おなじ道を通って帰る

いつかあなたと
偶然会った
あの道だ

白いクルマに乗ると
あなたはいた
これから松島で
ゴルフなのだと言う

そんな日も
あ ....
 
 
私は
私の肉体を
持て余している

父の精子と
母の卵子が結合した
残骸だ

午前三時
肉体は
静かに意思を持つ

捨てにいこうか

いつか
抜け殻になる
 ....
 
 
もし
とりになれたなら
いけるだろうか
そのばしょへ

もし
とりにうまれたら
なくだろうか
そのこえで

もし
とりがしんだなら
くりかえすだろうか
おなじかな ....
 
 
もう
酒と煙草しか
愉しみはなくなった

それから詩

鼻で笑われてもいい
あまえんなと
卑劣に
罵られてもかまわない

ただ、これだけは
どうか私から
奪わない ....
 
 
前田屋というそば屋で
四人でそばを食べた
あれが最後だったと思う

ほんとうは
生まれたばかりの息子と
奥さんのそばに
いなければならなかったのに

遠いところから
会 ....
 
 
真夜中の渓谷で
岩魚を突いた
むかし父とよく来た川だ
腹が減っただろうと
父は登山ナイフで
魚肉ソーセージを切り分けて
私にあたえた

あの日は二十尾とれた
まだ足りない ....
 
 
蒟蒻畑がある
蒟蒻といえば
まだ幼かった妹が
蒟蒻は
おなかをきれいに
掃除してくれるのだと
父に教えられて
がんばって食べていた
記憶しかない
私は蒟蒻畑も
おなかの ....
 
 
他愛ないことで
妻とけんかして
外に出て
煙草に火をつけると
おそらく風なのだろう
秋の涼しい風が
背中を
とん、と叩いた

わかっている
誰なのか
わかっていた
 ....
 
 
お前はまちがっている
と言われたって
世の中がまちがっているのだから
正しいかもしれないだろう

けっきょく
誰にもわからないのだ
ただ、ここに居ては
いけない気がするだけ ....
 
 
遠い存在のあなたに
手紙を書きます
ポストに投函すれば
届くでしょう
住所は合ってるから
あなたはもういないけど

返事は来ないだろう
それでも私は待つだろう
返事を書か ....
 
 
真夜中
帰宅すると
家の前に車が停まっていた
父さんだ
と信じて
走っていくと
みじかくパッシングして
行ってしまった

あれが
父だとは思わない
もういないことは
 ....
 
 
人類みな兄弟
なのではなかった

祭壇の
花の中で鳴く虫も
兄弟なのだった

私の父なのだった
 
 
スーパーマーケットの
タイムサービスで
父が売られていた
お惣菜売場の隅に
さみしそうに立っていた
私が買った
うれしそうな顔をする父に
何か食べたいものはないか尋ねると
 ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
声の置場自由詩2*10/9/23 3:10
偏西風自由詩2*10/9/21 23:47
けっきょくすき家に投資した自由詩6*10/9/20 21:35
秋に自由詩6*10/9/18 4:40
大人の休日自由詩210/9/17 4:03
距離自由詩510/9/17 3:11
男類自由詩310/9/16 4:31
敬老の日自由詩2*10/9/16 3:38
インスタント味噌汁自由詩110/9/15 3:41
ふれぬそで自由詩1*10/9/14 0:58
休日の朝自由詩210/9/12 3:10
空のメッセージ自由詩110/9/11 1:44
倉庫自由詩710/9/11 1:05
風の記憶自由詩510/9/8 2:00
メールアドレス自由詩810/9/8 0:26
残暑見舞い俳句010/9/7 3:26
宿命自由詩110/9/5 4:21
自由詩310/9/4 5:28
自由詩010/9/3 4:23
もし、とりになれたなら自由詩210/9/3 3:58
愉しみ自由詩110/9/3 3:32
最後の家族自由詩810/9/1 0:18
三軒目の鴉自由詩4+*10/8/31 2:10
蒟蒻畑自由詩210/8/30 2:03
秋風忌自由詩310/8/30 0:36
芸術論自由詩210/8/29 23:40
遠い存在のあなたに自由詩2*10/8/29 0:47
パッシング自由詩610/8/28 1:31
祭壇自由詩210/8/26 22:29
タイムサービス自由詩14+10/8/26 2:32

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