昔、秋田の実家を出て、仙台で暮らしはじめた時に、父が大切にしていたラジカセを、私にくれた。
私は、父のラジカセを、しばらく使っていたけれど、CDプレイヤーもついてなかったので、時代の流れ ....
 
 
一週間ほど、産卵床を守り続けていた雌鮭が
力尽きて、下流へ流されていった

鮭の婚活が終わった

命から命へ
そのために、生まれてきたかのように
産卵した雌鮭は、100%、死 ....
そのタイムマシンに
乗りこんだなら
盆正月で
それぞれ一週間だとして
一年に十四日しか
家に帰ることができない

十年で百四十日
ゴールデンウイークを含めても
一年に満た ....
わたしがこの世に生まれた
次の瞬間
ご注文はお決まりですかと聞かれた
わたしはニシン蕎麦を注文した
ニシンも蕎麦も
食べるのははじめてだったのに
へいお待ち、と言われて
ニシ ....
道ばたに金メダルが落ちていた
近くにはテレビも落ちていた
少し離れたところに
金メダリストも落ちていた

それらを拾って
交番にとどけると
お巡りさんがテレビを見ながら
感 ....
  
 
父の隣の病床に
テレビが入院した

治すよりも
買い替える方が安いですよ
と医院長は言ったまま
ろくな治療もしない

翌朝テレビは死んだ
 ....
蝉が鳴いてると思ったら
お隣の山田さんだった

いつものように挨拶すると
蝉になるしかないですね
と、いつもの声で山田さん
その後ふたたび
蝉の声で鳴きはじめた

わたし ....
息子もいつか
フルーツパフェに登りたい
などと
わけのわからないことを言って
この家を出ていくんだろう

わたしもかつて
プリンアラモードに登りたい
と言って家を出たけれど ....
海の上を歩きながら
探し物をしている
水平線に
今日も日が沈んでいく
月明かりの下
見覚えのある親子が
海水浴している
あの頃わたしたちは
家族だった
お金を数えていたはずなのに
気がつくと
銀行の人は星を数えていました
こんなにたくさん
どうやって集めたんですか
と尋ねるので
生まれた頃からあったと言いました
使いきれない ....
不意に、息子がおれの手を握った。

思い返すと、おれが父の手に触れたのは、三回、その時を、今でも鮮明に覚えている。

はじめて父に、釣りに連れて行ってもらった時、土を掘って、ミミズ ....
十年後のことばかり
考えないで

今日のことを
考えよう

なぜそんな簡単なこと
できないんだろう

十年後にも
今日はあるのに
褒めれば褒めるほど
良くなっていく

今宵の
冷奴のように

豆腐屋の亭主が
やけに明るい

豆腐に
褒められたのだそうだ
茎を切り取ると
キャベツは息を引き取った

葬儀は
スーパーかコンビニ
あるいは古風に
八百屋で

買ってきた
キャベツを刻むと

青虫の
お坊さんが出てきた
 ....
蝉のプラモデルを買った
部品をよく確かめながら
組み立て方を見て作った
完成した蝉は
少し違う形の虫だった
説明書に完成したら
ボタン電池を入れ
冷暗所に保管
と書かれてあ ....
空気が冷えると
葡萄の匂いがする

秋でもないのに
葡萄の実も
成ってないのに

初夏のある日
雷が鳴ると
秋の匂いがした

勘違いした
お天道様が

初夏なの ....
隣の部屋から咳が聞こえる
私の咳のように

隣の部屋にも咳が聞こえる
私がした咳のように

咳は止まらない
隣の部屋がないのだとしても

私が私の咳をして
隣の部屋で聞 ....
バスが来たと思ったら
ゴミ収集車だった
待っていたゴミを
ひとつ残らず乗せていく
収集されずに残されたわたし
ふたたびバスを待ってると
停車せずに走り去っていく
ゴミ収集車が ....
檻の外に
世界があると思っていた

檻の内側が
世界だと教えられた

気がつくと
道が開かれていた

ごめんなさい
お母さん

やっぱりここが
世界だった

 ....
戸棚のクッキーが
食べられていた

何もないように
皿だけ残して

同じ大きさの
宇宙の皿に

ふたたび
クッキーが現れる

ぼくに
食べられるために
裏庭に大都会
スクランブルされた
スクランブル交差点
虫が自由に行き来してる
信号は守らない
みな生きる意志を守りながら
なにひとつ守らずに
なにかを大切そうに運んでる
 ....
ものに手を触れると、匂いを嗅ぐ癖がある。小学校低学年の頃からだろうか、今、小学二年生の息子も、最近、同じことをするようになった。
からかうように言うと、きっとあの頃の私みたいに、気にする ....
鮭缶が
海を泳いでいる
よく見ると
泣いている
帰りたいのだ
ラベルを見ると
知らない国
川を遡上するといい
と教えても
遡上の意味さえ
鮭缶は忘れていた
身振り手振 ....
ケンタッキーが
応援している

いつかの
ケンタッキーが

いつかの
わたしたちを

ケンタッキー
として
海老フライが網にかかる
隣の船では大トロが大漁だ
赤身は人気がないので海に離す
いつか大トロになることを願って

畑にハンバーガーの実がなっている
産地に行けば生産者のスマイル ....
去年と同じ
花が咲いている

去年と違う
同じ花が

去年と同じ
新緑が芽吹く

去年と違う
新緑が

その下で
子供が遊んでる

私と違う
同じ子供が ....
真夜中
犬が鳴く
私も鳴く
犬ではないものも
私ではないものも

裏木戸が
閉じたり開いたりする
風が行ったり来たりする
風ではないものも

老婆は
うるさくて眠れ ....
雨が降ってきたので
魚をさす

ピチピチと
水を得たように
よろこぶ傘

骨を撓らせて
鰓呼吸してる
靴屋でスニーカーを試着していた
少し小さかったので
もう少し大きいサイズはありませんかと店員に尋ねると
少し大きいサイズの男の人を連れてきた
いかがですかと聞く店員に
ちょうどピ ....
たうえがはじまると
どろのにおいがしてくる

すがすがしい
どろのにおいがする

わたしのさいぼうも
にわかに
ぶんれつしはじめて

はだがかぜに
すきとおっていく
 ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
父のラジカセ散文(批評 ...612/11/25 19:48
鮭の婚活自由詩812/10/23 23:08
上京タイムトラベル自由詩412/8/29 1:40
注文自由詩412/8/26 21:38
オリンピック自由詩5+12/8/6 0:09
テレビ病院自由詩412/7/9 23:09
蝉の山田さん自由詩412/7/7 20:55
男のデザート自由詩11+12/7/6 22:35
海水浴自由詩512/7/6 21:32
星空銀行自由詩13*12/6/28 22:42
父の手散文(批評 ...612/6/23 23:50
十年後自由詩512/6/21 22:45
褒章自由詩112/6/21 22:21
供養自由詩412/6/18 0:37
部品自由詩4+12/6/7 22:35
葡萄の匂い自由詩312/6/7 0:23
自由詩012/6/6 22:54
停留所自由詩212/6/5 23:32
熊牧場自由詩112/6/5 23:13
月食自由詩212/6/5 0:16
裏庭自由詩4+12/6/4 0:06
変な癖散文(批評 ...112/6/2 23:19
鮭缶自由詩312/6/2 0:53
ケンタッキー自由詩112/5/31 23:25
魂の宿自由詩412/5/28 22:37
新しい景色自由詩312/5/24 22:48
ホトトギス自由詩312/5/23 22:49
自由詩312/5/22 22:47
金環日蝕自由詩212/5/22 22:00
田植え自由詩512/5/19 21:53

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