空の字を見ていた
読むことができなくて
母さんに聞いていた

どうして?

母さんになるはずの
女の人がいたらしかったけど
母さんは知らなかった
知らないふりをしていた

 ....
 
今日友達がね、と
父さんに話しかけると
父さんの背中が
スローモーションみたいに揺れていた
揺れているだけで
振り向きたいのに振り向けない
奇妙な動きをし続けていた
ビデオが壊れた ....
 
夜空を歩いてたら
サンタクロースに会った

そのことを君におしえたくて
さがしたけれども
みつからない
君ははじめからこの世界に
いなかった気がしてくるのだから
不思議なものだ
 ....
 
おなじ水が
おなじ水のほうへ
ながれてゆくように
僕らは
さかなになりました

僕らはいつしか
濡れたからだで
水辺に立ち尽くしていました

はじめて会った
気がしませんで ....
 
むかし恋をした
ひとたちの
面影のすべてが
あなたにはあるものだから
恋がいくつあっても
足りることはなかった

肩をならべて
星空を見ていた
あなたが僕の
僕があなたの
 ....
 
それはとても
単純な出来事だった

君は気づいてふりむいた
犯されることを
確信するように
それが罪であることを
僕も確信した

犯罪は終わった
とても簡単なことだった

 ....
 
詩は書くよりも
語るほうがいい

数日でも
数ヶ月でも
あるいは数年を費やした
詩だとしても

読んでもらいたい一心で
書いた詩は
いつもそこで無意味になる
あなたを前にし ....
 
あなたと
ともに死ぬつもりになって
恋をしたい
というときの
あなたとは
あなたなのか
あなた以外なのか
そのどちらでもないのか
わからないまま
あなたと恋をしたい
わたしが ....
 
つたわらないのは
ことばなの
あるいはぼくの
そんざいなの

あなたは
残り香になって
いつもここからいなくなる

この初雪みたいに
かたちもなくとけてゆく
てのひらのなか ....
 
無鉄砲な人ほど
やさしい人はない
人を撃つことの
痛みを知ってるから

無鉄砲な人ほど
ひどい人はない
人を撃つことで
守ることができたのに

社会は答えを
ただのひとつさ ....
 
木枯らしに吹かれて
落葉たちが駆けていきます
その先で
誰かが待ってるかのように
子供たちが
追いかけていきます

それは
生きるための
練習のようにも見え
あるいはいつか死 ....
 
開けっぱなしの窓から
雨が零れている

前にも同じ
失敗をしたことがある

ひとりぼっちで
濡れた床を
拭いていたことがある

誰かとお別れして
後悔していた
ことがある ....
 
セーターが
箪笥の中で冷たくなって
死んでいたので
あたためてあげようと
思った僕のからだも死んでいた

箪笥には
僕以外にも
死んでしまった
家族のセーターがきれいに
冷た ....
 
約束をした
もうひとりのあなたと
あなたには
内緒で

約束のことを知らない
あなたは
なぜかいつもより
やさしかった
気がした

ひとを裏切ることが
ひとをやさしくして ....
 
二人なら
うまくいく
失敗はしないはず

死ぬまで離れない
あなたの愛が
私を影に追いやる

日陰で私は
どうすればよかったの
くすぶって
今にも爆発しそう
火花を散らし ....
 
言葉にならないことを
言葉にしなければならない
気がしてるだけで
声にならずに消えていった
言葉たち

僕はそれらを愛し
軽蔑した
毎日見送ることしかできない
君の横顔を見つめ ....
 
僕らは
指定席とよばれる
ひとりずつ与えられた席にすわって
ときには時速三百キロメートルを超える
レースドライバーのように
ふと孤独の恐怖に気づいたかと思えば
またすぐに慣れてしまっ ....
 
コスモスの紅差す秋の枯野かな

枯れたまま立ち尽くす葦の長い影

肌朽ちて懐かしいねと笑ってる

思い出すふと水辺で待つ君を見た

枯葉焼く煙がまっすぐ立っている
 
 
ぼよよんと
ゆれながら
おっぱいが泣くのです

ぼよよんと
あふれながら
波が岸辺に
たどりつくのです

ぼよよんは
涸れてしまうまで
泣いてます
命が命になるまで

 ....
 
眼鏡をかけて
泳いでるこの世界は
海の底

けっして
外してはならない
溺れてしまうから

眠るときだけ
外します
息を止めて
眼鏡から
あふれる海 ....
 
その噴水のある公園に
二十五になったばかりの
僕がいる

もしまだそこにいたならば
連れてきてほしい

そこにいてかまわないと
前置きしてから
やさしい声で伝えてほしい

 ....
 
白い書物の中で
あなたとはじめて会った
数千年の時を経て
変わらない声と声が
光に影を差して立ってる
向き合いながら
照れくさそうな文字になって

たとえば
あなたが好きですは ....
 
つめたく湿った朝
目がさめると
屋根から鳥の足音が聞こえる

降り立って
昨夜の戦況を
せわしなく伝えていた
兵士の声は力尽き
衛生兵の途方に暮れた
足音が聞こえる

数匹 ....
 
こどもの頃
お正月とお盆になると
母の実家に行った
山々にかこまれた盆地に
田んぼが海のように湛えられ
島のように点々と
街や集落が浮かんでいた

遠くに見える
おおきな島に駅 ....
 
待ってる
ということは
生きてる
ということだから
待ってくれなかった
そのひとは
死んでしまったのかもしれない

遠くから
改札口を見つめるそのひとは
待ってる
というよ ....
 
満月が
おおきくくちを開けて
新月になる
夜空をひとつ
噛み終えるまで

いくつもの時を食べつくし
それでもなお
夜はおとずれる

無数の星は彼らの目だ
今日もどこかで
 ....
 
釣りは飽きてしまったようだ
さかながいないからしかたがない
父さんだけが夢中になって
往生際がわるかった

ふりむけば
木のベンチで息子がねむってる
一億年前から
そうしていたよ ....
 
きのうの夜
妻とけんかしたのだ
きっと疲れていた
今日は帰りたくなかった
だから僕は家の前を通りすぎていった

同じ色の
とても小さな家が
線路沿いにつづいてる
青でもなく緑で ....
姉さんの
制服の胸のあたりが
丸いかたちをして濡れていた

その日は
雨が降ったわけでもなく
ただ姉さんは
少しだけ遅く帰った

姉さんの
こどもの口に
はじめておっぱいを挿入す ....
 
幸せなときに限って
幸せを知らない
河原のベンチに座りながら
そんな時が誰にでもあるように
思うことがあった

ベンチに座ると
夏の虫が僕のまわりで
いっせいに鳴きはじめるものだ ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
「空の字をじっと見てみて」「うん、みたよ」「パンダの顔に見え ...自由詩0*08/11/25 0:58
友達自由詩208/11/24 22:52
プレゼント自由詩6*08/11/24 14:43
おなじ水のほうへ自由詩1208/11/23 23:13
自由詩208/11/23 15:30
単純な犯罪自由詩1*08/11/23 14:25
詩のための詩自由詩108/11/21 23:18
「無鉄砲社会読後感」の読後感自由詩608/11/21 0:51
初雪自由詩408/11/21 0:08
無鉄砲社会自由詩6*08/11/19 2:03
子供たちの秋自由詩708/11/17 22:44
失敗自由詩308/11/16 16:54
あたたかいものを、ひとつ自由詩4*08/11/16 0:09
約束自由詩408/11/15 19:46
愛のかげり自由詩0*08/11/15 0:10
恋の言葉自由詩308/11/13 23:18
指定席自由詩4*08/11/12 23:11
秋のノート俳句008/11/12 1:20
ぼよよんの詩自由詩108/11/11 23:15
眼鏡のせかい自由詩308/11/11 22:10
写真自由詩308/11/11 1:15
白い書物の中で自由詩508/11/9 20:22
鳥たちの雨自由詩308/11/8 20:08
傷跡自由詩308/11/5 23:55
待つということ自由詩208/11/5 4:28
夜を噛む自由詩8*08/11/4 4:20
一億年前の休日自由詩2008/11/2 19:24
自由詩308/11/1 0:18
母乳自由詩3+*08/10/30 22:39
玄関の虫自由詩608/10/30 0:38

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