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土に擬態してゆく空に、幾つもの六花が咲いてゆく。傍らを、頬や目尻を動かすことなく移動してゆく直方体。中には蟻が蠢いている。そう、伝え聞いたことがある。かつて蟻だった彼は酒を飲む度、種になりたい、あの六 ....
終わりの淵
よろこびの帽子
光を落とせ
光を下ろせ
滴が降り
葉になり 虫になり
家を巡り
静かに去りゆく声になり
大きく碧いまぶたの浪が
ひらく ....
何かですらない 場所に
何かであろうと 場所を僕は探そう
この地べたを脱出するようにして
影の中でもう一度全体になろう
排斥場からは ささやきがしている
枝となっていく岩ではなく
刈り ....
あをによし
奈良のみやこの若葉の頃は
群青 {ルビ縹=はなだ} {ルビ甕=かめ}のぞき
{ルビ藍濃淡=あいのうたん}に夜が明ける
{ルビ瑠璃=るり}{ルビ玻璃=はり}きらり
渡来の品を
....
白髪のせこい女の包丁を研ぐ音が聞こえる
白髪のせこい女は男の股間のもりあがりや
たまに見る半身裸の姿を見ては 心底喜んでいる
ずりずりずりずり
女がにやりと笑う
夜が身震いす ....
薄墨色に暮れかけると
そこは
沼の底
ゆっくりと
沈み込む
響かない 足音
重く
さらに重く
山あいの道
影さす 道
ツタの這いまわる 木々の茂る
細い 細い 道
....
地平線の彼方に大きな夕日が沈む
地平線の見える大地など、僕の住んでいる街には無いのに。
無いのだが、地平線を僕達は確かに感じとることができる
感じ取ることができるので
僕は地平線に向かって ....
下層にあるもの
サブストラータム
複数形は
サブストラータ
地面を引き剥がして
心の内面にいたる
荒らされた地表に
どこまでも黒い水
にごる声
滞る言葉
翳る星の上で
....
学校の帰りに、風の音に耳を澄ませる。
街の喧騒も、誰かの話し声も、全てがどこか遠い。
肌を撫ぜる風が愛しくて、空を仰いだ。
昼と夜の間。青と朱が交じる。
雲は、一つも浮かんでいない。
太 ....
成層圏 私風景
{引用=
そらのひろがりが 【 騒音のやまない
手にあまるこんな日は、 プラタナスの並木
苦しいのがわかっていながら ....
秋がささくれて冬になる
きっと もう
と、つぶやいているときでさえ
確実に近づいてくるものと そして
確かに遠ざかってゆくものとの あいだで
音もなく消えてゆく そのときのわたしをどうか ....
出会って
眼と眼が合ったり
話し合ってみたり
そっぽを向いたり
いがみ合ったり
思い焦れたり
躊躇ってみたり
愛し合ったり
すれ違ったり
そうして
いつかは別れる
飲み始めて ....
悪いけれども
あたしは、好きなものは手に入れるよ
それが許されるのだから
どんな代償を払うことになろうと、
そんなことは知ったことか
――――――― 男の首をほしがるおんなも、
....
砂場で砂あそびの子どもたち、そろそろお帰り
うねうねと前線がやってくる
天気が崩れて落ちてくる
日没とともに
砂場で砂あそびの子どもたち、そろそろお帰り
もう十分楽しかっただろう?
潮 ....
{引用=今日は今日を生きて
生きていることに少し感謝しました
少ししか感謝できなかったのは残念ですが
明日は明日を生きて
今日よりも少しだけ多くの感謝をします
ほんの少しだけか ....
夏のそらばかりが 身をせめる
南風の吠ゆる 島の岬に
母のかたみの 赤い櫛で
髪を梳く
罪を乞うでなく
罰をあがなう 身にもあらず
まばゆく うれしそうに
紺碧色に待つ 海 ....
非人間に因り手を懸けられた青き児は
夢をみていたのです
緑色を胎内に吐き出され
無垢を嘯く輩に嫌気が差していた所です
あおてんじやうを
眼球に焼き付けました
染 ....
忘れていることがある
いつも夕暮れ時におもい出すこと
夜を歩けば
やみが足にまとわりついて
わたしを放さない
やみに触れる
手のひらはあたたかい
なぜだか知らない
知らないとい ....
{引用=夜の階段を下りて
一階はとっくに海に沈んでいったので
その、密やかな貝を避けながら
水の中につま先をいれる
どこまでも透明な
水晶を重ねて束ねて作った
深海は 魚を飲み込む
....
私の
この私でさえ
わからぬこの気持ちを
わからないままにわかるという
人を愛したいのだろうか
今の私には
それは違うという声は受け入れがたく
たとえば交差点でぶつかった肩にとま ....
一度でもいいから
朝を起こさないであげたいな
ゆっくり眠らせてあげたいな
朝は寝坊したことがない
サボったことがない
勤勉なんだな
それは昼も夜も同じ
きっと宇宙は真面目なんだな
だか ....
シルクスクリーンのような
霧がうっすらと地表を覆う
田圃の道路走行
奥久慈の紅葉に
男体山?
その後
袋田の温泉街を抜け
歩くこと数分
瀧不動の参詣は五分
人工の遊歩道は
....
新しい未来の幕開けだ新しい過去の幕開けだ
手には閃光を
足には大地を
手には閃光を
足には地を
楽しそうだ楽しそうだ
放埓に道の辺を埋めては幾重にも重なり
紅く、山もみじの朽ち葉を華やかに散らして
浄土の途には細やかな初しぐれ、
ただ傘もなく二人痩せた身を苛む。
勾配のぬるい瀝青の坂道には影もなく
緋色 ....
ひとの詩が読めなくなって久しいので
もうずっとひとり遊び
読んでいて今日は
ひかり
という言葉をひろった
ひのひかり
つちのひかり
みずのひかり
ひのひかり
つきのひかり ....
小学校にはいって間もないころだ
ぼくは母と兄とで電車に乗った
扉が開いて母が座った席の左隣を
すばやく兄が占領した
母の右隣の席は空いていない
ぼくは兄の隣に座るしかなかった
母は電車 ....
{引用=off
部屋の明かりを消しても
真っ暗にはならないんだね。
夜たちからは、もうとっくに
ほんとうの夜なんて
消え去ってしまったみたい。
街灯の光がカーテンを透かし
....
太陽が沈んでいく浜辺に座り込んで
もうすぐ暗闇に包まれてしまう世界を眺めていた
寄せては返す海の音は昨日と変わらずに
潮騒は今日の日を運んでいく 優しく穏やかに
水平線の向こう側へ ....
その日、僕は仕事を置き去りにして
青山墓地に向かった。
そして、
その日、僕の何かが壊れた。
さよなら神様
神様は本当に死んでしまったのだ。
五歳の僕は
毎月現れる本屋から
月 ....
私はオペラ歌手。
いま歌っているのは「マラソン」という曲。
指揮者はひたすら円を描く。
永遠に円を描き続ける。
私は指揮者に与えられたペースを守る
しかし、
....
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