寄せる波に向かって
心の潮「A/アー/(ラ)」の音を放つ
わたしと海はパラレル
返す波からは原始の抑揚
「G/ゲ-/(ソ)」の音がかえってくる
海は ....
夏の縁側に腰かけて
入道雲が真っ青な空に湧き上がるのを
見ている
背後の部屋は暗くて
ひんやりとしていて
もらい物の生菓子を食べようと
手を伸ばした瞬間
チリリ
(一陣 ....
すべてのものが
あたたかい涙を流すのは
いとしいとき
いとしくて
だれかを抱きしめたくなるとき
天も
だれかがいとしくて
抱きしめたくて
泣いた
晴れの日に泣いた
....
君がこの白地図を撫ぜたときに
世界が始まる気がしたんだ
ほんとさ。
悲しい幻に似た
鬱屈した午後の空気
燻ぶり始めた誰かの夢が
君の首筋を冷たく伝うときは
呼ぶといい
....
きっとまだ
折り返しにすら着いていないと思う
それでも
人生の半分以上
きみがいた
裁縫の授業が苦手で
いつも居残りしていた
なかなか針が進まないわたしを
いつもこっそり手伝っ ....
生産性をアップさせるために
無駄をとれとかいうけれど
それはたぶん素晴らしいことだと思うけれど
承服しかねるじぶんもいたんだ
無駄なんてない、って
月あかりが万物にしみていました
....
禍々しく106ミリ無反動砲を六門装備した
巨大な蟹のようなM50オントスの装軌式車両が一台、
まったく人気のない夜の街を過ぎて
ビルに潜んだ甘い夢を殺しに、兵士たちは散った
すべての忌わし ....
朝、目が覚めたら
右の手のひらがチクンとした
キップだった
日付はちょうど1年前の今日
行き先は書いていなかった
チクン
今度は胸が痛かった
その日付を忘れるはずがない
忘れら ....
小さく咳をして
教室に吸い込まれる
革靴だけが吸い込まれずに
僕のいない廊下に取り残される
「大学の勉強などいったい何になるか」
これは本質的な問いなので歓迎されない
チョークで汚れた ....
太陽という名を持つその花は
光の輪郭を持っていて
「笑って」
と、ほほえみかけてくるのです
大切なものを失って
すべてを噛み殺して
悲しみよりも深くたたずむその人の
かすかな ....
九十まで生きたいとか言っていた姉が
今は七十でいいみたいだ
介護を受けれるか受けれないか
ボーダーラインの老人たちの調査をするのが姉の仕事だ
老人は環境をかえるとすぐにボケてしまうらしい
だ ....
中学は十時半消灯で
どきどきしながらラジオを聴いた
ラジオは抜き打ちでよく没収された
そのたび新しいのを買った
イヤホンからもれるのが怖くて
布団をかぶった、秋だった
人生の軽さを言いながら人生の重みを感じさ
せる。
そんな境地に僕もいつか辿り着けるの
だろうか。
ノイズとスクラッチとギターとピ
アノと正弦波とドラムとベースとライムのよ
....
ここから遠い世界の果てまでゆけば
太陽に触れることができる
子供の頃、そう信じていた
でも、何故か僕は
朝陽が昇る東ではなく
夕陽の沈む西ばかり見ていた
この世の果てに想いを馳せて ....
ひざ小僧
どこの小僧か知らないけれど
みんなが知ってるひざ小僧
スカートの下でかくれんぼしてる
いやらしいなぁ
だけどね
転んだときに一番傷つく
ひざ小僧
私を助けてくれるから
....
上澄みをそっとすくう
余分なものはなく
柔らかくしなやかで
手のひらからさらさらとこぼれる
太陽の光で酸素を作り
葉は濃緑を強める
表面の細い産毛には
小さな雫が張り付いている
....
小さな巻貝の奥に
灯りがともる
小さな海の人が
書き物をしている
波から聞いた話を
青いインクでしたためる
書き終えると
小さくてごく薄い紙片を
丁寧にたたみ
小さな封筒に入れて
....
風の中のミィ
押し潰されそうな
小さな体を
必死に支える
可憐な笑顔
憶えているかな
丸く小さな影
ただ泣いていた
小学校の下駄箱を
風の中のミィ
一瞬でアイド ....
私の小鳥が死んだ
何度か獣医さんに診てもらったりしたけど
これが胸騒ぎなのだろうか
部屋の錠を開けるのももどかしく逆光に沈む鳥かごへ駆け寄れば
初夏の陽射しのなかで彼は小さな亡骸と化していた
....
てのひらの痛みを
紙風船のようにかるく
空へとけこませ
誰がここまでたどりつき
誰がこの境界を踏み越え
誰がその先の景色を見るのか
吹きすぎて丘を走る
すれ違った季節たち
付加 ....
授業中
屋上でトランジスタラジオ聴いてた誰かは
出張先で
セックスフレンドと寝てる
隠し事がでっかくなっちまう
考えることがまたひとつ増える
Re:なにかあったの
というサブジェクト ....
夕暮れまで遊んで
楽しく笑って
喧嘩して泣いて
何と無く時は過ぎて
帰ろうとする
私の手をとり
「もっと遊ぼうよ」
震える手に
私も肩を震わせた
本当は
「バイバイ ....
あさとよる
うみとそら
砂浜は境界線
ふたつでひとつ
よせてかえして
あいまいに笑ってる
目はふたっつ
耳はふたっつ
瞬きのためいき
ふたつでひとつ
すってはいて
風が遠くを ....
気付いていなかった
守られていること
包まれていること
てのひらにいること
振動を感じて見上げると
電線で翼を動かす雀
池の鯉は大きく跳ねて
しぶきをきらきらと飛ばす
特別 ....
丘陵にひかる
白い壁とガラスの
その中に彼女はいて
いつもの声色で
「やあ」とほほえむ
黒い髪に白いバラ
ブーケにはビバーナムという
時の花
“ 私に娘が生まれたら
このドレスを ....
{引用=嬰子の褥
闇のひとつ奥に蠢動する白光体がたしかにあった
血に焼かれた嬰子が視えない手のひらに止まって
私の身体に続いている
いやへその緒はぜんまい状に闇に溶けて
それはもうわ ....
毎日同じ時間に起きて
同じ道をたどり
同じ席につく
そして
退屈な時間が流れだす
ここは私の場所であって
私の場所ではない
晴れた日には知らない道を歩きたい
見たことのない景色に胸 ....
風を凌ごうと咄嗟に
破り捨てた五線譜でビバークする
知っているよ
その風の強さを
その風の冷たさを
君の涙が乾いていく
音楽の軽さ ゆるやかに
流れるように声を重ねて
君の痛み ....
群青をひとつ、ひとつ
飽きるまで数えてみる
雨上がりの夜
余計なものは流れてしまい
ぴんと張り詰めた大気
群青
水際を囲うように
涼やかにひらひらと
色を落とすあやめ達
群青 ....
※
ちゃぶ台をひっくり返す
それって池田屋階段落ちのカタストロフィなのか
それとも寺内貫太郎の癇癪玉が破裂したのに似ているだけなのか
亡くなった父親がちゃぶ台をひっくり返したのに一度だ ....
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