産まれ生き苦しみそして死んでゆく
たった一行闘病短歌
日赤の病棟入り口掲示板
嘆歌とあって朝顔も書く
これからは口語短歌の詩人です
出来損ないの痛みを堪え
銀色に輝け外科 ....
若)まろがふたり でそろった!
いまからね、バチバチッと
かっこいいとこ見せあうからね
その間に 逃げるんだよ
面白そうだからって見ていて ....
夕立に西日がさす
顕れた私の表皮のように
小さな個室にて
スチールと硝子の板が
点と点で結ばれてゆくのを聴いている
白いシャツの青年が
自転車で脇をゆく
ずぶ濡れの帰り道には
明日 ....
深夜の台所で
小皿にのった梅が
まあるく佇み
影を、伸ばしている
些細なことで取り乱す
僕とは違い
微動だに、せず
のっぺらぼうの顔で
ただ、そこに。
....
アリスはそこへ乱暴に投げだされ
黒い瞳に大粒の涙をためた
やがて朽ちてゆく散らされた意味の
灼熱に乾いたサハラカラーの砂漠の丘に
一面、蒼く鮮やかに咲く魔の花の
雑音交じりの夢へといざなう、 ....
昔たってそんな昔じゃない昔
筑豊とかの炭鉱では女のひとも坑内で働いていたらしい
上半身裸で乳房丸出しの腰巻き一枚
薄暗く蒸し暑いヤマの奥底で
気の荒い男衆に混じり
掘り出したばかりの石炭 ....
{引用=憂鬱な目覚まし時計、日常へ旅立つ自転車のペダル、決曜日
ぽっかり空いた胸ポケットに立葵を活ける、華曜日
眠れる森に訪れたファーブルたちの欠伸、睡曜日
静かなく ....
うだら
うだら
無人のコインランドリーの中
一台のうずまき式洗濯機が僅かばかりの汚れものを乗せて夜の住宅街アクセルを踏んだ
5分間
区間内の街角を回遊するツアーバスのような
....
根津
百歳の藤猫侍る祠岩
杳として千本鳥居入ったきり
かはたれの緋牡丹 墨の袖も引く
貸本屋 {ルビ眇=すがめ}の映る飾り窓
不寝
あぶら揚げ咥へたるはゝ月抱く
胸はだけ ....
わたしにはみずこがいる
それにいつからか名前までつけている
ときどきゆめにそのこがあらわれる
ベランダでげんきよくはねてあそんでいる
あぶないからと注意しても
わたしをなめているのだろう
....
光を切り裂いたカーテンの色は青く
寝癖はやっかい、目が腫れぼったい
母親が漕ぐ自転車の後ろにしがみつく派手なズボンの幼稚園児が
男の子なのか女の子なのか判別できない
それを何気なく追い越してみ ....
こずえとこずえをむすんだ線で空を区切ってください
右側にあるのが悪い雲
左側にあるのが良い雲です
どちらにも雲がなかったら
そこが天国です
しもた屋の二階の窓から眺める世間は
霧雨にすべてが濡れている。
少し前囁かれた
ちょっと起きておくれよ
という女の声に 後ろ髪引かれ
そのまま昼まで 居付いたが
この雨で世間に戻 ....
どこまでも果てしないブルー憧れは波の彼方に今も揺られて
水平線沈む夕日を背に受けて終わった恋を海に葬る
悲しみは寄せては返す波のよう真珠の涙{ルビ零=こぼ}れたままで
今もなお忘れら ....
白紙の畑がひろがっている
一本道をゆく
と、ポツンと
巨大なショッピングセンターがある
集合住宅のコンクリート塊が墓標のように、山塊のように建っている
そんな
....
ずっと足踏みしている
足元の岩は削られ
砂となっている
足掻いても
足掻いても
全く前に進めない
このまま足元が削られて
深い深い穴になり
地の底に堕ちてゆくようだ
命綱 ....
握りこぶしに八割の水分
寝具に横たわり
タンクトップも脱いでしまって
タオルケットに巻かれてしまえ
コットンが素はだかを優しく撫でる
身体感覚が昇るからうつぶせを楽しんで
ひと ....
あんな人になりたい!
あんな風に曲に曲を、詩に詩を編み込んで、
己の世界を表現したい。
あんな人になりたい!
あんな風に己の力で、己の道を、
踏みしめ歩いていきたい。
あんな人にな ....
それは忽然と現れた。
スパニッシュブルーの空を突き刺してそびえ建つ、
研ぎ澄まされた円錐形のオブジェ。
傾斜角75度の強い意志が天を貫いている。
指し示す先はどこまでも高く
その先端から曖昧 ....
地下鉄の窓に
乳母車の娘の顔が
蛍光灯に照らされてぼんやり映る
背景はグレーの壁で
配管が横殴りの雨のように流れる
全体が切れかかったTVのような眺めだ
帰れなくなった宇宙飛行士が
....
話せば判る
夫婦喧嘩した際、父が母に言い放ったような
パパとママ、どちらが好きなの
そんな母の発した答えようもない問いかけに弟と私
布団のなか、ひたすら息を潜めるばかりで
話せば ....
大人になって
触れないものが増えました
こんな顔をして家には帰れない気がした
ヨシミは自転車で夜を町を走っていた
お母さんをさがしてパチンコ屋さんをわたり歩いていた
カゴのなんでもバッグにケイタイがのぞいていた
目からなみだがあふれていた ....
{引用=
またいつもの
自転車にのって
ぼくがむかっていた
先とは
どこだろう
でも
いまは
どこだろうがかまわないおもいでいっぱいなのは
はたして
ど ....
昔々(むかしむか〜し)は無関心
徐々徐々にに親しくなって
今は友と呼べる奴
昔々いつも傍らに蹲(うずくま)り
たまには気になるときがあるが
それはいつでも憂鬱さとともに
昔々は青と ....
蜂蜜の瓶で溺れ死んだ
ミツバチのことを想ったら泣けてきた。
べつに私の涙なんて
彼の家族の足しにもならないのだけれど。
朝の訪れるたび
切り離されたからだを思う
昨日との交信が途絶えて
寄る辺ない
なまぬるい風に
輪郭を確かめる
季節がしみこんでくるのと
季節に染み出していくのが似ている ....
泣く女
泣く女は階段の下で
セーターを編んでいる
赤い毛糸と緑の毛糸で
哀れな女
シンデレラは靴の片方をなくした
シンデレラは靴の片方を探している
シンデレラは義足の片足 ....
ママは
数センチ 浮いてるんじゃない?
なんだか
ふわふわして
とらえどころがないよ
娘は言う
中学の頃
娘の友人と同レベルの
テンションで話す
あたしが
恥ずかしく ....
逃げ水の中で魚が跳ねて
アスファルトが柔らかい
太陽は無関心な発光体
空はどこまでも遠く
僕は許されている
「だけど」 ....
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