紅葉の山々
渓谷沿いの道はその時々の赤
その時々の黄
その時々の青
その時々の緑
山の頂の先には
幾分くすんだ青空
道のRは気にならず
正面に最初のトンネル
トンネルを抜けると
....
敷地のすぐ南側に土蔵がある
今や歴史はすっかり耄碌し
殆ど零れ落ちた漆喰のそこを
しかし私は依然として
こよなく愛でる
穏やかに晴れた日は
土壁の体温が心地いい
昼下 ....
僕は
ギリシアの神
エロスの
敬虔なる信者である
という信仰告白から
物々しく始まるこの詩
エロスって
エロ本の神だよね?
と言う疑問はさておいて
ゆうこりんと
ほしのあき ....
背のちっちゃな女の子
男好きのする笑顔が印象的で
逢う度に違う男の子と一緒だった
背のちっちゃな女の子
いつも彼氏の背中に隠れてた
風が吹けば彼氏の体を風避けに
雨が降れば彼氏の差した ....
村田さんと 大谷さん(17歳〜27歳の女子2人組)
『 ヒーローインタビュー 』
* : * : * : * : *
村:もし男に生まれてたら 何になりたい?
大 ....
発明家になりたかった
べんりなものをつくりたかった
ランドセルから空気がでて空を飛ぶ
肩掛けをひっぱって空気を調整する
ほんとは靴でそうしたかった
でもちいさすぎるし
....
早朝の河原で
かすかに首を動かし
じっと横たえる獣がおりました
わたしはそっと抱き上げ
セーターにくるみましたが
手袋を噛んで
小さく鳴きました
カラスにやられたのか
鼻先に赤いも ....
空を見上げた
ひつじみたいな雲が浮かんでた
真っ白で機嫌が良さそうな雲だ
空を見上げた
飛行機が音を立てて飛んでいた
僕が見たことのない国に行くのだろう
空を見上げた
天使がふわ ....
台所が火事で燃えている
私が寝ている間に火が消えてくれるだろう
そう思って寝ていても
火は消えなかった
もうかれこれ
半年になる
強風が冬を迎えにゆき
冬を連れて戻ってきた
....
ほんの少し
ほんの少し
歩幅が違っていただけだよ
ほんの少し
ほんの少し
呼吸が違っていただけだよ
あなたが優しいこと
あの子も知っている
あなたの痛み
あの ....
お前の髪は
月の雫に青く濡れて
俺の瞼を鼻先を、
腹を冷たく流れて行った
お前の白く滑らかな
体をなぞって行くと
掌に吸い付く曲線はさざ波を立て、
まん丸い乳房は大きく揺れて指から溢 ....
ゆで加減に失敗した海鮮パスタを食べていると玄関のチャイムが鳴って、ますます気分が滅入った。お届け物でーす。ドアを開けるなり、男性宅配員の間延びした声とともに――これはなんだろうか――賞状などをしまっ ....
大内峠から徒歩で
大内宿の街道往還に出たとき
秋とは言え、紅葉も落ちかけの季節は
旅人の心も体も
芯から萎えさせ冷たくさせる。
街道沿いの落ち葉を踏み締め
漸く視界が開けたところは大内 ....
<ブラッディ・マリ―>
ブラッディ・マリーと君の唇の色が同じだから、
どちらに口をつけようか迷っている。
君は何のためらいもなく赤い液体を飲み干す。
重なったその色が乾く前 ....
うつろな視界の外側で小鳥の囀る気配
ひとしきり肩の上を行ったり来たり
動こうとせぬ私の様子をいぶかしく感じたのか
右の頬を軽く啄み樹海の奥へと飛び去った
時の感覚を失う
それがこんなにも ....
幸せ
孤児院住まいの見習いウエイトレスは
真っ赤な口紅のついたコップを載せた
ステンレスの盆を厨房の隅にそっと置くと
裏口から同じくらいにそっと出た
ダイアモンドとマスカラのお客はま ....
{引用=
草の先を
むすんで
おくのだという
悪戯心
という
生易しいものではない
もっともっと切羽詰まったもので
おさない死児が
先に逝った親しいもの ....
26年目の記念日
落ち着く和食居酒屋の個室で
あたしは
貴方に
指輪ケースを差し出した
もう一度 はめ直して
いつの頃からか
あたしの薬指には 指輪の跡さえ
なくなってい ....
父さんはニ層式洗濯機の中で
ぐるぐる洗われている
家族みんなに
臭いって言われるから
姉さんは乾燥機の中で
父さんと同じように
だけどひっそりと回っている
好きな ....
月曜日は生ゴミの日
ロマンチストとエゴイストは
しっかりと分別してね
何かを背負っていないと
ビル風に飛ばされてしまうよ
なんて
あなたの
猫も興味をもたない
そのプライドは
き ....
重ねると傷になるからね
特に完熟
「桃太郎」は品種名
「トマト 妻せつ子」はブランド名
品種による
大玉、ミディ、ミニは、あるけれど
それだけではない、育て方で
品種の普通より小 ....
秋になったら家を出る
軍手とシャベルを持って遠く遠く
九月いっぱいは歩き続ける
十月は釣りなどして過ごす
十一月が木々を染め出したら
場所を決めて、あとは待つ
落葉を敷きつめてその上に座る ....
永遠が何だって言うんだろう
そんなことを考える暇があるなら
今すぐこの喉の渇きを癒して欲しい
君の首筋に咬みつきたい
それが僕のすべてさ
暗闇の中で求め続けるもの
それはこの喉を潤 ....
青空が恐い
とても綺麗で
大きな青空が
見てると
胸の中で
何か割れそうな気がして
怖い
....
「じれったい!」と叫んでいた男の背中にすがりつこうとして
彼が必要としてたのは私じゃないことに気付く
う〜ん、淋しいかも
開けてはいけない扉を自らの意思で開けてしまったのだし
それが愛 ....
魚の小骨のように胸腔にナイフが引っかかっております。
子どもの時分からずっと引っかかっているのです。
(おかしいですか?
たいして悩みでもないのですが、
やみつきだなんてとんでもない。 ....
遠いちいさな丘のうえで
初夏の梢が水草みたいに揺れていた
命あるもので揺れていないものは無かった
揺れながら皆まっすぐ天を指していた
ひとつとして同じ形の枝は無かった
ところどころ折れて歪ん ....
死んだら二十八グラム体重が少なくなるって
それがひとのタマシイの重さらしいよ
と、どこから聞いてきたのか
娘が言う
父はおもう
タマシイに重さがあるなら
物質 ....
やねのうえを
あめがあるいている
なかにはいりたくて
しかたがないのだ
しめわすれたまどから
なかをのぞいて
さんのあたりを
なみだでぬらして
いっぱしのおとなになりてえ
と泣きながらうそぶく四十男を
わたしは胸の中に招き入れる
いっぱしのおとなはつまらないわ
と慰めてあげることも
いっぱしのおとななんかくそくらえ!
といっ ....
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