部屋にぽつんと一人
歩き始めるための外出をするには
外の空気は不当に暑い。
アスファルトの上で血液が沸騰する
サニーサイドアップをアスファルトで、
だが、外出のための条件は整った。
....
先週 街に出たときは
気づかなかったのに
きょう 梅雨が明けてから
初めて 蝉の声を認識した
こんな東京のはずれ
畑はいっぱいあり
ちょっと南には
都内で最大位の公園もある
....
重心をほんの少しずらせば
スローモーションに身体は傾き
世界はするりとひっくり返る
そのままで
そのままでいて
頭の上に足をつけたきみが見えるよ
わたしたちが歩く世界は
....
私の病気は、軽い記憶障害です。とても嫌な記憶ほど、あっという間に忘れます。
今まで、嫌なことがありすぎて、脳の機能が削除を優先しているのかもしれません。
たとえば、記憶というものが、一枚の写真なら ....
なき虫であっても
なく虫ではなく
よわ虫であっても
つよがる虫なのである
にがり虫に似た
にがい顔で
本の虫は点とり虫というが
てんとう虫はほんらいお ....
わたしのなかのうたが戻って来ないので
別の誰かのうたを飼うことにした
今はやりの詩人のうただ
アンティークの鳥籠の中で
はやりのうたは
毎日ひとつずつ違ううたを歌ってくれる
人を愛 ....
会えてよかったですあなたが遠いところに行ったみたいで淋しかったから一つずつ小さな部屋の窓ガラスが静かに開け放たれていくようなお話かしらあなたがこれからも清潔な歌をうたいますように瑞々しい歌がうたえま ....
い、痛くないの?
男のひとの満足げな顔って決して嫌いではないのだけど
京急立合川駅って普通電車だと運転免許試験場のある鮫洲駅からひと駅
競馬の好きな方なら大井競馬場への最寄駅で通り良いか ....
虫取りの子たちが
アジサイの茂みに見え隠れする
夢の色を追いかけて
おおきくなってしまった
ぼくは
その動きをなぞることができない
思い出して叫んでみても
ブランコの揺れと ....
ずっと
深い底の ほんの少し上
ふたり歩いていく ひしめく無音の群に押されながら
姿を失ったわたしと
透き通るからだに 誰かの貝殻を包み込んだ ちいさな海の仔 と
ふたり ....
キューブの内側は白い部屋
上の面は解放されていて
太陽の光が
四十五度斜め上方から降り注ぎ
部屋の内部は
濃いグレーの三角柱と
白い三角柱に二分され
その中央に球体の女が
在る。
....
水辺のイカロスは
梅雨の数日しか舞うことはない
ただ静かに光りもせずにじっとしていれば
もう少し
例えば
今でも草陰で静かに呼吸をしている
のかもしれない
小惑星にま ....
清志郎さん、なんでしんでしまったんですか
清志郎さん、いつものようにキメてぶっ飛ばしてくださいよ
とんでもないのを教えてくださいよ
あなたの細くて赤い足はロックンロールを蹴り飛ばしま ....
いいんだ、もういいんだ
これまでのことは
産まれてきて、居場所はなくって
どうしようもない日々ばかり続いて
気がついたら
何処でもないここへと辿りついて
でもいいんだ
次のひかりは見えて ....
この空を 君は自由に 飛んだから だから鳥はね 泣いたりしない
悲しみは もうたくさんだと 花は言う 僕は自分に 水をあげた
いつまでも 帰らぬ温もり 待っている 隅で眠る ....
{引用=前書き:
毎日暑い日が続きます。毛深い方、そうでもない方、弁別すれば薄い方、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
ご好評をいただきました「陰毛を考える」もいよいよ最終回となりました。
引 ....
思い描く
ラブソング
想像する
重さ
月夜に蝉の終わりの羽音
打ち上げ花火の余韻
声を殺して泣く
身体感覚とたましいが
握手する
風が
薄いカーテンをふ ....
雲の図鑑が欲しいのです
ありきたりの色を集めて
正しく真名を呼んだなら
痛みと祈りは
この空に
届くかしら
淡雪は炎のように降りつもりきみの素肌の灼熱を知る
凍蝶の滑り落ちゆく黒髪にかかる吐息は結晶化して
性愛の天を凌いで伸びる蔓 凌霄花は空にまみれ ....
本当のかなしみを知るひとは
かなしみのあり様をあれこれと邪推せず
涙で濡れた手のひらにあたたかな眼差しを重ねてくれる
本当のかなしみを知るひとは
ひとの過ちをあれこれと論ったりせず ....
猿ぐつわを噛まされた
裸の青白い男が椅子に坐っているので
私はどういうわけか
ふるさとを思い出さずには
いられない
椅子の背に両手を縛りつけられ
陶器のようにつるりとした太ももに
一 ....
不格好に欠けた{ルビ湯呑=ゆのみ}が
窓から光をそそがれて
嬉しそうに
{ルビ煌=きら}めく{ルビ水面=みなも}を、揺らしている
眠らないバスにのった
眠れないぼくは
あの野性化した雲といっしょに
あかるい夏の海辺をどこへむかっていたのだろう
写真でみただけの
マリアナ諸島の鮮やかなブル ....
お晩でがんす
むじな似のおんな魚選る夜五つ
閉店後精肉売り場よぎる牛頭
三叉路で人待ち顔の地縛霊
お嬢さん背中に手形ついてます
タクシーが女客拾わぬ上り坂
ウシガエル田んぼあぜみち ....
夏休み
坂の途中の煉瓦塀
遊び疲れて帰る途
突然、夕立の中
古いモノクロフィルムの
縦縞ノイズのような雨が降る
崩れかかった煉瓦塀の
裂け目から洋風の庭に
飛び込む
そこは荒 ....
バケツをひっくり返したようなって言われても
ピンとくるわけじない
ひところ軒先で騒がしかったツバメの巣はいつの間にやら静かになっていて
育ち盛りと餌を催促してた雛たちは
ハーメルンの笛の音 ....
こどくにはつよいはずだった
ぼくが
ふあんにたいして
ふあんていにたいして
こんなにもぜいじゃくでむぼうびであったなんて
おもいもしなかった
ふいのかぜがふい ....
瑠璃色 空がはぜる
祈る子の贖罪がおわって
世界に太陽を取り戻した
水面に満ち足りて
みなぎる光を
トンボたちが拾っていく
きらめいて
またふりまいて
運びきれない
....
乗馬パンツを試着する
膝に白い羽毛を見つけ
これにファルコンの綴り
を刺繍してもらう
*
まわるまわるルレットの
太陽
を日付変更線で切り取り
新しい布地と縫い合わ ....
三角方眼定規で
下くちびるを切った
風が薫って
夏草が
指から
ほどけていった
立体裁断で
ドレスを裁つ
いつだって
晒されぬままの布に
踊り
今はおそらく
泣いている
....
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