舌に絡まる火酒のような色恋沙汰には もう飽いた
冷えたその肩 ぬくい翼で癒やしたい そう思うのさ
舌に絡まる恨み言なら くちうつされてもかまわない
笑い飛ばして耀く君を わたしの翼で孵すのさ
流れ出た血が固まるように
女は動かない
動かない女の前で暫し時を忘れ
見つめれば やがて
そよ吹く風か 面持ちも緩み
――絵の向こう
高次な世界から
時の流れに移ろい漂う
一瞬の現象で ....
眼ヂカラが強すぎる わたしは魚
君をみつめている
魚だからまぶたは無い
目を閉じることはかなわない
誰よりも雄弁な眼を持つ宿世がつらい
泣きたくて壊れそうだけど泣けない
そ ....
空洞の目から
風景を吸い
真横に向く耳から
音を吸い
手も足も無く
がらんどうの体で立つヒト
薄く口を開き
遥かな命の記憶について
旅人の僕に
今にも〝何か〟言いそうだ ....
ワイングラスのうつろのなかで
ひらひら泳ぐは真っ赤な金魚
君がぱららとこぼす言葉を
一生懸命ぱくぱくひろう
うすい硝子をへだてた君は
赤い私しか知らないでしょう
ほんとうは君の腕のなかでな ....
{引用=たくさんの本棚に囲まれた部屋に
一つのテーブルと 一脚の椅子
灰皿には薬の抜け殻と オーダー表
鳴らない黒電話、かける機会のない大型レコード
ここに来る人は饒舌の上にある沈黙を愛した
....
幼稚園の頃
プレゼントは野に咲くお花がいいって
私が言ったから
兄ちゃんと二人で
どこかの空き地で摘んできた
ジシバリ アカツメクサ ははこぐさ ルピナス ひめじょおん
引っぱっ ....
心は曖いちいさな海で
寄せては返したがっている
愛してない
(あなたを愛していない)
それが白いブイのように
波間に泡立ちながら
にぶく 在る
かろやかに壊れゆく春の記憶は
描かれた風景に変換されて
消えてゆく
ひそやかな時はうつりゆき
しろい指のかたちだけがのこる
春が終わってまた誰かの消息をたずねる
夏が終 ....
壊れた
涙腺の
泣けない宙吊りの私
失った
良心
痛まない恐れ知らずの私
人の様で人でない
助けを求める
誰に?
結局は単細胞 原子の造りだす脳の
....
闇にすっかりなれたのか
それとも 朝がきたのでしようか
あまたの光の柱が
行間からまっすぐに 立っています
言葉は 今朝の朝靄のように低い場所に流れます
言葉が 祈りとは ....
この胸に孤独があって良かった。
もしなかったら、人の寂しさに共感することができないだろう。
誰かのために戦うことができないだろう。
この心に孤独があって良かった。
もしなかったら、僕はいつ ....
巷で恋は歌われて
かつて私はそこに居た
巷で愛は歌われて
たぶん私はそこに居る
どちらも売れない一人芝居
わかっていてもやめられない
麻薬のような一人芝居
わかっていてもやめたくない ....
父母が買った墓を見に行く
高台にあるそこからは
海が見渡せ
なんのわずらいもない風が吹き渡り
小さな飛行機が雲間に光る
このお墓に入ったら
この景色を見て暮らす、という母に
いい ....
とても快く疲れているのでこのまま眠らせてください
このまま死んでしまうかもしれない
このまま死んでしまえたらいいのに
疲れに救われて
雨に撃たれ
陽射しに焼かれ
粉末になって風に融けだ ....
身の回りの、色を
表現したくなると
春が来る
過去の、自分の言葉で
火が灯る
ほうほうの体
で、海馬を片付ける
気障、な
気候が「せっかく」を多用する
か、ら
....
鮮紅色の空が液状に溶け出し、細かな雫となって降りそそぐとやがて男の立っている意味のない地名も時間のないそのマカ不思議な場所も遠く何処までも濃く赤みがかった不吉な色に染まった。白いガンダムは、オレンジの ....
お控えなすって
ご当家の 軒先の仁義 失礼でござんすが お控えなすって
障子より目玉だけ出しておられる お坊ちゃんお嬢ちゃんも お控えなすって
わたくし生国は 大海原 水界のはてに発します
....
大学に居着いた野良猫のチャッピー
理系の癖に高校の全国実力テストで現国全国1位だった君
わたしの事も野良猫のチャッピーの事も書かないよとあなたは言った
結構繊細だよね。
わ ....
夕闇にテイルランプをみつめては逃げ出すことだけ考えていた
居場所などどこにもないとひとりきりみんなと違う空を見ていた
さよならと書き殴ったページには余白だけがやけに多くて
目の前に別 ....
数をかぞえて川まで来たよ
回転木馬は考える
きみはガリガリ苦しくて
きっと神さま軽蔑だ
かんざし付けた観光ガール
カード片手にガイドする
こちらにござるは金華山
来る日も来る日も ....
今日もまた打ち捨てられたあの部屋であなたと行ういけない遊び
なすがまま私はあなたのお人形何をされても動いちゃダメよ
窓ガラス映るふたりのシルエット誰にも言えない秘密の儀式
しっとりと ....
座敷の鍋の中から窓越しに雲が見える。雲に隠れた月がぼんやりと
少し前の地震で己が実を揺すられ、少し味が出汁に溶け出したかもしれない。
食欲満々の座敷の客たちは鍋の火加減を気にしている。
解体前の ....
星さえも見えない夜の底にいてお願いシリウス僕を照らして
暗闇に瞳をこらせば見えて来るきらきら光る僕だけの{ルビ星=スター}
流れ星どうかお願いここへ来て君のしっぽに手が届くように
君 ....
いつだっていまだって青い
地球は朝で昼で夜だ
なのに地表の隅っこで(あるいは真中で)
いまブルーライトに照らされぽつねんと
もの思いに耽っているわたしには律儀にも
朝昼夜は朝昼夜と巡り訪れる ....
西日の射す部屋で
裾に黒い炭を付けたレースカーテン
輝きながら汚されていくことを思う
私は寂しい
ベッドの位置から進むことも退くこともできず
手のひらに収まる程の空気の厚みにす ....
青い看板に白い文字で
ビジネス
カジュアル
フォーマル
朝のだだっ広い駐車場
少しくすんだ 慎みの季節が
春に巣立った雛たちの 瞳にも
映って
....
ふりつもるものはなに
きおくのなかのたびのはじまりは
こもりうたのようにこころをときめかせるものだ
かかとのないくつであるきつづける
ぼくにひつようなものはいちにちぶんのあいと
おきわす ....
乳の出なくなった母豚が
子豚を育ててくれるという、
やさしいニンゲンに預けた
彼らは 何もできない痩せた子豚を
段ボールの中で育てた
しかし 相変わらず豚は、豚
ただ ....
私たちは望んだ
林檎の木のやせた小さな実を
うなだれて実をこぼす廃れた窓辺を
細い水のはねる汚れた低い蛇口を
あの庭から私たちは始まった
私たちは紫の実をつける香りのよい果物を欲しがった ....
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