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夜道を一人歩いていた
道の先に立つ街灯が
{ルビ辺=あた}りをほの白く照らしていた
街灯の細い柱に{ルビ凭=もた}れると
地面に伸びる
薄ら{ルビ哂=わら}いを浮かべた
私の影 ....
「狐つき」
こん と ないてはなりませぬ
こえをあげては なりませぬ
とられたくない だいじなものは
かくしておかねば なりませぬ
くらいよみちは こわいけど
ふきさすかぜは つら ....
森は沈む
銀の花に
残響に
緋の笑みに
秋を穿つ泥まみれの羽に
森は沈む
鏡の乗りものに映る青空
死が飾られた街の隙間に
冬の色の海が見える
その鳥はとどろき ....
それは些細な偶然
ころびかけた拍子に
視線が合えば
見下ろすあなた
すぐにはわからないけれど
いつかはわかる気がしてた
意識の始まり
....
今日も望遠鏡を覗く
代わり映えの無い緑の夜空に
その青い星は浮かんでいた
一年中衛星とダンスを踊るその姿は
この星からはとても遠い
夜空の星屑の雨にうんざりしながら
今夜の降星確率は0 ....
矢車草が咲いた
どこに行くのか
よく判らない
この道の辺に咲いた
青い小さな草は
私の歩みにしたがって
くるくると
風を孕んで
ゆらゆらとゆれる
お前の白い太腿は
この
....
夜明けの街を
一台のインクジェットプリンターが
走り抜けていく
どこからか受信した文字のようなものを
ありったけの紙に印刷しながら
おそらくそれは全力で
疾走していく
雨上がりな ....
いのちのひもからまっている ちいさな
うそのかさなりの下で眠っていた木や花
種もまたからまっている このみえないたたかいの野
うばっていった鉄と油と空気の焼けるにおい
影になった人は罪を背 ....
聞こえる
枯れた路地の壁際で
男が携帯で話をしているのが。
その携帯の電波をたどっていくと
しかし、どこにもつながっていない。
聞こえる
いま、ようやく動き始めた心臓の音が。
音が静かに ....
となりに座っても よろしいですか
わたしの喪失は たぶん
あなたほどではないのに
あつかましいお願いですが いっしょに
すこし泣いてくださいませんか
今夜 私には
逢いにゆく人がいない
孤独な夜の散歩者は
アスファルトに響く雨唄と
ビニール傘に滴る雨垂れの
二重奏に身を浸しながら
果て無い雨の夜道を{ルビ彷徨=さまよ}う ....
朝の空気の
光に濡れた
清々しい香気に、
私の五感はしとしとと沈み{ルビ水面=みなも}をみあげる重く熟した金属の愁い。
空間をよぎる
不透明な視線は、
無知な陽炎となってさえずり虚空を ....
記憶の中の薔薇、
遠い雨音、
耳を傾けると熱くなって溶けた蝋が
三半規管を逆流してくる。
深夜に、
再放送のドラマを垂れ流しながら、
スピーカーから零れ落ちてくる音を
ひとつずつ丁寧 ....
瞬間の波にさらわれて
僕らはっとして産声をあげる
永遠の海に溶けた心が
掬われたんだ 今
悠久はゼロと等しく
瞬きは永遠と化して世界を刻む
人が悩むべきただひと ....
あなたの背たけと同じくらいのビー玉が
ころがっているのを見つけた
光はずっと向こうから差し込んできて
水たまりみたいな影を作った
あたしは素足になって
ずっとそこで遊んでいたかった
あ ....
岬の先の夕暮れ
小さな星を示して
十光年離れているから
あれは十年前の光だ
と、言う君は
教科書のようだ
でも今見えている星は
そのまま今
の、{ルビ一番星=シリウス}
足摺 ....
暗がりのなかの光の道
滴の道
空の強弱のはじまり
花の墓に降る朝の雨
遠い遠い雷のような
音の無いむらさき
弔いの日を染める
色とりどりの衣を着て
荒れた地に横 ....
水色の空と白い雲
上を見上げるとそこにある
雲がいろんな形に姿を変えながら移動してゆく
ただそれを見ているだけで楽しい
何も考えず ただ眺めているだけ
時間の波に乗って空 ....
想いはどこへ連れて行こう
涙はどこで手放そう
忘れられないことばかりを持って
僕らは何度もここに生まれた
円く繋がった道を歩こう
いつまでも終われない街を抜けよう
ガードレールの上で両 ....
窓を流れる雨は
海へと急かす
私は少しの光と温度で
ふかくこきゅうをして
酸素をたくさんとりこむ
終点に着くと
ゆっくり大きくなってゆく雲
緑の葉っぱに雨がはじけた
君の笑い方を思い出 ....
わたしのカラダ。
植物のツタのようにほそくねじれて、
せかいの天蓋にむけて、
のびていきます。
くるぶしまでのひたる水。
は さざなみのように、
わたしをすくめ。
日のひかりいっ ....
レインコートを身にまとい
土砂降りの朝をゆく
雨の
一粒一粒は
私の中に入ろうとして
もがく
流れる
つたって落ちる
あなたは
ていねいになぞってくれた
私の中に入ろうとし ....
ぼくは詩を書きたい
歌は灯火 詩は心
自然に生あり 人に命あり
今日もまた
朝の散歩をしていると
あじさいに出会いました
今にも雨が降りそうな
暗い空の中
輝くものは鈍 ....
青いタイルのベランダに降り積もる羽蟻の死骸
雨のない夏 睡魔に襲われる夕刻
ゆっくりと旋回しながら
飛行少年が落ちてくる
脚を尖らせて私は歩く
あなたはコンパスで地球を計り
風 ....
わたし
夜に写真を撮ったわ
あなたの家の
木を
あの頃
毎晩見ていたわ
あなたのことを思いながら
わたし
夜の写真も撮ったわ
あなたを
夜のあなたを
それはもうないわ ....
誰かと笑い転げる日々を過ごす私
仮面を一枚{ルビ捲=めく}れば
誰の手も触れ得ぬ「もう一人の私」がいる
あたりまえの幸福は
いつも手の届く場所にあり
浜辺へ下りる石段にぽつん ....
丸みを帯びた光は
瞼を下ろすたび
その裏に
微かな影を描く
碧さを含んだ風が
誘いかけても
膝を抱えたままの両腕を
微動だにしないで
閉じたままでは
何も見えない
....
あなたはいつか私を忘れる
私を忘れたことさえ忘れてしまうかもしれない
あなたは大きな夢に向かって
羽ばたこうとしている
私には決して使わなかった翼で
さあ
もう行って
さあ
....
短い雨のあとの空気中で
雷になりきれなかった淋しい子供たちが
火花になってはじけて
それは綺麗な夏の花火のようだった
眠りは疲れた身体を癒して
でも悲しくも
無理やりにも 僕を明日へ連 ....
あの子は 静かの森に行ったきり
戻らない
あの子はまだ少女で汚れも知らない
あぁ、ただ戯れてただけ
静かの森は
少女を連れ去ったきり 呼びかけても返事さえない
呼びかけるなら
少 ....
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