オレンジが煌めく
輪切りのそれが濃厚な液体の中で鈍い輝きを放つ
それをいつまでもいつまでも飽きることなく眺めている
この汚れきった心の中のように
世知辛い闇夜を彷徨うのを抗うかのように
氷の ....
風は冷たくて
生温かいよりいいけれど
撃たれていても
失われゆく感覚に朦朧とするのが
口惜しいくらいで
なんとかもう少し
月の光が見られるまでは
ここでこうしていたいのだけれど
うたた寝する夢を見て
いまだ眠りに就くことはできず
外出するでもなく
読む本も見当たらず
チャンネルを二三は代えてはみるけれど
落ち着くことはなく
ホットミルクを用意しても
ため息などつ ....
嗚咽を抑えつけるために
息を止める
どんよりとのしかかってくる薄墨色の雲を見上げて
立ち止まる
涙の雫が零れ落ちてしまわないように
拳を強く握りしめてしまわないように
まだまだもう少し
 ....
狡猾な
いかほどまでに狡猾な

明言を避け
自らのずるさをひた隠し
ただただ己の汚さを曝け出すことなく

悲しみの側面を綴り
あちらを隠す
呆れるほどになんとまあ
狡猾な
この美しき世界は
楽しかっただろうか

辛い想いもたくさんしただろう
悔しいことも悲しいことも
誤解を招いたことも
怒りを覚え
歯痒く胸を掻きむしられるほどの憂いを抱き
涙をこらえ
 ....
罪悪感とは
苦しいものだ

拭うこともできず
ひた隠しにしようと試み
時間が過ぎても消し去ることはできず
たまに忘れたふりさえする

心の片隅に小さな穴が空いていて
その中を覗き見る ....
少し、涙が流れたり
少し、ため息がこぼれたり
それでもこの気持ちが救われることはなく
感情の矛先を探しては虚しさが募り
心を失いたいと願うのみの{ルビ時刻=とき}は
緩やかに過ぎてゆくが
 ....
優しくない私は
救いようがなくて
自分でもほとほと
呆れてしまうくらいで
そのくせ見栄っ張りで
礼節をわきまえてる
ふりをしてみたり
人前では決して
涙を流さずにいたり
取り乱して声 ....
{ルビ獣=けだもの}の夜に
暴れだしたい欲望を抑えつけて
のた打ち回って
はけ口を求めて
彷徨いたいのだけれども
自らの目をえぐり出すほどの
高潔なる勇気など持ち合わせず
ただひたすらに ....
{ルビ膕=ひかがみ}が疼くのは
満月のせいだろう
そう思っていたのに
今宵は月が見えない
月灯りすら零れてこない

不意に目の前に現れ
仁王立ちするあなたの
首元に輝くルナフラッシュに ....
昼ご飯を済ませて
横たわって
眠りに落ちて
目が覚めたら
もうすでに夕方で
ふと鏡を見たら
頬に線ができていて
それが畳の跡だと
やっと気づいて
消す術もなく
消す必要もなく
と ....
美しいと感じる心が砕け始めたとき
月は輝いていた

どこか遠くから
かなり遠くから
何者かの雄叫びが轟いた

身構え
四つん這いになって
後ずさりをしてみたけれど
目の当たりにする ....
燃ゆる炎を宿したこの翼を
閉じる術を知る由もなく
それでも過ぎてゆく{ルビ時間=とき}の中で
愛しさや甘美なそれを知りたいと
束の間過ぎったその想いこそが
そもそもの過ちの始まりであった
熱を含んだ空気が蔓延するこの部屋で
朽ちてしまう夢を見つつ
汗の滴に塗れた自らの項を疎ましく思い
枕に押し付けて乱暴に拭って
焦点の定まらない視線の矛先を探し続ける
涎も垂らしているのだろう ....
燻んだ空が
呼びかけてくるようで
俯いたまま走り出した

このままどこへ行くんだろうか
自分に問いかけながら
スピードスケート選手のように
腕を左右に振りながら
走り続けていた

 ....
湿った肌が疼くのは
長く続いた雨が束の間
止んだからかもしれない

深く重く連なる雲の向こう側に
隠れているであろう太陽など
垣間見たいとは思いもしない

仰向けになって
腕で額と目 ....
雨が嫌いなくせに
今日だけは雨が降る予感に
嫌悪感が伴わない

子供の頃から認識している
七夕には雨が降ると

いつもそうだった
織姫様と彦星様が年にたった一度
会える日だから
今 ....
膕の少し下
要するに
左の膝の後ろ側、ど真ん中の窪んだところの下側に
青痣ができていた
直径二.五センチはあろうかと思われる
ほぼ円形の黒ずんだ痣がそこにあった
薬指の腹で押してみても痛み ....
不条理な
世の中にこんなにも不条理なことがあるものかと
打ちひしがれてしまいたくもなることを否めやしない

駄々っ子のように
いじけて拗ねて捻くれて
大いに不貞腐れて
八つ当たりまでして ....
汗ばむ項には
触れてみたくなるから
見ないでおこう

汗のしずくが湧き出でる
美しい孤の形を描くそれは
決して滴らせることなく
雨のような粒を滑らせている

その一つ一つを
薬指の ....
躊躇する
ふりをしてる

大して迷ってなど
いないくせに

右を向いて
左が気になって

後ろ髪を引かれながら
斜に進もうと爪先を
あっちへ向けて
動けずにいる

ケンケン ....
生温かい午後は
初夏の匂いを孕んで
油断させる

眠気を撒き散らし
{ルビ気力=エネルギー}を奪い去り
時間さえも怠惰に流れ行く

束の間
夢を見たような心地を覚え
雷に撃たれたい ....
サメザメと降り続ける冷たい雨は
なんのためであろうか

この汚れた{ルビ惑星=ホシ}を浄化でもしているのか
ありとあらゆるゴミを洗い流してくれているのか

そんなことをしようとも
この心 ....
太陽の匂いを
嗅げそうな気がして
空を見上げて見るのだけど
青い空が拡がっていて
その中でも太陽は誇らしげに
強い光を放っていて
眩しくって
目が眩みそうで
それでも頑張って
目を見 ....
心が詰まるのは
閉塞ではなく
叫びを放つ
矛先を探して
そうはしないと
自らを抑えつけ
息をも漏らさず
力拳を握り潰して
そこに立っていようと
踏ん張ってしまうから
陽光がとても眩 ....
言葉にするとそれはとても嘘っぽくて
この心の嘆き哀しみ悲痛なる想いは
誰に届くこともないであろう
この涙は流さずにおいて
せむし男の雄叫びに変えてくれよう
遥かの地の乾いた空の下
中洲に浮 ....
思い切ってコートを羽織らずに外出したところ
予想以上に風が冷たかった
ウチへ戻ろうかと迷いつつ
足はどんどんと家から遠のいていった
そんな気さえなかったくせに考えているふりをしたかったらしい
 ....
落ち込んだりもするけれど

うなだれて
ふてくされて
しばらくは動けなかったりするけれど

じっとそのまま寝そべってもいられなくって
お腹と背中の間あたりがジリジリとし始めて
伸びをし ....
表に出る

冷たい風を受けて
少し歩を進め
暖かさを覚える

手袋を外し
マフラーをほどき
コートの前を開く

玉響に春の訪れを
この身に受けてみる

気分が晴れはしないけれ ....
坂本瞳子(653)
タイトル カテゴリ Point 日付
水中花自由詩121/9/22 22:22
切なる願い自由詩1*20/1/28 22:40
矢の如くにはあらずとて自由詩2*19/11/21 0:51
フェイク自由詩4*19/11/3 8:34
ずるいことこの上なく自由詩1*19/10/15 22:04
分かってはいたけれど自由詩1*19/10/15 22:02
罪深きは自由詩1*19/10/3 22:20
それだけのこと自由詩019/9/24 21:48
乱調、音程は保ちつも自由詩3*19/9/23 22:09
朝は来ない自由詩019/9/5 22:52
いまのうち自由詩019/9/5 22:44
午後の贅沢自由詩4*19/9/5 22:31
明日はきっと自由詩1*19/8/30 22:24
罪の意識自由詩1*19/8/4 22:55
熱気のただ中で自由詩1*19/7/31 22:59
あの日、ボクは走っていた自由詩1*19/7/14 22:44
渇き自由詩1*19/7/13 9:46
七夕の記憶自由詩7*19/7/7 19:22
些細なこと自由詩119/7/1 20:30
それでも、この生命あるかぎり自由詩019/6/27 23:01
いっそのこと自由詩1*19/6/21 21:51
マヨイゴト自由詩1*19/6/20 22:43
ミルキー自由詩4*19/6/18 19:31
なんとまあ救いのない自由詩1*19/6/15 19:12
汗ばんだそれは自由詩3*19/6/14 13:23
白昼堂々自由詩1*19/6/12 19:56
鎮めたまえ自由詩1*19/4/16 19:05
なにがしたいという訳でもないのだけれど自由詩2*19/4/11 21:36
金曜日の夕方に自由詩2*19/4/5 22:21
春だのに自由詩2*19/3/13 21:38

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