なにがしたいという訳でもないのだけれど
坂本瞳子

思い切ってコートを羽織らずに外出したところ
予想以上に風が冷たかった
ウチへ戻ろうかと迷いつつ
足はどんどんと家から遠のいていった
そんな気さえなかったくせに考えているふりをしたかったらしい
晴れた空はそれでも気持ちが良かった
角を曲がったところの信号もちょうど青に変わった
ふうと息をつくしまもなく歩き続ける
行き交う人と視線が合うこともなく
遥か遠くから聞こえてくるクラクションは音が割れて
笑いさえも誘う
そんな木曜日の朝は
遅刻をしたのであろう
慌てて駆けていく女子高生が足早に過ぎていくのを
不安な眼差しで追いたくなるのを
堪えておこう


自由詩 なにがしたいという訳でもないのだけれど Copyright 坂本瞳子 2019-04-11 21:36:44
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