さえぎるか光を
くるんで
やわらかく
綾の隙間から
洩らして
細かく広がらす
カーテン
何色の
覚えていない
光は
白く
覚えている
きみの輪郭を
白く飛ばして
放射状 ....
やっとのことで仕事を終えて
疲れをしょってバスから降りて
暗い夜道
白い吐息
せかせかと
すると小学校横の歩道を
女が一人こちらへ歩いてくる
――この寒空に網タ ....
何が詩なのかわからない
リズムか テーマか
メッセージか
愛か 平和か ロマンスか 堕落か
時が満ちたらわかるのか
わからないさ
雲のことなど
人のことなの ....
ズバズバと
生きたいんですが
上手くいかないんです
バサバサと
切っていけたら
楽でしょうね
まー
それできない俺も好きなんですが
....
晩から降り始めた雨も
今朝はすっかり上がり
空は青いスカーフ
ところどころ浮ぶ雲が
銀色に輝くペンダント
よそいきの装いのなか
からすが一羽
北へ向かって
真っ直ぐに飛んでゆく
....
頑固のかたまりが
意に反して崩れていく
駆け出した午後七時
目の前にいるのに届かなかった
臆病の時間
アルコールにばかり手が伸びて
消えていく炭酸が
僕らの距離を近づけて ....
頭とか口でしか
ひとの話聞いてない
祈りながら
聞いている
こちらも気持ちいい
あちらも気持ちいい
あったかくてやさしくて
変わるものと変えるもの
....
好きやってんでと、うつむくわたし
知ってたよと、うそぶくあなた
きらめくネオンの街で、さようなら、さようなら、
凍えるような
朝
遅刻の崖から身を乗り出し
思う
湯たんぽこの身にくくり付け
布団の海に
身投げしたい
誰かがここで何かを話しかけている、だが俺はそれをはっきりと聞きとることが出来ない、俺の神経は摩耗しきっていて、壁にかけてあるシャツが一枚ハンガーから床に落ちるだけでプツンと途切れてしまいそうだ ....
頬を撫でる男の手は熱い影でできていて
影ってゆく白い女の左頬を震えた手で包んだ
歓びのあまり震えが止まらなくなると
月の女は夜空に幾千の氷菓子を抱きかかえ
男を待ち焦がれているというのに
....
むかし少女は白いひとだった
おひとよしの少女は
なんでもひとに奪われた
普通というのがわからずに
怒りということを理解されずに
それが社会なのかと思った
ただ祈りだけ
願うこ ....
先を争って{ルビ水面=みなも}を目指す たくさんの 泡
ほどけたネックレスから 飛び散った
真珠のように 輝きながら
晴れた冬空の 明るさで染まった
水の中を ころころと 駆けあがっていく
....
梅の木みたいに
花になっても
梅干しになっても
種になっても
あなたを楽しませられたなら
いいな って思う
古くふるくなっても
枯れてもだれかの目を心を
和ませられたらいいな ....
六月
君は椅子に掛けて
ジグソーパズルをやっていた
薬缶が沸くのを待ちながら
壁にもたれて
僕がそれを見ていた
六月
外は雨で
夕方の部屋に ....
真夜中自転車を走らせ
小さな橋の上から
欄干に身体を預けのけ反る
晴れた夜空のてっぺんに
仄かに橙月がぶらさがる
雲ひとつなく銀河の河から流れる
ホシボシの瞬きは淀みなく美しい
....
半魚人
その海には半魚人がおりました。
彼は生まれた時からひとりぼっちでした。
生物学的にあり得ない以前に
遺伝学的にあり得なかったので
地球広しと言えども、同類がなかったのです。 ....
君がいくつもの言葉を
ひとつの親指で
文字で刻んでいく頃
僕のいくつもの淋しさが
ひとつの羽となって
冬の凍った湖に帰って行く
鳴いているかい
僕が人差し指でなぞった
吐息混じ ....
少年の真摯
少女の勇気
中尾ミエのファドみたいな歌声
少年と少女の
不穏なノスタルジア
ユーロビートでしか吹き飛ばせない
遠い雷雲
強く吹き上げるビル風
暗鬱な影
めくり上げられる ....
比較的に緩やかな様を
眺めている
それだけで言葉に出来なかったことが
伝わったような気がしている
新しいニュースが
平べったく流れていく
変わってしまった人
喉が鳴って一人
真 ....
十年も使い込んだ御飯茶碗を
呆気なく割られてしまった翌日
雑貨屋の食器売場の谷底を
額に不機嫌なしわを寄せながら
這いずり回っていた
掌と肘と腕に違和感を伝えない
丸みと厚みと高さ ....
雲がゆっくり流れて
いつもより大きな満月が
空に浮かんでいる
淡い光で染まる心は
柔らかく膨らんでいき
空に浮かんでいる
こころなしか風があたたかいのは
生きているものがすべて起 ....
酔いどれが
月の真下を歩いてら
線路沿い
ふらつきながら歩いてら
ぜつぼうの
冬の星座がぽつってら
かじかむ手指になみだが凍る
噴き出す鼻血がすぐに乾いた
これ以上もない孤独のなかで ....
水の底で暮らすガラス吹き職人は
毎朝一番はじめに真っ赤に燃える
とろけた溶岩を試し吹きをして
水の中に薄くて綺麗なまんまるいガラス玉を放つ
大体は途中で魚や鳥などに突かれたりして
弾けて ....
丘の上 灰色のあかるさの中に
観覧車は立っている
色を失くしたその骨格を
冷たい空気にくっきりと透かして
ただしずかに廻っている
ゴンドラのひとつひとつに
乗っているのは
かつてそこ ....
雲がいそがしく動く
そのしたで昼寝をする
病院という場所の二階で
腹をさかれてるひとがいる
命うまれ
命きえて
雲がいそがしく動く間に
私が目をつぶる間に
今日という日も
二十四時間 ....
けたたましい目覚ましの音で
新しい一日が始まる
レプリカントのスタートスイッチが入る
洗濯機がしゃべる
電子レンジがしゃべる
TVがしゃがべっているのは
今日の天気予報
くもりのち雨
....
あるところに一人の男がいた
男は理想を見いだせない革命家であり
大義名分をもたないテロリストだった
彼にはため込んだ多くの武器があったし
破壊活動のためのノウハウもあった
それらが彼を一つの ....
いいんだって
わざと言ってみる
それはよくないとき
言い聞かせるとき
なんで
なんで
逆にするの
いらないって
言うとき
ほしいとき
なんで
なんで
嘘いうの
顔にで ....
はナホトカ生まれの十八歳
でどっか相当ずれている
小さい頃からずれている
多くの人とずれている
殆どみんなとずれている
仲間はずれで入れずにいる
ウラジミール・ズレリンコフ
は小学校で持 ....
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