この口は 冗談が言えない
石切り場のように 殺伐としていて
この目は 花を愛でない
照準器のように ただ狙いをつけて
この指は 傷を縫わない
ナイフのように 切り裂くだけで
お .... 
トゲは深くて
抜けそうにないから
指で えいやって
押し込んでしまうの
あたしの奥へ
はいったトゲは
いつか命の元になるんです
傷つけ
傷ついて
でも案外ヒトって平気なんです .... 
文庫に救われて
どうにか今も生きている
河童
変身
世界の終わり .... 
アイビーが空間を探っている
感覚だけをたよりに 
つかまえて 己のからだを寄り添わせ
まだ見ぬかたちを具現しようと
精一杯手を伸ばし
探している
探している わたしも
この感覚だけを .... 
さみしいとか言ったらいけない
がんばるとか言わなきゃいけない
ひとのせいとかしたらダメだ
なあ、俺よ、この俺よ
ほんとうにそう思っていますか
澄んだ水色の空でした
ピンクとオレンジの色彩 .... 
誰もが幸せであることを望み
それに見合うだけの不幸せを我が身に背負う
故に生きることは辛く
苦しい
※
ふと目覚めれば凜として未明の寒さ厳しく
曖昧では済まされないこと .... 
咳き込んで風が飛び立つ冬紅葉
深秋の空転がり落ちて背を丸め
一本の線となり行くわら煙
柿落ちて枝先軽く風に揺れ
吐く息の白さばかりが時を摘む  
散らかった川を横目に
私は今日も生きています。
ビニールやタイヤの花が咲き
ゴミにまみれたおっきな川を
眺めるじじぃの顔が淋しかった。
少しだけ父 .... 
こと葉って 薄いもんだ だれか言う 
だって 葉っぱだもの と答えるだれか
葉っぱをどんなにつみあげても
きっと だれもほめてくれないよ
ぱっと吹かれて無くなっちまう
 そんなかげの薄いやつ .... 
この爪を折っても
しぶとく生えてくる
この爪を折っても
歳を取れば 記憶は遥か彼方
この爪に火を点せば
僅かながら この灯りで
道に迷うこともないと口にすれば
痩せ我慢だと隣人は .... 
さぁ憂鬱よ
私の無意味な情熱を
無に還してしまえ
さぁ無関心よ
私のお節介を
有限にしてしまえ
さぁ流るる時間よ
未熟な私を
頭でっかちな老人にしてしまえ
さぁ服従心よ
 .... 
詩は素
素敵と言わせたくて
素っ気ない素振りで
言葉をまさぐる
詩は素
素直じゃないから
素知らぬ素振りで
言葉をこねくる
詩は素
素顔に辿り着けない .... 
君が唄う愛のうた
もう
歌詞さえ忘れてしまったけれど
確かに
君は唄っていた
窓辺のひだまりに置いた
鳥かごの中で
無邪気に
金糸雀が{ルビ囀る=さえず}ように
石造りの .... 
小学生の頃
校舎と体育館の建物の間に
ピロティと呼ばれる場所があった
そこは特に何かをする場所ではなく
コンクリートの打ちっぱなしの壁があるだけで
ボール当てやドッチボールをするには
 .... 
いつも何故だろう
何も見えなかった 私からは
遠ざかっていく
その全てを私は見ようとしていたのだが
だけど誰とも連絡がつかず いつも
一人で立ちつくしていた いつも
何も知らない街 .... 
鋳鉄の風見鶏北向きの部屋
バロック様式鐘楼群の午後六時
からくり屋敷発条巻きの偽家族
屋根裏の幽霊コツコツ咳の音 
ひとを傷つけたり
迷わしたり
煩わせたり泣かせたり
そんなオレンジな俺だけど
嘘ばかりついて
嘘ばかり上手くなって
ほんとの気持ち探せなくなってる
夜がき .... 
どこもかしこも傷だらけ
うずくまって泣いてても始まらないから
 .... 
世界は しらじらしい 
夢の中すら 雪がふりはじめたから 
道は 白く はばまれて 遠い 
雪にかわったり 曇天に変わったりする幻を 
さて いくつ超えようか 
カーブごとに 
ド .... 
おまえが元気で
嬉しくて淋しいです
おまえが愛されてて
悲しくてあったかい気持ちです
ありがとう
おまえもおれも気をつかいすぎて
相手をリラックスさせよおもて
 .... 
だめだ
それは
もう
わたしというそんざいの
しょうめいを
しょうめいを
テトロドキシンの
そんざいを
そんざいを
にげたらこういうの
さようなら
さようなら
いらだちをかくせ .... 
抗生物質のかたまりがカテーテルの空どうを密(み)たし ゆつくりと圧(お)し はいつてくる 音のようなもの 実感めいたもの 午前3時
ペンチで爪をはがれた老ばの 叫び声をきいたような きいていない .... 
大嫌いのつぎは
やっぱ大嫌いで
けして大好きにならなくて
ドラマみたいに日が暮れて
寝ようが飲もうが笑おうが
君の大好きになれるわけじゃない
だからっていって
悪いやつにもなれない
臆 .... 
【有無】
恋人の有無気にしないお年頃 好きだから好き 好きだけど好き
【墓】
墓穴を自分のぶんも掘っておく いつでも誰か呪えるように
【丈】
身の丈に合わないギャグをしたために オレ .... 
  女よ
  ぼくが眼をとじると
  きみは枯れた稲妻のようだ
  だが
  手をふれるとそれが
  一匹の大きな白蛇だとわかる
  女よ
  きみを
  冬に横たえる
   .... 
沈む
沈む
みな
沈む
あれも
これも
どれも
それも
沈む
沈む
みな
沈む
あれも
これも
どれも
それも
みな
みな .... 
いまは澱んだ青だけど
あの日も澱んだ青でした
三度書かれた僕の名前
書けばいいってもんじゃない
それを認めてしまったら
僕はバラバラになっただろう
母の手紙を破るしか
僕は僕を繋ぎとめる .... 
言葉は
わたしに降りてこない
わたしを選んで
降りたりしない
だから
わたしは
降りしきる
言葉がわたしを拒んでも
言葉がわたしを拭っても
一途な
まよいに
 .... 
こっちだよ あっちだよ そっちだよ
くるくるもみじがおちていく
てのひらうえに
ちいさなてのひら
あかちゃけた くろちゃけた きちゃけた
かれはがゆくみちうめていく
 .... 
男のあらゆるポケットに
忘れ物を入れておきました
夏の
塩辛い
木漏れ日の
青と
星臭い
銀粉と
羽根の生えた
さくらんぼの風景を
ひとつずつ
乾かないように
驚い .... 
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