何か新しいことに向かうときは
できるだけ心を空っぽにして飛び込む
幼い頃
良くソフビの人形を
お風呂の底に沈めて
手をはなすと
勢いよく飛び出した
あの感覚
....
目覚めても まだ何も感じない
ストロボを焚いたように 視界は真っ白なまま
君は起き上がる ベッドの上で部屋を見回す
昨日見た 夢の欠片を吐き出すと
耳につくのは 壁掛け時計の呟き
締め忘 ....
一匹のからすが
あおあお鳴いている
小さな子供が歩きながら
あおあお
あおあお
声に出して真似している
雑木林の中から
鈍く光った黒いマントが見え隠れする
前を ....
とぼとぼ歩く人間の足もとに
耳をつける
理不尽なほど大きな音がする
暗い
地上
力の
行進
高い
運命
とぼとぼ歩く人間の足もとに
耳をつける
....
空中で笑う骸骨の口から臓物が溢れ出る
宙に浮いた体はその重みで地へ落ちる
立ち上がる頃には
人間になれるだろう
そんな事の繰り返しかもしれない
....
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*
ぼくくはいつもあこがれていた
顔を上げて目を瞑れば
見えてくるものがあった
*
夜になって布団に ....
おまえの住家の辺りを通過
おまえとおなじ雨粒見てる
おまえとおなじ灰色見てる
おまえとおなじ高さの曇天
おまえの住家の辺りを通過
そうだ、ぼくらは
他人のことな ....
俺はストーカーよろしく
君にまとわりついているけど
全く振り向いてくれないんだな
言葉のメッキを塗りたくった
俺の虚像の裏側を
君はとっくに見抜いているんだろう
頭がいいからな
....
まるで自分が 他人みたいだ
マネキンみたいに 温もりがない四肢
片足でポーズをとり続けたせいか 右足首に亀裂が入っている
駅ビルの外向かいに面した デパートのショーウィンドーの中で
丸一日 ....
くわらるん くわらるん
どこかで誰かが呼んでいるよ
くわらるん くわらるん
どうして探してくれないの
くわらるん くわらるん
いつも一緒にかげぼうし
くわらるん く ....
暖かくなったなあと
ごろりと
ねころぶと
ひんやりつめたい
でもなんだか新しい布団にくるまるようで
このままでいい
桃色の風が
そのうち温めてくれるから
....
ちいさな影が旋回する
曇り空には
そんな顔しない
生きている
しかたないだろ
ちいさな影が旋回する
こころの闇を見つめる
こころの光を見つめる
....
おんなじ言葉でも 微妙にちゃう
うちとあんたの「好き」
わかってん、唇がふれたとき
月を{ルビ齧=かじ}る
空に凍てつく月光を
画鋲を摘み取るように
指の合間にひょいと挟んで
口の中に含む
すると世界が暗くなり
おまえの喉は冷たく燃える
噛み砕いた光は 食道を這い下 ....
ある日わたしの脳の真横にロボットの大群が押し寄せて、
今よりずっと透明に考えられるようになる。
脳の真横に訪れた、ロボットの大群はいつのまにか、
脳の内側に入って、はげしく金属音を鳴らすけれ ....
美だと ひけらかす者は
美の何者でもなくて
美が うぬぼれない存在だと
言わしめてくれる
{ルビ他人=ひと}を美だと
アッケラカンに言い切る度量が
美なのか
それとも
たわ ....
僕の昭和は40年代後半からだった
喫茶店の入口を飾るレプリカのような
素朴な人工がひかり輝く日々だった
遊ぶのは工事まえの土くれのうえだった
わざと転げて服をよごす
....
すっぽんぽんの蕾噴く
柔らかくて暖かい命が
すっぽんぽん
指の腹で優しく撫でてあげると
春の雷びびびと駆け巡る
肘のさきっちょ
肩のさきっちょ
耳の裏のさきっ ....
厚手のコートを脱いだら
するららと
時間が落ちて
あなたに一歩近づく
梢の蕾がふくらんだら
するりりと
時間が落ちて
あなたに半歩近づく
約束の日は近くて遠い
ほんのり焦 ....
{画像=120303011011.jpg}
雨と風が一緒に顔にかかって
少し髪を濡らす交差点に
ぼくは独り君を想い立っているよ
君がいつもしていたリュックの色は薄い緑色で
不思議 ....
下弦の月の両端に
二羽のフクロウ舞い降りて
シーソーみたいに揺らしてる
眠りに落ちた街のビル
その足元に落ちた影
月の動きにあおられて
ゆらゆら ゆらゆら 揺れている
俺の頭も ....
白魚にためらい傷がありました
スーツ着て会社に行かず凧あげる
君だけが友達でした藪椿
春淡し俺から会社辞めてやる
種芋になれずに腐り果てていく
ミシュランの調査員ぶり田螺 ....
硬直は誠実ではない。丸い玉の中をハムスターが走り続ける。同
じことばかり繰り返しているとバカになる。しかし同じことを黙々
と繰り返す熟練した職人はバカではない。悩ましいことは決して
有意なことで ....
どこもかしこも豆板醤
爆竹弾けて踊る龍
そんなことなら豆板醤
炒めてしまえばうまくゆく
いつものところで豆板醤
温もり探して触れる指
ここぞとばかりに豆板醤
フレフレ鉄鍋揺れ ....
この宙ぶらりんの、
したたかで弱い僕の情けなさを
知らないあなたは
幸せなのかも知れない
と、またも無重力の世界に身を埋める
どうしてもニコチンから抜け出せないのを
意志が ....
ぼくの抜けた歯を
おばあちゃんが外に投げた
いい歯が生えるといいなあ、と思った
冷たい夜気が窓を駆け抜けた
ぼくはテレビのまえで正座していた
正座して見ていると
おばあちゃんはいい番組だと ....
昨夜の口喧嘩の
後始末もそこそこに
降り止まない雨の中へ
ぼんやり歩き出す
昨日より重い靴底
視界に覆い被さる雨傘
押し黙ったまま濡れる自転車
舗道にすがりつく安売りのチラシ
....
{画像=120223235940.jpg}
欠けた塊の怒り
輝くような怒りはあるか?
物質のように堅い岩石のような怒り
傷ついて欠けてしまうような怒り
純粋で結晶していて ....
行く行く梅は今日も行く
桜ほどにも騒がれず
梅は行くのだ今日も行く
雲がくらあく光ってる
灰色の
冬にちかあい春の匂い
行く行く梅は今日も行く
桜ほど ....
ちくしょう!
畜生畜生ちくしょう!
と いう波 何度来ただろう
生きていて
どうして人は
他人の不幸やかなしみへ
軽く哀れみの言葉の一つでも投げてみれば
反応次第で
次から ....
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