彼女は困ったように笑う
道化の僕は困ってしまう
声をたてて笑えばいいのに
必ず彼女は眉尻を下げて
困ったように笑う
どうしてそんなに
困った顔で笑うのかと問えば
人の心を傷つけるから ....
空間耕す
捏ねる時間
香りがいざなう虚空のしらべ
舌の根深く余韻がはためく
はためく蝶の歓びの燐粉
店主の眼差し豆一つ魂
店を出れば空が街が人々が
鈍色の光沢 ....
サツマイモ工場で火災が起きて
町中が秋の香りに包まれた
一週間、焼き芋祭りが繰り広げられた工場前の大通りには
今も皮や食べ残しが転がっていて
野良猫がその取り分を巡って抗争を繰り広げた
僕は ....
ここは雲の影の下
ここだけ雲の影の下
指先ほどの小さな蝶が
風に飛ばされるまいと羽ばたいて
ああ、もうすぐ嵐がやって来る
人は自律を失って
こ ....
そこここあそこなたでここ
かむかむしかくいなたでここ
ちずをひろげてそこなたでここ
ころころさかをなたでここ
さてはてどこだなたでここ
ことことささやくなたでここ
....
十月のがらんどうな空に
ただ風が吹き付ける
風は力尽きた木の葉をさらって
ああ、今度こそ
夏が遠ざかってゆく
私の足元に転がる屍はきっと
現存する最後の夏の証
短すぎる生涯をすべて賭け ....
マーブルチョコレートが飛んできた
ゆっくり螺旋状に流れるように
光を浴びてきらきら虹色をまとい
こちらに向かって飛んできた
昔、子供の頃本物のサンタの写真を見たとき
昔、校舎の窓から ....
外は悲雨だから
いいんだよ、いいんだよ
ぼろぼろ泣いて、いいんだよ
今夜もまた眠れそうにありません
2時間前に飲んだクスリは一向に効いてくる気配がなく
仕方がないので強いお酒を呷ってみましたが
余計に目が覚めてしまう一方なのです
考えないようにしているつも ....
冷たい雨粒が
傘をノックする
居留守をつかう僕を
執拗にノックし続ける
開けてはいけない
部屋を覗かせてはいけない
開けたら最後
あいつはズカズカと
上がり込んできて
胸 ....
番になれなかった蝶々結びがひとつ。
咽の頭が
ひとつふたつ飛び出して
あてのない渇きを訴えている。
共に立ちえない辺の先が
行方知れずになりたいと訴えかけてきた。
叶わない全体 ....
その時の川に
入れなくなってしまうのは
水が絶えず
流れてしまうから
川は変わらないじぶんを保てず
姿を変えては
石を洗っている
けれど
小便がついた手を
洗うために
ただの水 ....
十月の午後の坂道は
陽が傾くほど急になる
呆気なく転がり落ちていく
未消化の棚牡丹と
未開封の地団駄
十月の坂道の午後は
追い縋るほど暗くなる
勝手に暮れなずむ
未完の ....
兄が彼女を連れてくる
姉が彼氏を連れてくる
私はカーテンの閉めきられた部屋に追いやられる
急になんの話だって顔をしないで
私は嘘吐きだ
それを前提に聞いてほしい
....
肩上から指先にむかってながれる一本(くだ)を
ふき こすり たたけば
装置はあやしく
黄昏もする
段々畑にくみあがる椅子に 沈み
ホールそのもの
の
しずくのような響体構造が 浮く
....
週五日希望ですが
あとの二日こそが希望です
そんなもん
人を幸せにする幸せを
知っているあなたよ
ありがとう
あなたのおかげで
この社会はやさしい
それでも
しあわせな人生な ....
複雑巧緻のからくり時計
機械の翼
落ちる歯車
千年契約
翼天使の呟き
上昇と下降
他人の詩を盗んだ男が終身刑に課せられる
昼間の
断頭台の吊り紐は遥か高 ....
また一つ仕事を投げだして どうせクズさと吐き捨て
さっさと歩き去った
夢と野望だけはやけにでっかくて
あの子との誓いを忘れるくらいに膨らんで
身体一つでぶつかっていって 見事粉々に砕け ....
きゅっとひねって
ぐいと飲み干す
なんでもないことのように
そうできたらいいのに
あこがれと崇拝が
近づけて遠ざけるから
私はどんどん小さくなって
ペットボトルの首飾りになって
た ....
大好きなものがたくさんあったの
愛しいひとがたくさんいたの
そんなものに
線引いて消していくのが
大人になるということ
あきらめてわらう
あきらめてなく
大好きなものが、愛し ....
私が私を見ている
不格好な背中が憎い
お前、なぜそこに居るの
私が私を見ている
丸まった背中が悲しい
お前、どこへ行くの
どこへ帰るの
雪のように
純白ではないけれど
雪のように
この手を
冷えさせたりしないのが
わたしの日々です
埃のように
身軽ではないけれど
埃のように
掃き捨てられたり
拭き取 ....
知らない事は多いけど解るのよ世界が悲しみだけでできていること。
母となり女を捨てた哀しみと 幸せそうなオルゴールメリー
泪眼の「生まれてくれてありがとう」、「産んでくれて」と返す気 ....
週末だから酒を飲みにいく。週末でなくても飲みにいくが、週末はことさら大量の酒を
詰め込む。僕らはつまらない仕事に飽き飽きしていた。それを酒で昇華する日々にも、
いつもと変わらない顔ぶれにも。けれど ....
走るトリル
軽快な鍵盤の連打を聴くうちに
視界が開けて広大な一本の道が現れる
どこまでも追いかけてくるスケール
トップスピードの旋律に
併走したくて意識を集中させる
Gコードを ....
どんな悲惨も
無よりはましかなと思って
野良猫たちの生を
肯定してきたのだけれど
汚いったって
臭いったって
生きてるってのは
そんなもんでしょうって
でもソマリアの餓えた ....
絶えないノイズが、右の部屋から、左の部屋から、そう、絶えず、聞こえてくる、スピーカーを通した、ノイズのような、ノイズが、両側から、いまいるここに、ここ、ここはつまり、じぶんのへやだった、このノイズを聞 ....
溶けてしまいそう
暑さのせいではない
時々空を見上げる
曇っていると泣きたくなる
今日はよく喋った
昨日は一言も声を発しなかった
電話をかける
最近どう?
暑いね
溶 ....
知らない内に致命傷
知らないのに致命傷
触れるな
危険
しかし治らん
悲しいかな
考えてしまう
風の音の向 ....
あの人から知らせが届いた。
何度か二人で逢った事もある人。
「入籍したの。名字、変わっちゃった。」
バカヤロウ、世の中のバカヤロウ。
世の中は悪くないんだけども、そうつぶやいた。
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