線香花火のおとたてて
ねずみ幽けき雲まから
まえの方からふわっと
わっとふけみたいな白
フロントガラスにパッ
パッパッパッ線香花火
僕は祈っていたのでした
....
鳥取の冬を包み
かくすもの
街の音まで凍らせて
夜を沈黙で満たし
立ち尽くした
遠くで、雪おこしの稲妻が
夜を呼びさます
暗闇に置かれた水晶の透明が
今 ....
ひろいひろい畑にて
老いた木、一本ありました
ひろいひろい畑には
淋しく淋しく木が一本
ひろいひろい畑に生える
老いた淋しいその木には
ここぞとばかり、この秋は
たくさん ....
月が
30Wの白熱電球の輝きを持って
フラリと空にある
都会の冬の夜空では
どんなに空気が澄んでも
瞬ける星は数少ないから
月は遠慮なしに
夜空を支配できるというのに
少し ....
綺麗なあなたに
名前をつけてあげたいけれど
あなたの名前はもう
決まっているのね。
もし私が壊れたら、
あなたにもっと
素敵な名前を
つけてあげられるのに。
やめてけろ
ひと恋しさにちゃちゃ入れた
わたしの思いを
やんわりと断つように
春の兆しは白い肩口の奥へと隠れた
厳しさだけではない冬の素顔を知ってから
流されるのとは異なる
自ら ....
わたしは助走する
ふり返る季節にはきっと
落し物などない
雪で描いた夢は
春を待って溶けゆくけれど
消えはしないよと
誰かが言う
春になればまた
花びらが夢を咲かせる
たとえ ....
書き留めていたはずの詩が
一晩のうちに
家出をしてしまったらしい
枕元にあるのは
真っ白な紙の切れ端で
紙を失くして
彼らは
ばらばらになってしまわないだろうか
雨が降 ....
河童
つい50年前にあの子と出会った川縁は
無骨なコンクリートで蓋をされたけれど
僕はまだ生臭い闇が忘れられなくて
水掻きをポケットに突っ込んでそぞろ歩く
都会の夜は頭の皿よ ....
半目で月をみると
遠い遠い
空に在る
金色の池のよう
淡い光を濁らせ
散らす
うすい金色の池で
手を洗い
兎に招かれ
あの月で酒を酌み交わしたい
お前さんどこからきた
私は青くて ....
――波の間にはねた魚のその行方
――あくる日に落ちた椿のその最後
どなたかご存知ありませんかと
大きな声で喚きながら老女が通る。
つららの下がった軒下で
猫が寝ている。
大層 ....
駅のホームで
すこし優しくなれるのは
いつもとはちょっと違う場所で
電車を待っているから
いつもの道で
すこし優しくなれるのは
切りとられた空が
それは
それは青かったから
....
あの空は
ぼくたちにとってのどんな色で
何かを忘れないための色になったりするんだろうか?
つきぬける青に白い雲ひとつ
思いかえせば、
この変わらない空の下を
ながい間、 ....
鼻唄で世界を救えたら
僕ら
憎みあうことなんて覚えなかった
争い事が苦手な僕らは憎むことにしたんだ
心の中だけで繰り広げられる戦争に
僅か
疑問を感じ始めた僕ら
ふと耳を
ふと鼓膜 ....
あまりに綺麗な世界の中で
素敵なものが多すぎて
いつも君だけを
見ているわけにはいかない
よそみしてしまう時もある
だけどその感動を
君のいちばん近くで感じられたら
いちばん最初に君 ....
090107
90円あげると言われ
口を開けて笑っていたら
50円しかないから
明日にと延ばされた
口を開けたまま
笑ったまま
明日まで待っている
嘘つ ....
ぬらりひょん
つかみどころなんてあってたまるか
若い頃の苦労はすぐに質入れしたし
長い物は巻かれるふりして帯にした
真っ正面から当たるなんてドジは踏まない
折れない柳は風を知り尽 ....
雑踏ならば天使みたいな昼間のキミのキス
は磁石みたいでこわい
最悪感でひろがるのに
何度もやめたくなくてくりかえす
後ろの座席で友達がねてるのに
寝てないフリをしている
たぶん
たぶ ....
あなたは書かれた事のない手紙
いまだ出された事のない手紙
封を切られないまま
大切に言葉をしまい込んで
わたしはそっと考える
その言葉がどんなに心を震わせるかを
わたしは夢を見る
....
空を溶かしたような
この海が
わたしの心の奥の奥を
綺麗に洗ってくれた気がしました
空と海が重なる此処なら
泣いても
全て飲み込んでくれそうで
心の雨もどしゃ降りに
降らせてみれば
....
暖房が効いた部屋
渇いた空気の中で
君の為に歌を唄おう
君がいないこの街で
君の為の歌を唄おう
悲しみは
どんどん
空から降ってきて
あっという間に
僕ら ....
はらはらと千切れゆく
はいいろの空のかけら
ひゅうひゅうと
ひょうひょうと
ふきわたる冬の風が
ふとだまりこむとき
かき消してくれないよ
この胸の鼓動 ....
断片的な言葉を掴むと
空気がぶるる、と振動する
それは、小さな彼の心臓の鼓動と似ていて
わたしは目一杯だきしめてしまった
茜色の夕日が 宇宙に恋をした
その夜に 幽霊たちは消えてしまっ ....
心地よい陽射しを枕に
うたたね
そよ風が運ぶのは
歌の種
耳を澄ませば聞こえる
ほら
今大地が
唄ったね
一番星を探す
夕日に隠れた雀が
さえずりながら帰っていく、手のひら
親指から終わるあなたは
小指から始まるわたしの声に
ただ、耳を貸している
紫が雲 ....
ろくろ首
それにしてもあなたを待ちすぎました
わたしの断ち切れぬ想いはあの日の
あなたのうしろ姿に縋りついたままで
身体だけが狂おしく軋みながら
いくつもの夜を越えて来たので ....
今にも落ちそうな
線香花火の最後の赤が
すっ
と
手元で息絶える
嗚呼
恋は終わるのだ
こんな風に
化石になって
かもめよ、教えてください
埠頭をかすめて海に消えたひとりひら
海雪の行方を
海峡の雪雲に隠れたプロキオンだって
待てば姿をあらわすでしょう
その、抱く思いに揺れていたとしても
....
やさしい眠りが
速度を上げて
朝の向こうへ離陸する
夢の中
街はまだ目を覚まさない
けれども電車は
定刻どおりやってくる
お雑煮を
まだ食べ終えてない人が
白組、白組、 ....
一人ぼっちに なりたい なりたいって言ってた
私がついに一人ぼっちになった
二人でいることのわずらわしさばっかり
わかったつもりでいた私が一人ぼっちになった
そう思うとこの町は ....
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