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ふとわたしはある予感がして
お風呂場へ走ってゆく
扉を開ければ片隅にいる
たわしは新しいたわしに
買いかえられていた

お風呂掃除係のわたしに
ぼろぼろになるまで付き合ってく ....
 
 
健康診断の結果
肺に小さな影がありますと書かれていた
早く再検査に行きたかったけど
仕事も忙しくて
時々そのことを思い出しては忘れ
思い出すと泣きたくなる夜もあった
実際泣いた ....
 
 
湯舟に浸かると
そこは港
ゆっくり岸を離れてゆく

目を瞑れば見えてくる
この世にひとつだけの海を
満天の星々を頼りに
湯舟はどこまでも行く

扉が開く音がして
お風呂 ....
 
象が海を渡っていく
かわいそうに
目が見えないのだ
かわいそうに
と人は言うけれど
思ってもいないことを
言葉にしてしまう
人もまた十分かわいそうだった
かわいそうに
何度も言 ....
 
戦争が終わらない
真夜中は
戦争を始めるため
回避するため
会議室で行われている

夜更け
戦争のための戦争は
繁華街に移行され
朝まで続く
眠らない街に
灰になって積もっ ....
 
陸上競技の大会で
入賞した
優勝ではなかったけど

おにぎりが
少し塩辛い気がした
母さんが少し
変わった気がした
僕も

晴れわたる空
というわけではなかったけれど
い ....
 
たかのり君
と呼んでしまった
生姜焼き定食のことを

もちろん
たかのり君が
生姜焼き定食であるはずはなく
けれども
一度そう呼んでしまえば
そのようにも思えてきて
こんがり ....
 
なつこさんが代休をとった

気配だけ
そこに残して
どこにいってしまったのだろう

お昼ごろ
今日なつこさんは
お休みだったんだね
という人が
かならずひとりやふたりいる
 ....
 
お見舞いにいくと
ベッドと見まちがえるほど
平らになっていて
痩せていた
祖母と手をにぎりあって
見つめあっていた

帰り際に
手をふった
なるべく笑顔で
いつものように
 ....
 
詩の一行一行に
花を咲かせたような
あの桜並木を歩く

僕には
名前を持たない
姉がいた

姉は木の行間をくぐり
幹の陰に隠れたのかと思うと
花咲き乱れる
か細い枝に立って ....
 
やさしい眠りが
速度を上げて
朝の向こうへ離陸する

夢の中
街はまだ目を覚まさない
けれども電車は
定刻どおりやってくる

お雑煮を
まだ食べ終えてない人が
白組、白組、 ....
 
ここで暮らしていたことが
夢のよう
いつかそうなる日が
来るとわかっていたから

やさしさは
やさしさでしかないことも
知っていたから
ただ祈るしかなくて
今も祈ることしかでき ....
 
なぐさめ方が
せつなすぎるから
苦笑してばかりいたけれど
ちゃんと泣いてくれる君の横顔を
ろくに見ることもできないで
最後にはいつも涙が零れていた

北風が目にしみるね
ふたりの ....
 
やさしい人がいる
生きることのつらさがわかるから
察してくれて
会ってくれる人がいる

めそめそと
泣いてしまうかもしれない
その人の前で
ほんとうは泣きたいのに
つよい男のふ ....
 
二十歳になった時
ずっと十九歳でいようと思った
三十歳になった時も
ずっと二十九歳でいようと思った

来年わたしは
四十歳になるのだけれども
三十九歳は
なかなか簡単には終わって ....
 
その人のことを
空さんと呼んでいた
空さんは
だだっ広くどこまでも
青くなったり赤くなったり
涙したりして
人のようだった

空さん

時々丘の上から
呼びかけてみるけれど ....
 
十くらいはなれた
妹に
よく似た娘に
やさしくしてしまう

やさしくした後で
そのうかれた顔は何だと
誰かに言われたわけではないけれど
きっと僕は
そんな顔をしてる

もっ ....
 
夜空を歩いてたら
サンタクロースに会った

そのことを君におしえたくて
さがしたけれども
みつからない
君ははじめからこの世界に
いなかった気がしてくるのだから
不思議なものだ
 ....
 
むかし恋をした
ひとたちの
面影のすべてが
あなたにはあるものだから
恋がいくつあっても
足りることはなかった

肩をならべて
星空を見ていた
あなたが僕の
僕があなたの
 ....
 
セーターが
箪笥の中で冷たくなって
死んでいたので
あたためてあげようと
思った僕のからだも死んでいた

箪笥には
僕以外にも
死んでしまった
家族のセーターがきれいに
冷た ....
 
釣りは飽きてしまったようだ
さかながいないからしかたがない
父さんだけが夢中になって
往生際がわるかった

ふりむけば
木のベンチで息子がねむってる
一億年前から
そうしていたよ ....
 
僕と妻にとてもよく似ていて
そのどちらにも
似てはいない
それが彼なのだ

君はいったい
誰なの
と息子の目を見てそう問うと
不思議な顔をしてる

ふと思い出す
僕と妻は
 ....
 
ひとり遊びしてると
きゅうに孤独を感じることがある
ひとり遊び
という言葉を知らなくても
たしかに僕は孤独だった

夜遅くに
父さんが帰ってくる
忙しくて食べられなかった
と言 ....
 
条件は無限にある
とすれば限られた
ひとつだけのような気がして

説明はできない
瞬きと瞬きの間に
なつかしい確信があって
ただそれだけのような気がして

つぼみのまま茎を折る ....
 
雑音が聞こえる
鞄の中から
聞こえる声を聞きながら
母は呆けた

雑音が聞こえなければ
昔のような
声で母は話した

鞄の中から
雑音が聞こえると
途端に母は
声を濁らせ ....
 
秋に夜が訪れて
炭酸水が流れこむと
暗い海の底
音もなく稲穂が揺れる

えら呼吸をはじめる
溺れないように
母が子守唄を歌う

目を覚ますまで
魚になる
泡をこらえて ....
 
庭の土を見てる
花ではなく土を
理由もわからずに

そこに横たわる
土の言葉で
言葉などなかったように
懐かしく対話する

知らない時を生きた
土の中に
句読点をさがしたら ....
 
ニュースを繰り返す
缶蹴りの午後
配線のため

テレビを消す
敗戦が聞こえる
空に花が咲いてる

母はアンテナ修理する
一人しかいない
父を受信するため

カランダッシュ ....
さくらさんの小川 葉さんおすすめリスト(28)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
新しいたわし- 小川 葉自由詩509-3-29
日常の味- 小川 葉自由詩709-3-27
湯舟- 小川 葉自由詩909-3-24
盲目の象- 小川 葉自由詩4*09-3-19
灰皿- 小川 葉自由詩6*09-3-16
美しい夕暮れ- 小川 葉自由詩709-3-6
とおい水- 小川 葉自由詩15+*09-3-3
なつこの代休- 小川 葉自由詩9*09-2-10
トンボ- 小川 葉自由詩9*09-1-29
桜並木の詩- 小川 葉自由詩709-1-27
やさしく眠る/急いで起きる- 小川 葉自由詩4*09-1-4
帰省- 小川 葉自由詩609-1-2
友達- 小川 葉自由詩708-12-29
やさしい人- 小川 葉自由詩508-12-23
三十九歳- 小川 葉自由詩308-12-22
空以外の空- 小川 葉自由詩6*08-12-19
- 小川 葉自由詩21*08-12-8
プレゼント- 小川 葉自由詩6*08-11-24
- 小川 葉自由詩208-11-23
あたたかいものを、ひとつ- 小川 葉自由詩4*08-11-16
一億年前の休日- 小川 葉自由詩2008-11-2
不思議なこと- 小川 葉自由詩508-10-28
ひとり遊び- 小川 葉自由詩12*08-10-24
恋のようなもの- 小川 葉自由詩508-10-12
- 小川 葉自由詩17+*08-9-29
微炭酸- 小川 葉自由詩11*08-9-14
花と土- 小川 葉自由詩508-9-2
カランダッシュと電波- 小川 葉自由詩4*08-8-31

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