夏の名残を雨が洗うと
淡い鱗を光らせたさかなが
空を流れ
ひと雨ごとに秋を呟く
九月は
今日も透明を守って
焦燥のようだった熱や
乾いた葉脈を
ゆっくりと
冷ましながら潤ませ ....
ぼくはぼくという世界の中で
毎日を過ごしている
きっと今日すれ違ったきみは
きみという世界の中で生きている
またね
と告げてわかれた花に
再び出会うことはない
久しぶり
と ....
いくつもの僕のうたのなかに
僕がいる
けれどそれはもう
いまの僕じゃない
僕のたましいは
僕のうたを
うらぎりつづける
そう
僕はいきているのだ
....
彼女が僕のために涙を流したとき、
僕は何も言えなかった
彼女のために泣きたいと思ったとき、
僕は涙の流し方を忘れてしまった
そして僕はいま
ただ一人で涙を流す
わたしは
とらえたものを
ひとつ ひとつ
千切って 割いて
溜め息の風に
流します
永遠は
はかないもので
だけれども
信じずにはいられない
だからわたしは
....
泥を
振り払おうとする腕こそが
いつまでも拭えない
泥かもしれない
確かめようの無いその有様を
透明である、とは
誰も語らない
そこでまた
ひとつの泥の
可能性が
散る ....
ルージュを差してスクランブル交差点を闊歩する
マネキン
サングラス越しのレーザー光線が
斜めに風景を切り取る
溶けて秋風に癒される切り口は
ぼくには見えない
エナメルメッキを貼った乳房 ....
カードが散らばる
ばらばら 散らばる
揃っていたと 思っていた
カードが散らばる
ばらばら こぼれ落ちた
手持ちのカードは
揃えていたつもりだったけど
あなたとの会話が
成り立 ....
ていきあつていきあつ
と いっしんに唱える、
上空を
旋回するビニールの屋根
めがけて
いっせいにひかりは弱まった。
自転車にのって上昇したのだ
こどもたちは眼下にひろがって
車輪 ....
今何周目?
同じところをグルグル回っていると自分が今どこにいるのか
解らなくなってくる
いつだってここに来ればたくさんの詩があり
いつだって会社に行けばたくさんの仕事があり
いつだっ ....
心頭をとぎ澄まし
目をつぶる
全てを忘れる
時に身を任せる
いくつもの悩みと
共に歩いてゆく
苦しみを押さえ
足を踏んばる
星に願いを込め
窓辺に一人歌う
さようならさよう ....
s o r a a m e
。
。
。
。
。
。
....
みんなが
暖かい暖房のきいた
乗りなれた車に乗り込んで
颯爽と帰っていく
またね
またあしたね
と笑いながら
速く来てねと言ったのに
お父さんは
私が最後の一人に ....
物置で一枚だけ埃を被って居たCDを、最初に再生したのは何時のことだったろう。
幾分色褪せたジャケットには、外国の空と外国の田園と外国の少年の写真。僕は窓辺に項垂れて、祖母の形見代わりの古いラジカセ ....
私は大丈夫
まだ頑張れる
『本当に?』
私はまだ大丈夫よ
まだ頑張れる
『本当にそう思ってる?』
頑張れ、頑張れ
....
ごめんなさい。
私ね、先週
他の人の腕に抱かれて
眠ったの。
君が嫌いなわけじゃない。
むしろ大好きで、
愛しくてたまらなくて。
言おうと思った。
謝ろうと思った。
....
黄色い粒子は
空気のなかの
ささくれの、
嗚呼、
うまくいえやしない
葉っぱが赤く
色づきたくないと
南風に揺られながら
きらめきストリートを
歩いている、
おとこのこおん ....
終わってしまった
はずなのに
それは密閉した
重いふたの透き間から
かすかに甘くたちのぼる
人知れず心の底に
埋めたはずなのに
かぐわしい記憶の薫りは
ゆるゆると漂い
真夜中 ....
景色が歩いている
わたしではなく
まるで時のように
目をつむれば
色をうしなって
古い景色が歩いてくる
錯覚していた
わたしはこの世界を
歩いてなどいなかったのだ
ここは風通りがいいから
きみも安心しなよ
あなたが言った
わたし今は
風が通らない場所にいたいの
わたしが泣いた
僕が豪語しようか、
きみの背中がすきだよ。
いろんなかなしみを背負って、
さまざまなしみをつくったね。
すこしだけの筋肉とか、やわらかい
へこんだ部分にたまるであろう あい だ ....
長い1日に幕を閉じて
鍋にあかりを放つ
ぐつぐつと煮立てる鍋の中
ひょっこり顔を出す
アクが膨らんで
なんでかおたまじゃすくえない気がして
とりあえず放っておいてみた
グ ....
東の空に
ぽっかり丸い
穴が開き
天上の光が漏れている
どこか青白い
底冷えをするその光は
薄明るい暗闇に
枯れ枝の濃い影を落とし
葉のない枝を
一層惨めにした
真夜中に
....
いつか
飛びたてる日が
くるのかなあ
今は
枝が覆って
少ししか見えない
青空へ
何もかも脱ぎ捨てて
自由な光へと
「ついこないだまでこのぐらいしかなかったのに。」
そんな風に言って母さんは自分の腰あたりに手をかざした。
(いや、さすがにそんなことはないだろう)
いつのまにか母さんを見下ろすようになっ ....
今の手持ちあんまりないけど
この半年を乗り切るには十分
かたまりのような不安は
津波のように押し寄せて
飲み込まれそうになるけど…
それでも後悔は、しない。そう決めたから ....
届かない、ところへ
ささやく
あきらめではなく
染め抜くように
静かに
いちばん遠い胸の奥で
月夜をおぼえているかい?
欠けた鏡のまぶしさではなく
影の地平から昇っ ....
夢から覚めたとき、またその深みにはまっているみたいな気だるさにやられてしまいそう。
帯びた熱の分だけ泣きましょう。
僕らが世界と戦うとき、もっと激しく抱きしめてほしいとき、
僕らいつ ....
最後に見たあの空は
いったい何色をしていただろう
思い出したくてもできない遠い過去
思い出す気にもなれない無関心
どちらが哀れむべきことなのだろうか
あの空が自由だというのなら
もう届くことのない夢
これから先 見ることはないだろう
さようなら 外の世界
さようなら 空よ
さようなら 自由よ
さようなら もう二度 ....
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