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ねずみ色のコンクリートが暗く染まる
何か落としものがあったような気がして
歩いて来た道を右から振り返ってみた
つうつうと機械的に落ちるさみだれ
庭に投げられっぱなしの花切り鋏は
いつから ....
大騒ぎしていた隣の部屋の大学生も
煙を撒き散らしていたスポーツカーも
凛と顔を上げていた向日葵も
みんなみんな、眠ってしまった
ベランダから両足を突き出して
ぶらぶらと泳がせて笑ってみる ....
すうっと堕ちていくような感覚と
鈍いしびれがあるという
それでいて苦痛ではないらしい
幼なじみのあの子も
隣の席の委員長も
さらにはわたしのママまで
患ったことがあるらしい
大人 ....
空気は薄い膜を張る
破れそうなほどに薄く
でもしっかりと光を受け止める
太陽も月も星も
全部
昼は柔らかくなり
夜は澄み切る
指先が痛む
耳の奥も痛む
心は熱 ....
かたかたと
少し間延びした車輪の音で
汽車は走る
稲穂が揺れて
風と戯れ
小さな花は
恐らく名もなく
数え切れない
視界に捉えきれない金の波は
さわさわと陽光を受け
....