何故だかこの世界は
酷く居心地が悪くて
沢山の人の中にいると
一人でいるより孤独だった
でも
本当に一人きりになるのは
耐えられなかった
年を重ねて
....
雨のなか、
竜が
咲いていた
それは
瞳が
見たのだったか、
耳が
聴いたの
だったか、
あまり上手に
思い出せないけれど、
あ ....
おいかける長針と短針
はしり疲れる毎日でも
よあけの街が
うつくしいのは
希望を灯し続けるから
ついに人だけになって
飛んでいる
はたしてそれを
飛行機と呼べるだろうか
翼も動力も
無線さえ持たずに
たどり着く先を失って
空飛ぶそれを
人と呼べるだろうか
私 ....
*もぎとる
少女の頬は、
うつむく程に
色味を増す/と、同時に
大人であることの意味を添え
甘く
そこに増して、赤く
刻々と刻むように
ただ、坦々と
熟れていく
....
夏がほどけて…
*
魂迄もが吸い込まれそうな程
深く澄んだ青空の背景に7月が漂う午後に、溜め息一つ
ふうっと飛ばせば、眦(まなじり)を掠めて悪戯小僧の麦藁帽子が天高く舞い上がり
通りすがりの風 ....
リスボンでもないのにファドの旋律
わたしは歌詞を知らない
調べは暗く哀しく
凡夫の矜持と凡婦の清潔
宇宙を小窓から覗いている
そこは濃い月の色をしている
ふと人生の目的について考える
愛 ....
はたと醒めては朝を呪い
ふと我に返っては白昼に佇む
夜な夜な待てども、愛想もない
ちぎれた写真を並べても
知らない顔があるばかり
いつからだろう
こんなにも笑わなくなったのは
慣 ....
ねずみ色のコンクリートが暗く染まる
何か落としものがあったような気がして
歩いて来た道を右から振り返ってみた
つうつうと機械的に落ちるさみだれ
庭に投げられっぱなしの花切り鋏は
いつから ....
かんだかい悲鳴で目が覚める
でもそれはちがかった
醒めたのは覚醒の産声
もう後ろには下がることが
できなかった
今まですれ違った人達は
世界の何%だろうか
今 ....
天荒の息急き切った海の意志
俳句する永遠の今を留めたし
風動き我突っ立つて雨の降る
写真にうつっている僕は
満面の笑みでカメラを見つめていた
でもそれは過去の遺物
その写真にライターで火をつけて
灰皿になげすてる
今なら言えることは
昨日は言えなか ....
たっぷりの熱湯の中に
捨て台詞を少々加えて
マカロニを入れる
いつまでも未練がましく
くっつかないように
十分注意しながら
再び立ち直れるまで
何回か掻き混ぜる
アルデンテ ....
やがて雨が降るというとき
そんなとき
一度終れたらいいな、と思う。
魚になりたがっていたからといって
皆が皆、
魚になれるわけじゃない
でも、それでも充分
幸せそうだった ....
大騒ぎしていた隣の部屋の大学生も
煙を撒き散らしていたスポーツカーも
凛と顔を上げていた向日葵も
みんなみんな、眠ってしまった
ベランダから両足を突き出して
ぶらぶらと泳がせて笑ってみる ....
帰ろうかな
そう思った
一瞬を幾度か
ちらして!
5月
空は氷を溶かした青で
お花のジェット
バウンド・フォー・トーキョー
千歳の上空から苫小牧
育った家を見下ろした
掘り ....
良く晴れた多摩川沿いに走る二車線の都道
歩行者用信号機は青へ変わっているに右見て左見て
みーちゃんの手を引きながら急いで渡る
轢けるもんなら轢いてみなよ…いつもならそんな気概なんだけど
....
手を引かれ歩く。
懐かしい匂いのする君
その面影は記憶の水底
私が潜水夫になって強く握り返すと
つないだ手には水たまりができて
空の色を映す。
薄暗い緑の茂みの奥までくると
....
ゆっくりと、撫でてゆく
背中から本能までの
または、今日から命果てるまでの
測れない距離を、あの人の言葉は
簡単に届いて、そして、
明日に色を書き足してゆく
友情、と言っていた
....
涙が枯れた ひとりの夜は
ゆっくりと
あるいていよう
ひとりのリズムで
つきといっしょに
行く先は決めない
足の向くまま
吸って 吐いて 吸って 吐いて の
自分のりず ....
夏のはじまりは
いつも雨
何処からともなくきこえてくる
海のうた
(セイレーン)
還る場所をさがすように旅をする
あの波の繰り返しのように響いてくる
記憶のような満ちひきに名 ....
白く灯るシグナルに
息をのむ
メールは、きみ
こころがふるえる
ばかみたいに
よろこんで
くやしくて
すぐに返事は
しないんだから
すうっと堕ちていくような感覚と
鈍いしびれがあるという
それでいて苦痛ではないらしい
幼なじみのあの子も
隣の席の委員長も
さらにはわたしのママまで
患ったことがあるらしい
大人 ....
{引用=草っていうのは
好きなことばのひとつです
あといくつか好きなことばがあるのですが
そこに石があってもいいし土も
あるだろうし水たまりもあるし
雨がふっていてもそれはそれで
....
涙を流して見つめ合う
あなたは左のまぶたから
私は右のまぶたから
唇から白い花びらはらはらこぼれ落ち
その花が水に流れてゆこうとも
あなたは私を知る事はない
私もまたあなたを知り得 ....
くるぶしを浸した
海の底の
遠ざかる砂に
裏返る
また少し君のこと
舞いあがる
風のゆくえに
どんな不自由をみたの
何もない空に
探してる
君の糸口
いくつかの土くれは
....
コンクリートブロックを敷きつめた街に
私 は裸で腰かけている
見知った声が聞こえたので左手を上げて後ろを振り向いたが
誰もいないのを確かめただけだった
何故なのかを思い出すことは
当 ....
立ち止まると
黒子が幕をあげて
回想の舞台があらわれる
三十年も前のこと
大晦日の夜中に
明治神宮に初詣に行った
十二時を過ぎると
賽銭箱にむけて
たくさんの人が硬貨を
人々の頭 ....
ノートの一番後ろのページに
言い表せない想いを小さく綴っては
どんな風に貴方に伝えようかと
やるせなく頬杖をついた
本当はこんな言葉なんて
グチャグチャに丸めてしまえば良かったんだ
....
砂浜を撫でる乾いた風が
肺から循環する
感傷の毒を洗い流し
ただ瞬間だけを咲かせる
吐く息はいつも
黄痰に鎖を繋がれ
夢の欠片も存在しない
一本の座標軸に
流され惑わされながら ....
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