すべてのおすすめ
春風にそよぐ{ルビ枝垂桜=しだれざくら}
青空に響く{ルビ鶯=うぐいす}の唄
{ルビ我等=われら}は{ルビ童=わらべ}
肩を並べてさくらを唄う
* 第一詩集「 ....
春の陽射しに
紅い花びらが開いてゆく
美しさはあまりに{ルビ脆=もろ}く
我がものとして抱き寄せられずに
私は長い間眺めていた
今まで「手に入れたもの」はあったろうか
遠い真夏 ....
{ルビ濁=にご}った泡水が浅く流れるどぶ川に
汚れたぼろぞうきんが一枚
くしゃっと丸まったまま{ルビ棄=す}てられていた
ある時は
春の日が射す暖かい路上を
恋人に会いにゆく青年の ....
川沿いの道を歩きながら
澄んだせせらぎを聞いていると
傍らを
自動3輪車に乗ったお{ルビ爺=じい}さんが
口を開いたまま
骨と皮の手でハンドルを握り
いすに背を{ルビ凭=もた}れて傾きな ....
目の前に桜の老木が立っていた
土の下深くへと
無数の根を張り巡らせ
空へと伸びる
無数の枝を広げ
( {ルビ薄曇=うすぐもり}の雲間から 白く光る日輪が覗いた
太い幹 ....
雨の降る仕事帰りの夜道
傘を差して歩く僕は
年の瀬に冷たい廊下でうつ伏せたまま
亡くなっていたお{ルビ爺=じい}さんの家の前を通り過ぎる
玄関に残る
表札に刻まれたお爺さんの名前 ....
私は今まで
気まぐれな風に吹かれるたびに
力なく道に倒れていた
だが、夢を追うということは
眼前に漂う暗雲を
光の剣で貫いて ....
よく晴れた日の午後
逃げ場の無い闘いに疲れた僕は
ベッドに寝転がり
重い日常に汚れた翼を休めていた
ラジオのスイッチを入れると
君の{ルビ唄声=うたごえ}が流れていた
窓の外に ....
ある友は移動中のバスで吊り革に今朝もぶら下がり
車窓が雨に濡れるのを見つめながら
渋滞で出勤時間の近づく腕時計を見て{ルビ苛=いら}ついていた
もう一人の友は勤務先の病院で
昨日の眠れな ....
真夜中の部屋で独り
耳を澄ますと聞こえて来るピアノの音
沈黙の闇に 響く「雨だれ」
( ショパンの透き通った指は今夜も
( 鍵盤の上で音を{ルビ紡=つむ}いでいる
写真立ての中で肩を ....
カレンダーを一枚めくり
二月の出かける日に ○ をつける
数秒瞳を閉じる間に過ぎてしまう
早足な{ルビ一月=ひとつき}の流れ
数日前話した八十過ぎの老婆の言葉
「 あんた三十歳? ....
一
昼休みの男子休憩室の扉を開くと
新婚三ヶ月のM君の後ろ姿は正座して
愛妻弁当を黙々と食べていた
「 おいしいかい?
結婚してみて、どうよ・・・? 」
と買ってきたコンビ ....
仕事帰りにくたびれて
重い足どりで歩いていると
駅ビル内のケーキ屋に
女がひとり
微笑みを浮かべて立っていた
ガラスケース越しに
ふと{ルビ眺=なが}めるささやかな幸福
その{ ....
{ルビ穏=おだや}かな初春の陽射しを{ルビ額=ひたい}にあびて
目を細め のんびりと自転車をこいでいた
狭い歩道の向こうから
杖をついたお{ルビ爺=じい}さんがびっこをひいて
ゆっくり ゆ ....
先輩が威勢良く{ルビ梯子=はしご}を駆け上がり
天井近くの狭い{ルビ頂=いただき}に腹を乗せ
{ルビ扇子=せんす}を指に挟んだ両手・両足を広げて
「 {ルビ鷹=たか}・・・! 」
と ....
真夜中の浜辺に独り立つ
君の{ルビ傍=かたわ}らに透明な姿で{ルビ佇=たたず}む 詩 は
耳を澄ましている
繰り返される波の上から歩いて来る
夜明けの足音
君の胸から{ルビ拭=ぬぐ} ....
1 2