夕暮れの並木道
服部 剛

春の陽射しに 
紅い花びらが開いてゆく 
美しさはあまりにもろく 
我がものとして抱き寄せられずに
私は長い間眺めていた

今まで「手に入れたもの」はあったろうか 
遠い真夏に手を伸ばした酸味のある果実は 
皮だけを手元に残した幻

やがて秋を迎えると 
胸の空洞から浮かび上がる淋しさは
透明な雲となり
いつもかたわらに浮いていた

夕暮れに照らされた
うっすらとした雲の輪郭りんかくを横目に 
私はき過ぎる 

路面に枯葉の舞う 
秋の調べと共に 
無人の冬の夜へと続く 
夕暮れの並木道を 





自由詩 夕暮れの並木道 Copyright 服部 剛 2006-03-13 00:25:59
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