穴の中 〜冬眠の詩〜
服部 剛

先輩が威勢良く梯子はしごを駆け上がり
天井近くの狭いいただきに腹を乗せ
扇子せんすを指に挟んだ両手・両足を広げて

たか・・・! 」 

と叫んだ

後輩の僕も続いて梯子を駆け上がり
頂で羽ばたこうと翼を広げる

眼下の床の遠さにひる
思わず翼を閉じる

悔しくて
何度も駆け上がり
飛ぼうとして

ちぢんだ

飛べない鳥

十数回目でようやく頂に腹を固め
恐がりな瞳を前に向け
背筋をまっすぐに伸ばし
翼を広げた

一瞬

眼下の無人の客席から
幻の拍手がき起こる

視界の前方は青空
雲の絨毯じゅうたん彼方かなたに顔を出し始める日の出


( 約束の言葉が記された一通の手紙
( 遥か頭上の空から舞い降りてくる 



目覚めると、冬の早朝。 
毛布の中でじっと春の訪れを待ち続ける僕は
きらめく木葉このはが喜び踊るうららかな陽射しを夢に見る
土の中のモグラだった。 





自由詩 穴の中 〜冬眠の詩〜 Copyright 服部 剛 2006-01-13 00:37:14
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