ゆうべの夜汽車から
  わたしたちは悲しさをひろった
  たがいの指をつかい傷だらけの愛をかぞえ
  蒼くけぶる夏のかげに涙あふれるまま
  遠い山から朝日が耀くのをみつめた
  ....
  団栗か硝子か五つばかり
  テラスにじっとうずくまり
  ひろげられつつある多孔性の光の敷布
  今日も透き徹っていくわたしたちや
  夏の朝は意識のハアモニカだ
  中央署の傍 ながい
  みちを吠えた舌の葉に
  砂の月がやっつ、
   しろい やわこい
    まるい  あわい
  夜 銀 カセットテープ
  リールを、まわすように
 ....
  桜上水。
  蝦蟇口のなかの、みずいろにこわれていく
  春、わたしたちの優しさを{ルビ回顧=おも}いだす。
  発泡酒をのみながら一銭にもならない話をしたこと、
  夜の昏さに身 ....
  右腕や左腕やどちらでもない腕などがそこに浮かび、
  かえってきたのか向かっていくのか全然わからないが
  アルミ製のサッシ越しに月面の色でくりかえされている
  気は確かだ気は確か ....
  かたむいた胸を
  祭太鼓が踏みかためていく
  永遠へ向うあなたの黒髪の隙、
  円形・方形の一群は街を滑落し
  ひかりとかげを揺れ模糊となっていく
  わたしのさびしさの刹 ....
  なにかに似たなにかが
  わたしの緑色を這って{ルビ滑=ぬめ}る
  朝陽も入り込めない太い闇を
  しずくのような眠りが円く湿らす

  
  葡萄味で棒状の鬱
  なにか ....
  サルビアの陽射しへ
  うつむいた頸がいろどる
  あなたが放つすみれ柄の微熱
  この愛しさと出会うために
  幾度自らを{ルビ擲=なげう}ってもいい
  振りむいた睫毛に弾む ....
  見えつつ
  あるものの内壁へ
  つたう光へ、冷えた天使をみつめていた
  腫れ房を成す、{ルビ硝子景=ガラスけい}の、あなたがたの
  優しさから眼をそむけた
  見えつつ  ....
  透きとおった女に
  殴られた男の傷から
  ながれる血は透明でなかった
  

  くろい鍋がはっきりと置かれた
  江東区亀戸二丁目のキッチン 
  言葉のかわりだという ....
そしてぼくたちは自由になる
愛するたびに愛から
悲しむたびに悲しみから


ぼくたちはわからなくなる
夕暮れにたちどまって
海のうえの光る鳥、
そこのしれない心の闇、
考えて ....
  一機の ヘリコプターが
  交わりをひとつずつ置いていく
      海色の稜線、わたしたちの
      茹だり、かげ沿いに膿んでくる、疼痛の粘り気
      冷えすぎた{ルビ ....
  床への
  暮れどき
  バナナ、薫り
  ふさがれる
  夢の耳


  碧い
  シャツの海では
  あなたらしき丸みが
  ちぎりすてた影が
  つぎのひかりを ....
  肋骨の
  埴生 に 牝鹿らが
  痩せている あなたの
  電流をまわるるる
  ピン・ボール!
   ピン・ボール!
    ピン・ボール!
  ホネ・ボネの
  ソコ ....
  昨日 私たちは
  ぶ厚い夏の憂いの底で
  椅子に座り 黙って紅茶をのんだ
  西友で買ってきた安い{ルビ氷菓子=アイスクリーム}を
  紙スプーンで交互に食べて


   ....
  祝日、
  見あげたところに
  日の丸がはためいている
  木蔭では 優しい五月も笑う
  大切な人からの最後の{ルビ詞=ことば}のような
  陽射し…… 僕は思う、いつまでも ....
  朝の肌にはずむ、
  夕暮のような愛 水いろにゆがんだ
  その痕 わたしたちの歌は 数えきれない
  むなしい花びらで埋れた これ以上、
  あなたにはなにも云わない
  きみの額に
  落ちた、よる色のはなびら しっているか
  それはぼくが 云えなかった言葉だ


  ただ 白としろの縞模様を いつも
  ぼくたちは心のように抱いた きつく
 ....
  欠ける 夕
  白の 岬……………………(に)
  わたしたちの
  線は  まるく  欠けて
  点も あおく  こわれ
  はずむ あなた 骨の
  陽傘 シャツの ゾッと ....
  ぬるい肩ら、
  いまは{ルビ抱=いだ}きあう
  あたたかな那由多に


  {ルビ細雪=ささめゆき}、
  うす燈り
  耳のなかの馬にのり
  ぬるい肩、はなれていく ....
  紫が、れん・煉瓦。
  かすか(に)ふえかさ・かさなって、
  わたしら、また、ねね・ねむ・眠たくなる
  のろい、泡の、すきとおったまぶ・目蓋
  (に)ハリガネの蚊が
  お ....
  水辺。{ルビ蟷螂=かまきり}はひらき、
  へちまの軟さの かれのかげは
  朝、をそのままたたんだままにあかるく
  ハズムばかりに道化嗤いし、南の果物さながらに、
  マアケッ ....
  剥がされた ああ、
  犬 も……ひとつの
  呼吸から ああ、もうひとつの
  ことばへと いつわり (靴のよう) 
  さびしい (想うこと のよう)


   犬 も、 ....
  {ルビ破瓜=はか}(は)
  蒼い、瓦礫のような
  いわし雲の瞳の(おんな、)渇きはてた
  袋へと詰めた街は、桃の味がするのだろうか?
  その陽 筒へとがり
  粘りつきつつ 茎にまがり
  (熱せられた){ルビ感汁=かんじゅう}の ぎゅわり、
  {ルビ盤陀=はんだ}のごとく やがて凝固をしたが
  わたしたちはと ....
  銀鮭の
  苔かおる底を、
  小河らの肌がすべる 春という時に
  生きることができてよかった

 
  灰色の水に 憶えている
  歌の果てに燻る 哀しみの螢火
  耀 ....
  缶の 胚は
  ここのつに 今 熟し
  むらさきにささける 夜
  埃、あかい くらがり
  埃、くらい あおやぎ
  埃、あおい しらなみ
  埃・埃・埃……
  埃、あ ....
  「白樺へ」皮(、)剥く 
  夜る辺 ない 陽陰へ
  コダマする わたしら、
  やぶれかぶれ ワタシラ、
  一本の棒のごときうつくしさのみの
  一本の棒のごときうつくしさ ....
割れた瓶から
歌が こぼれた
はてしない青をうつし
暗闇をふたつに切り裂く
ひとつの歌が今こぼれた
まだ名前はついていない
言葉さえ、まだ追いつけない
 ....
  花弁 さるすべりの
  あおい昏さにあかるみ、
  わたしたちは愛した 確かに
  弱さのかげにしおれた また一つの
  どうしようもない弱さ・ひとらしさを
  愛した 確かに  ....
草野春心(1149)
タイトル カテゴリ Point 日付
曙光自由詩116/7/16 22:11
団栗か硝子[group]自由詩016/7/13 23:21
柳夜のリール自由詩116/7/13 23:04
桜上水自由詩216/7/11 23:56
多い腕自由詩3*16/6/9 21:46
かたむいた胸[group]自由詩316/6/9 21:30
[group]自由詩316/6/9 21:28
放熱[group]自由詩5*16/6/5 9:52
冷えた天使/見えつつあるものの内壁へつたう光自由詩816/6/4 9:54
[group]自由詩4*16/6/2 23:40
my song自由詩0*16/6/1 0:23
交わりを置く/そらという球体/見ることの稜線自由詩3*16/6/1 0:05
丸み/時の棄て場自由詩416/5/28 13:23
詩/肋骨の埴生自由詩116/5/21 19:38
昨日自由詩416/5/8 8:41
波光自由詩3*16/5/7 18:00
恋のかなしみ[group]自由詩316/4/23 17:28
kamome自由詩116/4/17 10:32
misaki自由詩116/4/17 10:20
nayuta自由詩316/4/10 10:42
nemuri自由詩016/3/27 13:29
kamakiri[group]自由詩216/3/21 13:37
inu自由詩116/3/20 21:18
momo[group]自由詩116/3/14 22:21
tsu-tsu自由詩116/3/13 8:29
midori[group]自由詩216/3/12 16:09
ginga自由詩116/3/12 16:05
shirakaba自由詩016/3/6 23:03
bin自由詩316/2/28 15:18
sarusuberi[group]自由詩416/2/26 23:14

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