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パラダイス イズ インサイジュー
パラダイス イズ インサイジュー
さあ、マイムマイム、舞え。
心持たぬ人の群れ
王国にいま集え
ビト ....
怖くても
震えてはいけない
月曜の朝に
震えてはいけない
胸の分厚い脂肪と頑丈な骨の向こうにある
ちっぽけなポンプが
か細い悲鳴を上げようとも
決して震えてはいけない
震えることは ....
光りにむかって飛んでゆく
カラスを綺麗と思ったの
黒い背が
ひかるひかる
橋の上の
私を置いて真っ直ぐに
飛ぶ君は汚れてなんかない
家の中で一番大きな窓に身体が映る
わたしの本当に美しい姿は
ピアニストになり損ねた青年の指にゆっくりと裂かれるとき
離れていく右半身と左半身が完全に分離する寸前に
皮膚が結露に触れて濡 ....
おじさんの葬式にいった
もう何年も無沙汰していたおじさんが死んだのだった
ぼくは棋士にはならなかった
おじさんはずっと独身だった
泣けてきた
幸せとはなんだろう
ぼくが決めることではな ....
埃の舞い上がる歩調に
嗅覚は痛みを放出する。
ここに枯れた曜日を
交わして
私の呼吸はゆっくりと
化石する。
もう、映えないで
と弾けた西日に
夜のさりげない会釈を
歪ませて
朗ら ....
ねえ雨って何色
銀色かな、白かな、黒かな、グレーかな
あなたといる時、雨は見えないの
音、そう雨の音しか聞こえないの
君といる時、雨は銀色に見える
ほら、あそこの窓にも、あの電信柱にも
....
信じるひとの上にも
信じないひとの上にも
雪はつもっているのです
きらきらと
反射しているのはこの雪が
またかえろうとするからです
せかいへ
わたしのまわりで
せかいは生きるめ ....
濁った窓から
冬の垂直な日が部屋の壁まで届く
真空管のなか
あの日のこころの蠢きを泳がす
それはあまりに遠い日なので
曲げた腕の面積では
足りない計算式のように
触れることのできない感情 ....
骨を押しつぶす音が聞こえた
あれは傷つける音だ
あれは私を悲しませて、悼ませる音だ
あんな音は聞いてはいけない と
耳を塞いだ
自分か 娘か 迷って、娘の耳を塞いだ
嗚咽 ....
海の森は林道からはじまっている
その入り口にはフクロウがいて
たまに人間に預言めいた案内をする
うえからひかりが射し込んでいる
月のひかりがちぎれ雲みたいになって
道には ....
海にゆく
そいえばふたりでいったことない
ふたりでゆけば
どんなオモシロ見つけるんだろ
そこで焚火したい
おなじ火みつめて
ぬれ新聞紙にくるんだサツマイモ
ア ....
びょうびょうと犬が鳴くのでここいらはもう一帯冬である。
山も空も野も白いので、逆さになって落ちる童が後を絶たない。
びょうびょうと犬が鳴くのでここいらはもう一帯冬である。
雪の上に落ちた南天 ....
.
胸にはきみの大きさの空
心に果てしない岩石の荒野
手に一把のドライフラワー
携{ルビ=たずさ}え埃だらけで歩いている
.
古びてカーキ色に日焼けした風景画の人物
天地玄黄そら ....
吹きすさぶ風に
みがかれて
凍てつく水に
すすがれて
透き通ってしまった
哀しみは真冬の
背骨に宿った
遠ざかる空に
みはなされて
優しすぎる光は
とどかなくて
行先すら ....
懸命に生きる
あなたの
手入れを忘れられた脛の毛に
日々の疲れを
無意識の諦めを
そして
少しの哀しみを
想う
駅のホームで
電車を待つ
毛 ....
味わう
苦味潰した味を味わう。そんな顔を持った者は知っているが、味があったとは。
例えば、食卓のテーブルの隅にこぼれ落ちて死臭がするほどに放置されていた味とか、三日も口を聞かないで酸っぱく凍り ....
私の手は大きい方なのか
指が長いのは
誰かの忠告通り
手袋で隠した方がいいのか
手相をみてもらった
50歳すぎてから開運されますね
ああ、
そのころ母親はどうしているだろう
....
半月が霜で白くくもった今夜
あんまり寒いので布団が凍ってしまった
冬は反省するべきです
わたし今夜は性欲があるのに
眠らせてくれないなんて
だって夜は長いし
(これも冬のせい)
マス ....
うずくまって眠って、起き出してきたら窓越しにもう夕日が見える
窓を開けて見てみたらきっと綺麗だろう、そう思うだろう
煙草があと半分しか残っていない 吸いかけを吸う
鼻先で燃えてい ....
しぜんを
かんさつしたいけど
このしろいたてもののなかで
はたらいてばかりいるから
しぜんをかんさつすることは
できないとおもっていた
なのに
このしろいたてものの
な ....
岩に囲まれた
岩が叫ぶ
陽は圧され
少し 撓む
塔よりわずかに高いところに
見えないものの軌跡が残り
何処よりも早く暮れてゆく
音けす音を撒きながら
....
この三角地点の定義を持ち合わせていないから、光がクロスする辺りから眩暈が飛んで来る。この位置に私がいることを誰も望んではいないのだ。灯台への坂道は紛れもなく点だ。高さを手渡されても、私は硬直するこ ....
どうせ とか
思うのやめよう
何の解決にもならない
誤魔化しも改めて行こう
宙は人工衛生のゴミだらけ
いつも誰かが後片付け
噛んだガムも吸殻もシーツも
イチバンや二番を ....
道端に人が横たわっている
居眠り運転の自動車がやってきて
定刻通りに轢き逃げしようとしている
その間にも私には守るべき家族がある
見なければ見ないことに出来たその人にも
同じくら ....
ゆたかな歓声のあと 出てくるのは出汁
悪魔でも華の色でもない 千切られた湯
手にした誰かがそれを青といい
自分にみせたから
変えられると思った
透明というまま
すばらしいちからで
....
空が黄色いよ
と彼女が言う
見上げると
私たちが信じている
「いつもの青い空」が広がっている
けれど
わかる気がするのだ
今 確かに彼女の空には
黄色いカーテンが覆いかぶさっていて ....
{引用=
満月の夜には
外にでてはいけないと老婆はいう
ふらふらと外にでて
川を遡上
青い山に囲まれた
いちばん星空に近いその湖に行ってはいけないと
ゆらめ ....
白い顔
淡い青
深い緑
その目は君を見てる
君は見られている
それをドコかでわかっている
それを気にしつつ
気にしない
時と場合の次第で
それにあるいは
頼る
もしくは、
....
無線紙の上
這い伸びる
黒インクの静脈は
冬ざれの様相で
ひたひたと
忍び寄る
絡み付く
{ルビ荊棘=けいきょく}の枝を
程良く剪定し
暖炉に放るのだが
パチパチと
節は爆ぜ ....
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