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土曜日
新神戸駅に着いたぼくを
おおきな花火大会が迎えてくれた
戦争の音が
山と港にこだましている
降り立ったホームに足をとめるのは
ぼくぐらいだった
ビルの ....
コツコツ堅い青空の上に
力こぶのように積み重なる入道雲
場違いな黒雲が二つ
空の低い位置を漂流する
小さくスキップして踊るピアノの音
きれいに言葉を剥がす車たち
音声もミュートされる歩行者 ....
神宮の花火大会へ行った。
どうして、
人ごみに吐き気ももよおすくせに、
そんなところに、行ったのかというと、
彼女に、浴衣を着せたかったから。
ちょっと黄味がかった、
トンボもふわりと浮か ....
夏
あぢ
なんか、快晴ではない
曇っていて
空気がじめっていて
あぢ
あぢい
君と別れるとさ
俺はもう
切なくて
切なくて
なんか、夏祭りらしいんだけども
俺、見学も参 ....
悩んだときは
ブラッドオレンジに染まる
マンションの給水塔の上に立ち
三百六十度 この街の大パノラマを この眼で捉え
瞳を閉じて シャッター音を鳴らす
沢山のネガが出たら
その上 ....
これ以上泣いたり笑ったりできないくらいに疲れてそれでもお金は味方だと思った。一粒500円のチョコレートを買ったり髪の色を5日ごとに変えたりしてそれでやっと立てている感じがした。洋服より下着にお金をかけ ....
アンカーに係留されている大型船
岸壁の縁に並んでいるビット
その上に座り俺をじっと見ている猫は
俺を町中からここまで連れてきた。
俺は猫に話しかけた。
ポケットから取り出した小さな煮干し呉れ ....
言葉はすでに
意味を 捨てた
俺は死にたい
木の 幹として
百合のつぼみが白く垂れている
セミが電気設備のような音をたてている
葉が揺れている
オレンジと黒の蝶が羽根をやすめている
影が揺れている
緑がひかりで黄ばんでいる
....
赤子のように
愛したひとがいた
しあわせだった
はじめて知ったひとの乳首を
赤子のようにさがした
姿が見えなくなったり
声が聞こえなくなったりすれば
泣き ....
安っぽいネオンに浮き上がる壁のシミ、年食った売女のためらい傷にデカダンスすら感じながら、油臭い路地裏につっぷした浮浪者の踵、また、その頬に刻まれた皺、それらの造形美に酔うことだって平気で、若い君は強 ....
どんぶり一杯の葉
あなたはそれを
毎日食べているので
肌がうっすら
緑色に変わってくる
緑色のままで
接客も料理もする
時々、糸を吐き出す
さっき捕まえた蛾が
腹をひくひくさせていて
卵を産むのかと思う
葉の上に置いてやると
動きが止まり
腹を破って
なにかの虫がこぼれる
その虫が世界に広がる
緑波立つ
一面田の面
太陽真上に
正午の沈黙
見時葉の月
一よう多様
大気の底で
焦土の地が沸く
あの夏の日々
われを失う
瀕死の乱心
あの夏の日々
割れる脳内 ....
日本海にしずむ
落陽は
おおきくて美しい
と、ラジオでだれかが言った
*
かつて
五島灘にしずむ
落陽を
―― オレンジ色のおおきな
....
遠くを過ぎていく船
雲の波紋
今日も川岸で一人
友達のいない私は
一人なのだと思った
誰もいない
遠い街で
私は喫茶店でエッチな小説を読んでいた
誰かが 私のことを待ってい ....
あそこを
触れば
ビクッと
反応する
さすがディックの
素晴らしさ
「あそこ」
「なあんだい」
パンツ弾ける
あなたは若い
ペロッと
舐めれば
ムクッと
答える
テクニ ....
ちーちゃんの誕生日の朝
いつものように洗濯機のスイッチを入れる
昼前には電話をしよう
生まれてきたことをお祝いする日だ。
ぽかんと夏空がおおいかぶさり
蝉は式典に関係なく鳴き ....
着信音
淡いブルーの光
点灯
はい、もしもし。
駅前の大通りで
時差式の交差点で
地下街へと降りる階段で
すれ違う
たくさんの人たちは知らない
私がこ ....
あなたが
あんまりにも
潔く笑うので
わたしの胸に
轍ができた
そうしてそのうち
深い森になった
ピルキュルと
遠く鳥の飛び交うのを聞く
重ねて飼い犬らの間歇的な
へだてて呼び合う吠え声が
窓は笛の穴ともなって
聞かせるつよい南風
〈なにものでもない耳の人間〉
例 ....
夏のお空は賑やか
雲の鯨が群なして
北さしゆっくり泳いでく
夕べ摘まれた胡瓜はポリエチレンの中
萎れた黄色の花を畳んで重い体をしんなりと
むらさきの影踊る無人販売所
朝の優しい静け ....
俺よ、この世の汚濁よ
ビルを探せ
階段を見つけろ
屋上にたどり着け
そこから身を投げろ
コンクリートに散れ
俺よ、この宇宙から消滅しろ
朝、6時15分に目を覚まし
冷たい水で、じゃぶじゃぶ顔を洗う
ついでに、寝癖のついた髪を濡らし
ドライヤーで乾かして、整える
コットンのシャツを身につけて
きのう買った、新しいスカートを ....
誰かに手紙を差し出したい
秘めた恋心を
白い便箋の罫線の間にそっと忍ばせて
誰かに手紙を差し出したい
今朝咲いた朝顔の欠伸が
黒いインクの文字から聴こえてくるように
誰かに手紙を差 ....
兎よ 緑野を駆けよ
波頭を思わせる草の中を矢のように
丘の向うにある青空の方へ
我等の屍は地層の奥に
罪の証は幾星霜を経ても消えず
ああ せめて夢見る事を許されるなら
兎よ・・・
....
こころの中に海がある
いくつかの海流も流れている
灯台へ続く道は
岬を縫うように走っている
海峡を渡る風は
わずかに強く吹き雲を散らす
僕は背中の軽い荷物を感じながら
ゆ ....
ありの行列は
時間の砂をせっせと運んでゆくような
そんな気がして、わたし
のどが渇きました
真っ白、とは言い難いミルクを
すっと飲み干せば
胸の時計は
狂いはじめます、やわらかに ....
よごれた指を
水につけて
すこし
きれいになり
水は
わずかに
濁る
わたしを
これ以上
みじめに
させないで
お盆
虫取り
夏祭り
生に近いし
死に近い
いつから
八月になったのか
私には記憶がない
そう言えば
今日
「意味」を全うした蝉が
地べたに落ちていた
とたんに
歪んだ蜃 ....
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