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痛みのない世界の
封を切れば風は青白くふいて
ビルの合間を見つけては
切先をくねらせる
光がこぼれるまで
誰も空を見つめないから
ちいさな浄罪として
足元に種をまいても
温度はなく
 ....
それぞれに運命を入れた容器たちの
つかの間に折々
わずかな光を胎動し
森のかたちにふくまれていく

欲しいからだを差し伸べる
天使たち
祈りをおびて瑠璃色の
小箱にひそめ ....
こよみが裏切られ
木々は途切れ
老いた田園に
祈りを帯びた青い雲
荒れ果てた放棄地に
にがい風はとどまる
ちいさな歌を弔うため
花の名前を指折り
陽射しを受けとめる
古い石積み
繰 ....
凪いでる 凪いでる
ここはがらんどうの海
無風世界


石をちりばめる
空にちりばめる
ゆびさきがぬるい
目にしみる涙
んっ んっ
母をよぶみどりの子


宛て先な ....
春すぎて、白妙
きみのひとみを覗く
彩られた虹
星のかたちをそのままに


人知れぬ森の底で
空を待つ火種の連連
泉のなかに息をこらし
選ばれる日までを指おる


夜霧を ....
北の国で少女は
歌を集めて翼を織った
旅してゆきたかった
生ぬるいかげろうの季節に
歌はそこら一面で摘まれ
籠のなかでちいさく鳴いた
迷子になったひよこたち
草原を季節風が ....
牽かれていく二すじの偏光
孤独な少年の手なぐさみ
自転車にまだ補助輪があったころ
ぼくは愛されていたかしら
いなかったかしら
初夏の予感が初めて来たとき

駅前通りに二匹の妖精 ....
新しい暦が生成している
遠い国で洗い上がったシャツの匂い
ためらいと高揚
背中に触れる唇の温度
インディゴに溶け込むマゼンタ


梢たちを過ぎて
吹き下ろす視点から
 ....
君がリリアン編んで
見上げた空は花と同じ色で
ぜんぶ、ぜんぶ春だった

ゆびさきで、光源をたどる
なくしたもののかたちは
思い出せないけれど
なくしたものから芽ぶいたのは
街でいちばん ....
新しく作られた神様を
ひび割れた背中にぶら下げて
くすんだ野道に そぞろの巡礼
通りすがりの南風から
千年前のにおいがする


中空いっぱいにひろげた彩度の
かけらだけでも ....
遠くのほうで 貝殻色の天蓋に
やがてちいさな穴があき
こぼれる石笛の一小節を縫い付けた
あかるい羽衣の 恵みを象徴してもたらされるもの


鉱物たちがふくんでいる 大きな知恵の営み ....
飛べない魚が
雲の中から這い出してくる
ふるい戦闘機のなきがら
双胴に牡蠣殻のいちめん

酷使されたラジオから
喉をさいて響く歌
あたたかいミルクを呼んで
冷たい夜に泣く ....
夜にざわめく
海原にちいさな風
ひかりを求めて
さかなたちが踊る

爪月のほとりに
熱がつづく
眠りを急いて
夢を強いて

はこばれるすべて
行き来する波
呼吸のやりとり
は ....
墨染めの空を映して
ガラス、ガラスの群れ
強い光の訪れを
救済に灼かれる日を
待つ

立体交差の雑踏
四方向に
連れ立つことなく
分かたれることもなく
人々は歩い ....
空のひとすじ
とぎれとぎれに
たましいたちの渡り
祝祭の予感が
はりつめて街に灯る

肌をかさねる
こいびとは柑橘の香り
湿り気を母音に換え
いくつも降らせ
打ち上げて

土く ....
感覚を駆って
熱と湿度が飛び交って
ふたつの身体を高めていく

星間飛行の鈍色の船体が
故郷の水を恋しがって
恒星の配列をなぞるように
五感が跳ねて
目を閉じているのに  ....
綿毛の海で泳ぐ
後ろ姿を探す
秋の始まる午後に
あたたかさとつめたさの両側から
等しく守られていることを知った


星の人から届けられる
言葉によらない通信を
言葉に変 ....
やさしい光の数々は レントの風に乗って
流れていきます
どこへ向かうのか 知ることはできないけれど
きっと幸福があると推測するので
ぼくはこの身を任せて 光と一緒に
流れていこうと ....
かり かりらん からん
鉦の響きが行列を先導する

満ちていく途中の
なまめいて誇らしげな月の下


馬の背には選ばれた幼子
金襴にくるまれて
視線を集める戸惑いを隠せず ....
ヒガンバナが今年も灯る
曖昧を許さない輪郭で
そのくせひどい曖昧を宿す

秋に咲く大輪は葉を持たない
何もなかったところから花火みたいに
茎だけで伸びて

夢見がちなひろがりではじけて、  ....
赤い感情と青い記憶とを
つむいで
むらさきを織る
夏の恋

ひざまでの深さのつもりで
いつのまにか飲みこまれている
息継ぎに顔をあげるたび
水面にゆれる ほほえみに似た光を
肺にかさ ....
午後の風がきみの髪をなぜる
ああ、とてもいいにおい
ぼくは小さな蜂になって
きみの、ひまわりの笑顔にとびこみたい

甘ったるく歌ったり
背伸びして空をかじったり
きみの気まぐれな野性に
 ....
僕の孤独な情念の炎が
語るべきことばの切れ端たちを
のこらず灼いてしまうので
僕の口からこぼれだすのは
いつも色違いの灰ばかり。
灰ばかりです。

両手の手のひらいっぱいに
灰を差し出 ....
観覧車が
左回りに
新しい青を曳く
真昼
女のかたちをした雲の
乳房の裏側あたりに
太陽がかくれて
鼓動している
満ち潮が新しい雲を率いてやってくる
ねむの木の下にしゃがんでいたら
スイカと蚊取り線香の色がただよってきた

知らんぷりしているようで、世界はやさしい
ふとんを叩く音 野菜を煮る音
自販機 ....
祝祭をかたどる歌が
背面にひろがる
真っ黒の水面に
跳ねる

雨を待つ暗がりの眼窩から
月がふたつ
とろり、
こぼれおちて
まぐわう男女の
たかまりゆく濃度に似た
風がとても ....
頭のどこか奥のほうで
水が、
ごう、
と音をたてた

やさしく響く音楽のほとんどが
ほんとうは悲鳴に由来していることを
習いに学校へ行く
聴いているふりをしたり
聴いていないふりをし ....
れ、れ、れれれみふぁ、れみふぁ、
狂った夜のオルゴールが叫んでる
あちらこちらで、もろもろ台無しにした挙句
狭い部屋の中で煮られてるおれの内臓の
ひと房ひと房までに嘘がしみこんでる

おれ ....
麦の穂がりいりい、とゆれる
すみれ色をした空想の
行き着くあたりで
番犬みたいにとびまわってる
ぼくは忠実なひばりでありたい

かなしみをかなしむとき
いつくしみをいつくしむとき
太陽 ....
レイニーレイニー、
甘いくさびとしての水滴が
ぼくの頸椎の4番目くらいを目指して
さかんに落下してくるのだ

メイデーメイデー、
苦いくびきとしての水たまりは
雨粒をよけるたび大きくなっ ....
nonyaさんの橘あまねさんおすすめリスト(41)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
真昼の夢に- 橘あまね自由詩1414-5-3
瑠璃唐草に- 橘あまね自由詩1314-4-2
即興、はじまりの場所で- 橘あまね自由詩714-1-28
即興、子どもの情景- 橘あまね自由詩1313-7-7
春すぎて、- 橘あまね自由詩313-7-5
五月、北の国の少女は- 橘あまね自由詩2312-4-29
エイプリル- 橘あまね自由詩2312-4-21
春のリート- 橘あまね自由詩2012-4-12
春の記憶- 橘あまね自由詩2612-2-26
spring_steps- 橘あまね自由詩1312-2-16
即興(春を待つからだ)- 橘あまね自由詩2012-2-9
即興(夜空への祈り)- 橘あまね自由詩1312-1-5
即興(海、ただしいまどろみ)- 橘あまね自由詩1811-12-28
ベクトルと結晶体- 橘あまね自由詩1411-12-25
即興(多摩、12月)- 橘あまね自由詩1411-12-20
星にかける虹- 橘あまね自由詩1311-11-30
エリタージュ- 橘あまね自由詩29*11-11-5
きみの名は- 橘あまね自由詩2111-10-18
アニュアル- 橘あまね自由詩1611-10-13
秋の炎は- 橘あまね携帯写真+ ...1911-10-6
なつ、むらさき- 橘あまね自由詩14*11-9-18
片恋と残暑- 橘あまね自由詩24+*11-9-3
- 橘あまね自由詩11*11-8-7
青を思う即興- 橘あまね自由詩911-7-22
七月、土曜日の真昼- 橘あまね自由詩1211-7-7
にじみ出す夜- 橘あまね自由詩1511-6-27
月曜日、晴れときどきくもり- 橘あまね自由詩1011-6-20
ストレンジナイト- 橘あまね自由詩611-6-4
即興- 橘あまね自由詩1411-6-2
レイニーレイニー- 橘あまね自由詩1011-6-1

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