私の胸の奥の柔らかいところに
靄がかかって痛みが走る
肺を潰されていくような錯覚に陥り
呼吸が出来なくなり
次第に息は浅くなる
同時に脳内でガンガンと
後悔とか怒りとか悲しみとか
....
古びた駄菓子屋の店先で
季節外れのラムネが数本 冷やされていたので
一本買って その場で飲んだ
こぽ ぷしゅわ
と 栓を落とすと
かろん
と 転がった
そういえばびい ....
眠れない 夜
目を閉じれば
変えようの無い過去の記憶が
襲い掛かってくるから恐ろしい
心臓の 奥の そのまた裏側で
どくどくと どくどくと
動悸がして 肺が縮む
....
いつものようにベッドに入り、翌朝目が覚めたら私の背中には羽根が生えていた。
翼というには小さ過ぎて、服を着てしまえばほとんど目立たない。
こんなものでは勿論飛べなくて、動かそうとしてみると ....
硝子のフォークで
ケーキを切り分け
翡翠の皿に
苺が落ちる
水晶のグラスには
冷たい紅茶
瑪瑙のマドラーで
ミルクを混ぜる
レースカーテンのワンピースで ....
今朝干した洗濯物が突風に煽られて
木漏れ日みたいに薄暗い部屋を照らした。
胡座をかいた膝の上で
喉を鳴らして乳を飲む子どもの
丸い額を撫でて
彼女の伏せた睫毛の先が
枝分かれして白く光 ....
筆まめな方だったと思う。
小学生の頃は毎年手書きの年賀状を、住所を知ってるクラスメイトに送った。
今思えば、下手な字と下手な絵。似たり寄ったりな文面に、100均で買った和柄のフレークシール。
....
昔々ある一人の若者が国中を旅して回っていたところ、金のすももを鈴なりにつけた樹を見つけた。
若者はその美しさに夢中になり、たったひとつだけその金のすももをもいでしまった。
それを見つけたの ....
涼しくなってきて
タオルケットは要らないね、と
主人に言われ
久しぶりに晴れた
大量の洗濯物が
強風に煽られて
飛んでいきそうなくらい、
煽られて、煽られて
物干し竿がしな ....
わたしは(^^)である。
好きで笑っている訳ではない。こういう顔なんだ。なにせ汎用性が高い。
円滑なコミュニケーションを取るために丁度良い顔なんだ。
時たま(^-^)や(^_^)のように口元 ....
わたしには、人の縁が見える。
{引用=えん【縁】〔名〕
運命として定まっているめぐりあわせ。えにし。
物事とのつながり。関係。
肉親・師弟などのつながり。
仏教で、原因。特に、直接的な ....
薄く、もやのかかる、まだ暗い午前5時。
隣に眠る彼を起こさぬよう、そっと身体を起こして
冷たい空気に、震える
毛布の上に広げた袢纏を引き寄せて
熱い身体から熱が逃げないように
忙しなく羽織り ....
昔々ある山の麓に、綺麗な水を湛えた大きな湖がありました。
水際には雪のように真っ白な小さな花が咲き乱れ、いつも、きらきらと揺れながら、囁くように唄っていました。
いまは昼。 のちに夜。
....
書きたい言葉は沢山あるのに、綺麗に並んでくれないから、好き勝手に動き回って、結局何も届かずに、糸の切れた風船たちは、ゆらりゆらりと、游いでいく。
夜、貴方が明るい空を見上げて
「月が綺麗ですね」なんて言うから
「わたし、死んでもいいわ」と
有名な文句で返すの。
そしたら、貴方ったら
「お前がいない生活は有り得ない」
なんて、本気 ....
心臓が軋む音がする
そろそろ「換え時」か
僕は店の扉を叩いた
狭く埃っぽい店内
目の前には小さなショーケース
レジスター 天秤 キャンディーポット
店主は古ぼけたテディベア
....
二十代も半ばになって、初めて詩というものを書いてから十年は優に経ってしまった。
あの頃のような瑞々しさを、私はきっとどこかに置いていってしまった。
駄菓子屋のラムネのガラス玉を、宝石箱に仕舞い ....
貴方はもう眠っているんだろう。
そのかんばせに疲労と充足感をたたえて
閉じた瞼に縁取られるのは
かさついた睫毛か湿った青紫の隈か その両方か。
声を聞きたい。と
一人、ぽつりと呟いて
....
あたしの秘密を教えてあげる
条件が揃うとね
あたしの涙は宝石になるの
ソファの上
スカートの上
畳の上
ベッドのシーツの上
転がった水滴は固まって まるで硝子玉
多分塩の結 ....
わたしは優しい人になりたい
パパもママも先生も
「もっと人に優しくしなさい」って
わたしのことを怒るから
優しくすることを心がけることにした
ある日
クラスの友達が泣いていた
....
死んでないよね
生きてるよね
返さなくていいから
生きていることだけ
知っていけたらいいのに
幸せだよね
笑っているよね
傍に居られなくてもいいから
あなた ....
目が覚めると、私は小さな部屋にいた
殺風景な部屋だった。
真っ白な壁。部屋の四隅を示すように、上部の硝子が嵌め込まれた窓から差し込む光が唯一の光源だった。
家具などはなく、代わりに、部屋の中 ....
死んだように生きている
生きているように死んでいる
彼女はいつまでも美しいまま
彼は彼女に愛を囁く
何も聴こえない耳に
低く優しく愛を歌う
赤い唇にキスを落として
....
わたしは貴方と、恋に落ちることは出来ませんでした。
連続殺人とか突然の大地震とか、いつ死んでも可笑しくないのだと改めて感じるようになったので、拙いながら、お手紙を書こうと思いました。
貴方 ....
寂しさが募る深夜に食べたい隣で響く君の心臓
眠れないのです
瞼は重く
欠伸は絶え間なく
体は熱く
それなのに
「しにたい」「きえたい」と
心の中にいるわたしが
頭の中にいるわたしが
ずぶずぶと ど ....
諦めたいんです。
もう、ずっと、ずっと、諦めたいんです。
幼い頃の初恋が、こんなに燻るなんて
思いもしなかった。
歳も離れてて、わたしは制服を着てました。
周りの男子は持ってないレデ ....
しにがみにあいました
しにがみは おおきな かまをふりあげて
わたしのくびを はねようとしました
おもわず めをぎゅっとつぶると
いつまでたっても いたみがないので
おそるおそるめを ....
不眠症の彼に、ホットミルクを淹れるのがわたしの仕事だった。
ある夜をきっかけに、彼は眠ることを忘れたという。
どんなに体が疲れていても、睡魔は彼には訪れず、ねばつくような夜 ....
風邪をひきましたの。
大したことありませんのよ、
咳が出て、頭痛がして、気持ち悪くて、吐き気がして、体が重くて、全身が熱いだけですの。
お食事ですか?
摂りましたわ、プリンを一個。
....
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