請い文
愛心
わたしは貴方と、恋に落ちることは出来ませんでした。
連続殺人とか突然の大地震とか、いつ死んでも可笑しくないのだと改めて感じるようになったので、拙いながら、お手紙を書こうと思いました。
貴方はわたしをとても愛してくれました。
まるで親鳥が卵を暖めるように、その大きな両腕に柔らかな真綿を抱いて、そのなかに小さなわたしを隠すように抱いていました。
わたしは残酷な女でした。
貴方の好意を利用し、甘えては、心の空洞を埋めていました。
貴方の為にわたしが出来たことなど、欠片ほどもありませんでした。
自己満足の為に付き合わせ、独りよがりに愉しんだわたしを見て、貴方は幸せそうでした。
荒んだわたしの我が儘を受け入れ、暴言を受け止め、悲しそうに、それでも優しく微笑みながらわたしを抱き締めていましたね。
それでも、恋に落ちることが出来なかったのは、何故だったのでしょう。
血も繋がらない他人から、あんなに愛されるなんて、本当に本当に幸せでした。
家族と言う名前に形を変えて、傍にいられれば、わたしは永遠に幸せだったでしょう。
ですが、因果応報と言うのでしょうか。
それは、叶いませんでした。
あんなにまでわたしを愛してくださったのに。
わたしが生きる意味をくださったのに。
本当に本当に申し訳ありません。
貴方を失うのは恐ろしい。悲しい。嫌だ。
貴方の中のわたしが失われるのも我慢ならない。
そんなわたしの最後の我が儘を、受け入れて頂きたくこのような結果に至りました。
これなら、わたしを忘れることはないと、貴方の弱味につけこみます。
本当に本当に申し訳ありません。
わたしは最低な女です。何も遺せず、貴方への思いも、このような支離滅裂な拙い形でしか伝えられなかったのですから。
それでも貴方は、きっとここまで読んでくださるのでしょう。
最後に、
本当に本当にありがとうございました。
どうかどうか幸せになってください。
いつまでもいつまでも、貴方の幸福を願います。
もし、許されるのならば、貴方の心にたまにお邪魔して宜しいですか。
ほんの片隅で構いません。
ほんの数分で構いません。
それだけでわたしは生きていける。
自由詩
請い文
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愛心
2015-09-20 23:31:56
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