「山林へ」
いつものように山仕事の準備をし山に入る
ふしだらに刈られた草が山道に寝そべり
そこをあわてて蟷螂がのそのそと逃げてゆく
鎌があるからすばしこくない蟷螂は
俺たちと同じだ
....
山を駆け下り開けた浅瀬に出ると
ゆるゆると草を揺らしながら往く
水の膨らみは千変万化を繰り返し
陽射しに微笑みを返すのだ
小学生の女の子ばかり六人
紫外線から完全に身を守った女の先生と一 ....
一瞬で
りんごもにんじんも正論も砕かれ攪拌されてどろどろのジュースになるみたいな
彼女だけの鋭いミキサーのすいっちは日常のいたるところで押されるのだった
あるいは一瞬で
女子なのにおおかみ ....
お蕎麦を食べながら
昔の話をしよう
学生時代
君のタイプを盗み聞きして
私に当てはまることがないと
ひどくがっかりしたんだよ
もっと可愛くなれるように
お姉ちゃんに化粧してもらっ ....
四番目の息が聞こえる。
父の息。
母の息。
私の息。
そして、聞こえる。
他には居るはずがない誰かの息が。
まだ幼かった私は、父母に挟まれ、狭い二階の一室で、毎夜訪れる暗闇と遭遇してい ....
枕に染みる涙は虹色
白いドレスがお似合いさ
そこに咲く赤い花
世界で一番の花
たまに食べたくなる首
一口試してみたいのさ
すれ違う時の
鼻にツンとくる香りは気に入 ....
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ごく、
近視眼的思考で
詩のようなものを書いたなら
....
再放送のドラマは耳に煩くて
付けたはいいが直ぐに消してしまう
外には糸のような雨が降っていて
その柔らかさに若葉が震えている
下腹部に鈍い痛みが走り
私の身体にはもう少し ....
とうめい が
好きですよ
漆黒も
好きですよ
漆黒が とうめいな日が 好きなのです
玄武の闇漆黒の岩石の中でケイセキは ちかっと 輝いて
その輝きは あまりに ちいさいので ....
明日も
私をきらいな人が
たくさんいてほしいと願う夜
あなたの詩には
共感なんてできないし
空行で破裂する
思わせぶりな言葉なんて
雑すぎて
丁寧すぎて
何も生まれないし何も死なない ....
にぶい金色の肌が
冬の陽だまりを
そっとはねかえしている
アルミニウムの
浅い洗面器のうしろに
整列している
こどもたちの
頬はあかく
順番になれば
みないちように
そこへ温か ....
部屋の隅で黄ばんだ遮光カーテンの襞に、ひっそりと産むものがあった。
真夜中、昏い教科書を閉じて、少年はそれをじっと見つめていた。一匹のゴ
キブリが、濡れたオブラートのような粘液を排泄しながら、卵 ....
ヨシノさんは江戸末期の
北豊島郡染井村で生まれた
生まれながらにして容姿端麗
娘盛りには五枚の花弁を振り撒いて
道行く人を虜にした
染井村のヨシノさんを
なんとしても手に入れた ....
私は小学生高学年の頃
ものもらいを患った
瞼の下がぷっくらと腫れ膿んできたので
近くの総合病院に行くと
診察台に抑えつけられ
はんだごてのようなもので
じゅうと焼かれそうになったので
必 ....
帰宅すると妻がキレていた
子供が泣いている 上手にお座りしながら
帰りが遅いとキレていた
仕方のない理由 会議とラインしたが既読スルーだった
育児中のストレスを二人で割っているつもりだけれ ....
東京の地下街から
胸を焦がすような茜空は売ってませんか
そんなことを言ったら 嗤われるだろうが
本当はみんな 自分の町に住む
夕焼け色の切符を手に入れるために
上京しては 行 ....
今日もひっきりなしに飛行機が通る
あの人だった人が外を眺めている
「沢山通るね」
あの人だった人は無言だ
体の何処からも表情が消えている
きっと見えないものを見ているのだろう
部屋を見渡せ ....
はなふぶきのように
紙吹雪のように
空間を埋めて
ゆっくり舞いながら
アスファルトの路面に
散り落ちては消える
そう
こんなやわらかな雪の日だった
長男の
次男の卒業 ....
サラリーマンが命を担保に金を借り
建てた家々の集落
書割のような中流階級
文化を支えたピアノ
音の断片が集落の中を
誇らしげに 恥ずかしげに
歩いていたのは何時のころだったか
口 ....
本日、侍ジャパンの強化試合。久しぶりの野球観戦なので、一週間くらい前から楽しみにしていました。
欧州代表相手に4-3で逆転勝ちでした。2点を追う8回に又吉が3者凡退の快投で流れを変えると、その裏 ....
海は優しい
もちろん
それだけではないことを
たくさんの人が知っている
海は荒れ狂う
そんな日は
早々に寝てしまうだけ
海鳴りを子守唄にして
たどりついた
ふるさとの
今朝の海 ....
細々と清らかな
自我を削ぎ落したような声の集合
僕らはみんな生きている
生きているから歌うんだ・・
なにかもっと
違う歌を歌えばいいのに
コミュニティセンターの廊下に
西日はさし ....
僕さ
左心房がなくて
血が流れなくて
目からダダ漏れなんだ
涙が出るほど
不完全な君は素敵さ
笑う姿より
泣いてる姿が好きだ
赤い涙を絵に描いたのは
流れる涙を飲み干 ....
ここは本当に悲しい海だ
と皆は言います
また
ここは本当に素敵な海だ
と言う人もいます
地平線はずうっと向こうにあって
太陽を避けるものは何もなくて
朝焼け、夕焼けの景色は天 ....
「非常ベルが鳴らしてみたかった」と、
その男の子は 泣きながら
お巡りさんに謝っていた
毎朝電車は ラッシュを呑み込むと 靴の群れを吐き出す
腕時計の長針先より 先にスマホ
....
またたくまのすれちがいざま
運転席に乗るドライバーよりも
車の助手席に乗せられた
大きなクマのぬいぐるみは
何も話したくない
少し怒っているようで
私は立ち止まって振り返り
走り去る ....
今日は少し寒くて
鼻の奥がツーンとした
マフラー大好き
鼻頭まで埋もれるのが好き
夜中に人生初の金縛りにあった
ひどい耳鳴りの後
身体の右半分に
子供みたいなの四つん這いで
....
インフルエンザが流行り出すと
白いマスクが 飛ぶように売れる
ウイルスに感染しないため、
みんながみんなでしたがるマスク
唇から 漏れるイントネーション
頭も つられて 上がったり ....
せわしない日々のなか、外にでたらそれが昼であっても真夜中であっても早朝であろうとも空をみあげて月をさがす。たまに日光をあびてしまい、くしゃみがでる。かならず。なんでだろうね。太陽光線とくしゃみの関 ....
飛ぶときに必要なものがあるとすれば決心ではなくて、飛んでいる「当然」なのだと思う。決心なんて、どれほどもろくて役に立たない(でもそれなりに美しい)だろう。
娘が壁に手を置いて、しゃんと背をのばし立つ ....
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