狭い入口だった
石畳の階段
座っていると
まるで通せんぼしているようだった

黒い猫と遊んだ
長い髭をたくさん持っているようなので
ひとつ頂戴と言った
猫はくれなかった

「ソゥリ ....
 犬といる午後
 肉がざわめく
 灰いろのひろがり

 この部屋で
 許しがあったことはなく
 交わす偽り
 弾ける肉声
 どこからが贖いなのか
 どちらが生なのか
 知る迷いはな ....
 僕の瞳にはオレンジだけど
 君の目には何色なのか

 そよぐオレンジの群れに
 君はお尻を向けて移動中
 ちょうど僕の胸の高さに居て
 翅を広げる
 胸部と腹部の背中がはっきり
 見 ....
私の名は飽食
私の腹は今日もはち切れんばかりです
昨日は沈んだ色のアジフライを食べ
明るいチョコのラムの香りを味わいました
明日ザクロの黒い輪郭をねぶり
たぶんそれから薄いコーヒーを飲むので ....
「星ころし」

悲しいことがあると
星を見ていた
お姉ちゃんは夜に泣く
一番小さな星を探していって
順番にころしていた
悲しいことが多すぎて
埋葬された星の数は
あと一つで百になる
 ....
苔の声の波
静かでいて濃やかな青
甘い気持ち
森の奥まで
敷きつめ

それから虫たちの唇を寄せる
月が光るのには秘密が

人間時間を過ぎ
円やかなデトリタスになって
落ちるまま
 ....
つやつやの犬はコンビニの手前の曲がり角にいる。もちろん曲がり角に建っている家で飼われている、という意味だ。朝はカーテンの隙間から外を覗っていたりする。50代くらいの男性に連れられて散歩する姿も ....  
 線路沿いの路肩に這う茂みは朝顔らしき
 蔓と葉に花を二輪つけていた
 花は控えめでいて澄んだ紫陽花色
 歩み寄る私の指先に
 四枚羽の片側二枚つままれて
 運ばれてきたトンボ

 ....
やわらかな毛布にくるまり
天井に響くヘリコプターの爆音
次第に遠退いて行くのを聴いていた

ずる休みした日に、

学校にたまぁに
どうしようもなく行きたくなくなって 
 
畳の小部屋 ....
昭和3年生まれの伯母さんが
72歳の長男の持病を心配している
親はいくつになっても親なんだろう
伯母さんは
一人暮らしの知恵を身につけている
今は寒いのでお風呂は昼間入る
入るときには玄関 ....
 ラッシュアワーを過ぎて車輌には
 まばらな乗客
 停車したその駅では誰も席を立たない

 低い土手が迫る人影ないホーム
 竹の混ざった雑木が金網で仕切られていて
 絶え間無し 葉を落とし ....
そして今日もまた
寒空が拡がる
いや
大空に寒さが拡がると
そうゆうほうが正確かもしれない
灰色が
黒くもなく
白くもなく
濃紺に近いコバルトでもなく
暁の明るさを伴わず
哀しみを ....
おやすみ
の水面に素足を浸して
拡がる波紋は
冬の岸辺に
触れるのでしょうか
淋しい女のかたちで
立ち枯れる両脚は
白い冬に
駆けだした素足を追う
夜の終わりには
うなだれた星座が ....
 京福電鉄嵐山本線が近くを走る
 右京区の街の中
 名前も知らない小道を二人で歩く昼下がり

 小道には金網の張ってある敷地に沿って
 大型プランターが路端に並び
 主枝を伸ばし茂る葉と
 ....
 暖簾のむこうに彼がいて
 いつも私を待っててくれた
 あの頃
 
 石鹸の匂いするあなた
 寄り添って
 絡める腕のまだ熱る
 そうやって
 歩いた夜道の風を覚えてる

 洗い髪 ....
命の外側で雪は軽やかに息をしながら降っている
どこからともなく、螺子を巻かれたわけでもなく、
静かに乾き、ひとつの可能性のために降り積んでいくかのように

しらんだ冬の
おっとりとした、
 ....
凍り付く 空にかざした薄ガラス

ぽつ、ぽつり 浮かんで
じわり、じわ 滲む
淡色の灯


昨夏着られなかったままの
新品の浴衣の布地

それとも十年ぶりに焼いた
パウンドケーキ ....
 或る日 小高い丘の草の間で
 空まで貫く
 甲高い叫び声がしたのです

   「七十番と八十六番と九十八番が
    逃げたっ!」
 牧場の牛舎から飛んで出た
 ファームのマスター ....
僕たちの距離が
この夜にさめざめと横たわる
月の光に傷つけられながら

この夜はあまりにも澄みわたるので
とめどない放射冷却――僕たちの
距離もまた冷えびえとして

けれど見つめている ....
ふだんの平凡な暮らしの中に
しあわせはある
しあわせは
何か特別なことではなく
遠くにあるものではなく
ふだんの平凡な暮らしの中にある
朝の木漏れ日
真っ青な青空
おはようのあいさつ
 ....
心が浮つく
紙に貼られたセロハンテープの
右上の部分だけが少しめくれている感じ
だのにひっぺがすことができない
してはいけないから
左手の薬指の腹で撫でるようにすると
奇妙に心地良かったり ....
山に登れば
僕は鳥になる
下界を360度見渡す鳥になる

山に登れば
僕は風になる
峰々を流れる爽やかな風になる

山に登れば
僕は子どもになる
父と歩いたころの子どもになる

 ....
ひとり山道を歩いていると大蛞蝓に遭った
私は呼吸も荒い中、足を止め
元気ですか――と、声掛けした
彼は特に気にするでもなく、じっとしていて
じっとしていることが最大の防御ですと言わんばかりに
 ....
噛み砕かれた
朝の死がいが転がっている
果実の並ぶ
健全な食卓からは
冬を裂く音が聞こえてくる
雪解け
のような発声で
猫が毛玉を吐いている
猫から吐き出された毛玉は
新たな猫になり ....
なんだか無性に
文字が書きたくなってしまった
こんな夜更けだけれど
こんなに寒いのだけれど
もう結構晩いじかんなのだけれど
それでもしょうがないじゃないか
だって文字が書きたくなってしまっ ....
僕が「右だよ」というと
ワイフが「左だよ」という
僕が「まっすぐだよ」というと
ワイフが「後ろだよ」という
それで車にナビをつけた
それでも「この道はおかしい?」と
時々いう
気の合わな ....
水を得た夜空です
夜には澄んだ真水がある
手をのばして
触れようとすると
逃げてしまうんだね
小さな星に隠れた
君の息づかいを聴いていると
とても静かな胸の内では
真水が溢れてくる
 ....
九州では初めての初日の出登山だった
日本百名山の韓国岳へ友人と出かけた
2時間弱で何回も登っている山なので
軽く考えたのが
まちがいだった
登山口から頂上近くまで
大雪が残っていた
とこ ....
足を組み
背筋を伸ばし
息を意識すると
いるべきところにいるような気持ちになる
座っていると妄想が次々と浮かんでくる
無心とは
程遠い
線香の灰の落ちる音まで
聴こえてきそうな気がする ....
ほんとうに、
たいせつなものは、
かたちを、
とらない、
いつも、
うしなって、から、
はじめて、
たとえば、
じぶんの健康のかけがえのなさ、
のように、
まるで病室の白いカーテン ....
平瀬たかのりさんのおすすめリスト(850)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
石畳- 妻咲邦香自由詩223-1-30
犬の前で- soft_machine自由詩623-1-29
君の宇宙(そら)- リリー自由詩13*23-1-28
飽食- オイタル自由詩6*23-1-28
ナハティガル- ちぇりこ ...自由詩1223-1-26
秘密- soft_machine自由詩323-1-26
つやつやの犬のこと- はるな散文(批評 ...323-1-26
街とんぼ- リリー自由詩4*23-1-26
えいえん- ひだかた ...自由詩423-1-25
ひとり暮らしの伯母さん- ホカチャ ...自由詩2*23-1-25
曇天- リリー自由詩8*23-1-24
こないだの空は- 坂本瞳子自由詩1*23-1-23
Winter_Days- ちぇりこ ...自由詩1123-1-23
散歩道- リリー自由詩5*23-1-22
弥生湯- リリー自由詩4*23-1-21
美しく雪が降る- 山人自由詩10*23-1-21
つま先の先- 三月雨自由詩4*23-1-19
森の中の女の子- リリー自由詩2*23-1-19
夜の距離- 塔野夏子自由詩2*23-1-19
しあわせ- ホカチャ ...自由詩1*23-1-16
浮ついているのか- 坂本瞳子自由詩1*23-1-15
山に登れば- ホカチャ ...自由詩2*23-1-15
蛞蝓と私- 山人自由詩7*23-1-14
朝の行方- ちぇりこ ...自由詩623-1-13
文字を書きたい- 坂本瞳子自由詩1*23-1-12
気の合わない夫婦- ホカチャ ...自由詩1*23-1-7
うお座少年- ちぇりこ ...自由詩623-1-6
初日の出登山- ホカチャ ...自由詩2*23-1-5
坐禅- ホカチャ ...自由詩4*23-1-1
病室の星より- 本田憲嵩自由詩7*22-12-31

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