雨の中 お弁当を食べた
山積みの木の枝を燃やす
離れられない仕事だったから
雨にぬれていくご飯 おかず
服に染みた煙の臭いは
ぬれるとちょっとおえってなる
思いがけず惨めさがこ ....
ある晴れた日に一軒家の庭で
赤い五枚の花片をしっかり開く大きな花を
母と見たのは昔の話
花の名前が思い出せずに 覚えた小さな胸さわぎ
茎が真っ直ぐに伸びた葵科の花
「この花は ....
5月28日
黒いペンで書かれた
カレンダーのさりげない予定
几帳面な字
その翌日
あなたは
日めくりの裏のような
真っ白な予定の永遠に続く
向こう岸へと
踏み出してしまった
....
豆腐は木綿の方が好きだ。同時に、現政権は嫌いだ。
微塵切りにした葱をのせ、ポン酢を垂らす。
降ってくるのは雨。
湿った土。
子どもの頃も子どもなりに世間と折り合いをつけてきたが、
生 ....
仮設足場組立工事が始まると
いつの間にか ダークグレーな防音シートは
しのつく雨に暗く、まるで
封建制度の時代にたてられた牢獄の様に
そびえていた
からだのモヨウが ....
シャッターを落とす
あのざっくりとした硬さ
断ち切り目に
憧れた子ども
これっきり然とした震撼も
つかの間フイルムを失うと
空間に倣う
一度きりのはずの人生で
く ....
新潟県三条市にある
自動車博物館を訪ねたのは
展示車両に乗り込むことができるから
昭和の自動車に囲まれた僕の心は
小学生に戻っていた
これは横田先生の日産バイオレットだ
二瓶先生のブル ....
おふとんとわたくしの
さかいめがおぼろげ
すなのこまやかさで
ぬりこめられて
まぶたをきちんと
とじたまま
きょうのしごとについて
まとはずれなだんどりをくりかえす
お ....
路面に まぼろ 降る雨の、
激しく執拗に叩き付け
灰の雲、次々巨大に
意志持ち流れ動いて
輪を広げる窪みの水溜まり
いくつも、いくつにも
忙しく遠去かり近づき
急ぎ歩く人、また人
....
もうどこへも逃げてゆけない言葉たちが
{ルビ凝=こご}る五月闇
夏の色が濃くなるごとに重くなってゆく空
その空の重みに耐えかねて
虚ろになる意識
否 虚ろを装う意識
綴るご ....
熱帯植物のあでやかな緑生い茂る中に
消えていった友人の後ろ姿
呼吸の度 緑の香が私の心染めてゆく
樹々の名前など知らない
私の身体中が
心中が
熱帯樹のしめり ....
子が産まれる、とわかって、
しっかり喜んでみたのだが、
まだ、わからないのよ
そうか、まだわからないのだ
無事に産まれてこない胎児たちもいる
産院の、陽がよく入る待合室
お腹の大きな妊 ....
花の時がすんで
雨の時が来
山の青く美しい時がすんで
薄墨にけむる時が来
それでも あなたがそばにいてくれると
私の心は
ブラインドカーテンから差し込む朝の光に
床を ....
わたし しばらく 営業なんかしてて
むかしと、過去と
連絡できなくなっちゃって
見失っていたから
もっと必死になってた
何が要るのかも 分らないまま
だから 今も あの頃と ちっとも変 ....
僕の隣に立つ女は長身でショートカット
切れ長の吊り目が奥二重
パーマのかかった短いまつ毛
手に布製のブックカバーを持っている
ああ、どうして彼女は
こんな下地の色に淡雪の様な ....
羽衣伝説
客層が変わりゆく店釣り船を
整備していた夏がまた来る
レモネード注文している子をみれば
初恋の君と瓜二つかな
海の家ほったて小屋に掛かる絹
思い出と共に消えてゆく傷
....
過去も未来も
遠いところなんてものもなくて
ほんの少しの場を
くり返し くり返し
生きているのかも
眠るたびに
改ざんされる
フロッピーディスクほどの宇宙
私は何にでもなれるし
....
熱いゆげをわけて
ちりれんげですくって
ふう ふう 吹いて食べるのです
舌の上にのせた豆腐が
かすかに香って崩れる時
ふと時間は逆戻り
勤め帰りのスーパーで
....
さっきから私の背を追ってくる
オヤジ節の様な咳払い
切れない痰のしつこさに男はどんな顔しているのだろう
振り返り見ず 歩く私の前にはさっきから
くるくる回る
まぶしい笑顔のデ ....
窓を開けると五月の風と一緒に
校長先生が入ってきた
自分で握ったんだよ、と
おにぎりを食べてみせ
そのまま駅のプラットホームに並んだ
太陽の高さや空気の感じなどで
今日が午後であることはわ ....
新じゃがいもをたくさんもらったので
ご近所さんにお裾分けした
お返しに、と
果物をいただく
蜜柑のようでちょっと違う
きめ細かいすべっとした黄色い皮は薄く
手でむけそうだ
現れた果実 ....
京都駅構内のアスティロード商店街を抜けて
おもてなし小路を行くと連れの彼女が独りごちる
「うわ、六百十五円やて!」
何事かと 彼女の視線みると
老舗珈琲店の店先ショーケースにはり ....
ビスカッチャになった私は
眩しそうに目を細めている
ただ ひと目でお疲れなのだろうと分かる
それがなんとも言えない いい味わいなのだ
植えたばかりでも
水田では風を見ることができる
....
比良の山を
汲みあげようと柄杓星
ゆったり横たわる りゅう座の下に
カシオペアの東には
アンドロメダがのびやかな弧をえがき
めぐる星座は三百万光年の彼方の大銀河を抱いて
....
東京SK駅から北東約十分
明日にかかるプールバーで
転がる玉を見ている
すべての始まりはそこで
やがて
花火の夜に散るように
マイクロバスから
あせた国際色が帰る宿
すべての始まりはそ ....
ベランダで洗濯物を干す
私の耳にずっと
とどいている安穏な響き
それは近所だけれど少し離れているため
うるさくもない 建設中のマンション工事の音
手が空いて 見下ろす ....
目の前に大きな山が聳えている
あんなに高い所まで登れるんだろうか
と思っても
一歩一歩登っていくと
必ず頂上に着くから不思議だ
どうしてわざわざ苦労して山なんかに登るんだよ
という人がいる ....
✴︎サルルンカムイ
丹頂鶴って、アイヌの人たち神様て呼んできたんやね。
湿原の神!高貴やんなぁ。
池を模った浅いプールで一羽が まかれて有る小魚を
黒い足先添えながら長 ....
{ルビ十重奏=デクテット}な鈴虫の競い鳴きに
飲んだアイスコーヒーのグラスもそのまま微睡む
日暮れ前
曇りならば昼間でも鳴く
それは{ルビ八重奏=オクテット}から{ルビ七重奏= ....
黒いズボンに白いシャツ
僕はパンダぽくなれたと思う
のに のだが
誰もわかってくれない
シュッとして見えるせいかなって
足を上げて見せたら
足が短いってびっくりされた
びっくり ....
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