黒ずんだのこぎり屋根の原野を
仲間からはぐれたネズミが
逃げ走る
ところどころ噴き上がる蒸気を
蹴散らす西風
ちぎれ雲がコーラルに染まって
解体されないままの太い煙 ....
発車ギリギリの電車に飛び込んだ
座れたけれどだるい
夏期講習サボってどこか遊びに行きたい
そう思いながらYOASOBIを聴いている
サラリーマンのおじさんおばさんたちも
疲れた顔してスマホを ....
通貨はベイベイ横浜駅で
青いユニホームかぶった駅員が
帽子のあごひもキュッと締める
まるで駅員であることを確認するように
特急、接近、ハマ風が吹き、
ファッショナブルに回転する駅員
膨らむ ....
広くつづいた枯野の道は
骨ばかり
高く乾いた冬空に
黄昏月の悲しげな瞼の赤らみ
涙の匂いがしないように
化粧水をたっぷりふりかけて
いかなる慰めも求めていない
....
遠くサイレンの聞こえる朝
会社の広い敷地内にある
コンビニエンスストアのごみ箱へ
がらん! 落とし込まれる
リポビタンD の空き瓶
心地よい冷気を後にして
配属先の建屋ま ....
駅から出るとバスターミナルを
陽が独占する
発車して行くバスの後ろ姿へ
あつかましく輝きながら
瞼を伏せて立っているバス停の
シェルターで、高校生ぐらいだろうか
少年と少 ....
わたしはやっぱり
PARCOが好きだったんだなあと思う
むかしのPARCOが
好きだったなあと思う
津田沼PARCOには
何度も、何度も行った
アルバイトで貯めたお金で
ヒス ....
透けていくからだの
根っこのどこかで
何かが心を穿つ
目の前はかすむのです
小さな水槽の水草をちぎって
置き石の陰で横たわり
フロートガラスの壁に立ち上る
気泡をゆっ ....
湖は光を洗い
まろい音をはじきながら
たち渡る風が青じろいまぼろしをつくる
魔法瓶の麦茶が喉を通る冷たさ
図書館の帰り、
昼どき近くの公園で
セミの鳴きに耳を傾け ....
あまねく日は西へ傾き
道に日は照り
わきたつシャンパンゴールドの
彩雲がおだやかな貌をみせる
隣人やあなたから見える
ベランダで洗濯物を干す「わたし」は、
知らないまに
....
想い出したように
鳴る
風鈴が
躊躇うように
あなたが
幼い頃の話をする時のように
鳴る
風鈴が
逃げる風を追い駆けようとして
諦めたように
鳴る
あなた ....
西風が吹きつける
白い塗装の剥げかけた
木枠の窓
嵐の前の雨が胸をつき
かえるべき場所を見失った心は
ぐるりぐるり
過去の幻をめぐるだけで
固くなる
あなたは ....
眠れないから針を投げる
夜がナマズみたいに口を開けてる
忘れた頃に届いた手紙
still love you.なんて
文末に軽く添えやがって
こっちは本気だったのっ!
白くなった ....
うまく書けなくてもいいのだ
カッコ悪くても痛々しくても
そのときの気もちを書いた言葉には
ふしぎなやさしさがある
詩のせかいはだれでも入っていける
きみの書いた詩を だれか ....
大洋の波は疲れを休めに
小さな湾へ入る
湾を取りまいた山々が厳しく空を区切り
空は益々、高く逃れ
大洋の波を冷たく見下ろす
⭐︎
姿を取りえない青春の彫像を打ち立 ....
化粧水を浸したコットンパフで
やさしく押さえる目元や頬に
いつのまにか
またシミがひろがっている
ささくれ立つ気持ちの
燃えのこる夜
シーリングライトで照らされる
....
庭先に咲いていたのはほおずきの花
日常からわずらいを引き算したような
うすい黄色の小さな宇宙
秋になってそれは赤く実籠る
ほおずきの実には毒があり
かつて堕胎するために使われたと知ったの ....
騙される人はいつも同じ
── どっかの人
しょうもない未知の予言にうんこする 💩
嘘つきが金を儲けるスピリチュアル 💸
ピンポ〜ンとエホ ....
待ちかまえていたのか
折悪しく雨がぱらついて
遠くない駅までの道を濡れていく
JRで一駅先の改札を出ると
もう雨は止んでいて
踏切の向こう、陽ざしが流れおちている
滝のう ....
小さな瓦屋根の付いた
土塀が続くわき道で
赤い郵便バイクとすれちがう
黄土色の築地塀はひとところ
くずれたままになっていて
原付のエンジン音が
その空隙から逃げていっ ....
地上のある一部の上を
浮遊しているシジミチョウ
少し伸びている青芝には
いちめんの陽射し
こめかみを撫でる風と
こうしていま、私はひとりで
ビルの壁際に沿った歩道を歩き
....
「この靴みて!」
靴底の端が切れてパカッと割れた状態になっている
スニーカーを私へ差し出して
「朝は、こんなんになってなかったわ」
悪戯だと思い込み反応をさぐる様な彼女の目付き
....
おとつい買ったばかりの
ミドル丈のレインブーツ
人気のない舗道に目をやりながら歩く
おおきな水たまりもへっちゃら
雨はアジサイの植え込みを揺らして
色づく花房に打ちつける
....
アナベルの咲きそろう庭に遭い
手で触れることを
ためらって
六月の午後にあがった
冷たい雨
潤ってあざやかな花房に
そっと 顔を寄せると
控えめで甘い匂いは
....
三輪車コロコロ転がして
ゆるやかな坂を下る道、
わづかに小石遊ばせて入る
梅林
手の届かない
白くかすんだ花
ちらつき始めた小雪が
桃色のカーディガンに降り
いつ ....
朝からユトリロの絵画のような
白い空が満ち満ちていました
夕刻になってようやく
この惑星に落ちてきた雨は
みぞれに変わり
ぬかるんでいくわだち
いつとはなしに雪になり
夜になってはさ ....
窓の外は雨あがりの道端に
もう夏が振り向きもせず
透けた背中をみせている
昨晩干した洗濯物の柔軟剤が香る室内で
好きな音楽を聴きながら
刻み始めるキャベツ
レッ ....
夕立の雲が垂れ込めているのに
ふりそうにない{引用=まだ降らない
まだ降らない
まだ降らない} その短いようで限りなく不穏な時
夏草の背の高い奥庭
開かれた窓に
夕顔が、何 ....
ゆっくり上がって
ゆっくり下りる
破綻のない円を
描き続ける密室の中
あなたと向かい合った
あなたが指差す方向に
ひきつった笑顔を向けながら
まだ信じることが下手だったわ ....
陽のかげる時
美しくなる人だった
陽の輝く時は
自分から遠くなった心を
捜しかねているのだ
まして雨の時など
濡れた頬に
昨夜のベーゼが生き生きと甦っている
....
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