足の爪に
塗っておいた海が
夏のどこかへちぎれて消えた

地図の上をなぞる指が
コーヒーの匂いをたどって
最果ての島に着く

ふと顔を上げれば
見慣れた街並み

寝過ごした朝のよ ....
π(パイ)


二畳ほどもある焼き釜は
林檎とシナモンの焼ける
例えようのない良い薫りです

どれほどの林檎が燃え盛る炎に
くべられたか その林檎の数には限りがありません
讃えようも ....
落ちては掃く
落ち葉の

落としては掃く
落ち葉の
だれでもない
わたし

日暮れの
空の
落とされては掃く
落ち葉の

だれでもない
わたし

だれかが
どこかで
 ....
大きくはない講堂で
詩人の声がしている

詩人の声は講堂よりも小さく
低いところを這うように響くから言葉のつぶは分からない
絨毯だけが分かっている
水を吸い込む時のように、そこだけが深い赤 ....
夕暮れがやって来る頃決まって私の腕に止まる君
ねぐらへ帰る途中なのだろう
一羽であることもあるし
友達を連れてにぎやかにさえずることもある
いやもしかしたらきょうだいだったのかもしれない
あ ....
セックスのあとで
歌を 歌ってくれたひとがいたの
シャツを羽織って
煙草をくわえながら

都会の真ん中
小さな
男のひとの部屋
壁や布団に染み付いた
数年間
煙草の吸い殻
立 ....
五円玉と五十円玉



出来のいい兄弟みたいに
二つ揃って穴のある
可愛らしい小銭の
五円玉と五十円玉
どっちが兄ちゃんだろうね
そりゃぁ、五十円玉が兄様だろね
五十円玉一つでいい ....
今 何時かな
早く 仕事終わらないかな
お客さん あんまり来ないでほしいな

チャリンチャリんと 千円札が飛び交う
万札なんて 出てきたら 「センパイ助けて~」
休憩しますよ
 ....
 パソコンがなかったら仕事ができない。
 年金詩人のわたしは今日もパソコンと睨めっこしている。正確にはマイクロソフトワードがなかったらということになる。その理由は文字を書く労力が半減することで、文章 ....
雨が降っている、と 長い髪を翻して駆けていった


レティシア 君を探して見知らぬ夢をさまよっている
あれは君だったの 夢のなかでそっとくちづけをかわした


誰もいない図書室で本をひら ....
夜が明けたら
真っ白の世界
魔法使いが杖をひとふり
呪文を唱えた
犬は喜び 庭駆けまわり
猫のあたしも
心躍る

歩道橋ですれ違う子どもはみんな
いつもよりはしゃいで見える

い ....
もう二度と歌は歌わない
そう決めたのは
合唱コンクールの練習の時
隣の子がクスッと笑ったから
以来本当に僕は歌を歌わなかった
音楽の時間は口パクで通したし
歌のテストの日はズル休みをした
 ....
肉体だけが失われた
魂だけになった人々のすむ世界は
遠くて
案外近い、のではないか

たとえば
風の吹いてくる方角に向かい立ち
乾いてゆく眼球の映す景色が
そのまばたきのたびに
一枚 ....
制服を脱いだら
一体何が
私を
女の子だ
と証明するんだろう

外に飛び出たら
素直な気持ちを伝えたいと
思う気持ちも
霞んでくるんだろう

好きも嫌いも
簡単に言えなくな ....
冷たい夜に
悲しい言葉が一つ
私の身に落ちて
もう途方に暮れる
気分でありました

静かな街に覆われて
1人彷徨っていた
午前2時のことでありました

憂いの言葉は
具現化す ....
軽トラックの
荷台から
あふれんばかりの、かや
山盛りということはこういうことだ
現役で農作業をされている人が
こんなにも近くにいるということが
無性に嬉しい
今朝スーパーで見かけた車の ....
とつぜん雲が現れる
泣けば楽になると傍らで誰かがいう
雨が降りはじめる
わが子を抱きしめていた腕がするり
ほどけてだらしなく砂を掴んだ
かなしみに浸ることはかんたんで
すべてを捨てる覚 ....
地下二階で 小説を書いている
と、謂ったのは誰だったかしら すっかり忘れてしまった

ね、詩人はどこで詩を書くの?
地上?
地下?
雲の上?
あ、そうだ 地の底かしら

小説と謂えど ....
ひんやりした空気の漂う
澄明な秋のゆうぐれである
蓼のべにいろ
野菊のうすむらさきが
ふるえながら空へと
にじみあがるのである
この小径をゆくと
わたしの肌にも
それらのい ....
もう、疲れてしまった。
美しいものは、等しくコトバにできない、ことや、
瞼を瞑ることでしか、思い出せないと言うことを、
眠らない心が捉えてしまったのだ。

夕焼けすら 同じように見え ....
じゃりじゃりになっている
蜜のあわれを
さじで救い取る

瓶の中で
結晶になった
白い彼女はきれぎれになり

焼かれたパンの熱でそれは
ふたたび脆弱に溶かされてゆく
朝の甘い官能
 ....
【酒場にて】
俺のような誇り高い男はな…
そのとき彼は一段と高らかに笑った
そして転げ落ちていった
何処までも転げ落ちていったのだ

私は月明かりの映える窓際で
杯から転げる音を聞いてい ....
夫と言い合いになった日の深夜
冷蔵庫の前に這いつくばって
冷たい床に雑巾で輪を描いた
何度も何度も同じ輪郭を辿って
ただ一心不乱にひとつの輪を描いた

怖い顔で子供を見送ってしまった朝は
 ....
夜空でフラミンゴが歌いながら
右足を差し出すとき
月影は大地をそっと染めながら
ガラパゴスウミガメは
まるで天球を月が
動く速さでゆったり
未来へと歩みを確かめる

  *

夢の ....
一人称についての
ダイアログをスキップして
夕日を抱けば恋をした
海で拾う貝殻に
耳を当てるたび頑なな自分を
否定した
ひりひりした
砂で顔を洗えば
いくつもの化粧は落ちていっ ....
夏のあいだ僕らは
危うさと確かさの波間で
無数のクリックを繰り返し
細胞分裂にいそしみ
新学期をむかえるころ
あたらしい僕らになった
けれど
ちっぽけなこの教室の
ひなたと本の匂いとザ ....
お母さん、私ね、学校にin loveなboyが八匹もいるんだよ

金魚に餌をあげていたら 
次女が後ろで不意に大きな声を出すものだから
目の前の水槽に
突然金魚が九匹飛び込んできて、
その ....
酒の自動販売機の前で
近所のおじさんは
ワンカップのボタンを押す

がたたん

おじさんは
しゃがみこむ

しばらくして
立ち上がったおじさんの手にあるのは
完全に飲み干され
 ....
時を放って
昇っていく夕日について思考する
青くときに淡い時代の切れはしのよう
葉が呼吸をする間に語り合う
そっと息を止めたりして
手紙に書くように丁寧に話をして
愛はとくべつ
 ....
安売りをしていたので
星をひとつ買った
命名権付きということで
相応しい名前を小一時間考え
以前飼っていた犬の名前をつけた

部屋の電気を消すと星は仄かに瞬いて
偽物みたいに綺麗だ ....
平瀬たかのりさんのおすすめリスト(872)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
ペディキュア- ガト自由詩16*15-12-13
アップルパイの2乗- るるりら自由詩22*15-12-12
オルガン- たま自由詩1415-12-8
朗読の講堂- マチネ自由詩6*15-12-6
すべての梢は止まり木である- そらの珊 ...自由詩2315-12-5
落下- tinsukou自由詩415-12-5
五円玉と五十円玉- 月形半分 ...自由詩9*15-12-5
『自営業』- 座一自由詩4*15-12-2
(ゐ)のひと- たま散文(批評 ...12*15-11-29
レティシア_青い花を探して- 石瀬琳々自由詩8*15-11-27
雪が積もって- Lucy自由詩14*15-11-27
歌はもう歌わないと決めたけど- 夏美かを ...自由詩36*15-11-25
薄暮の街で- そらの珊 ...自由詩17*15-11-25
モラトリアム- 瑞海自由詩8*15-11-15
流星群- 瑞海自由詩6*15-11-9
かや刈り- そらの珊 ...自由詩1115-10-26
みちのり- かんな自由詩9*15-10-23
山田さん- たま自由詩18*15-10-19
秋の手紙- 塔野夏子自由詩4*15-10-17
喪失- 為平 澪自由詩20*15-10-16
冬のはちみつ- そらの珊 ...自由詩19*15-10-15
還暦小詩集- 宣井龍人自由詩19*15-10-3
磨くという行為- 夏美かを ...自由詩47*15-10-1
ちょうど動物園の夜空で- りゅうの ...自由詩18*15-9-24
16歳の夏休み- かんな自由詩9*15-9-20
コピーアンドペーストエンド- そらの珊 ...自由詩22*15-9-2
ボーイが八匹- 夏美かを ...自由詩34*15-8-27
おじさんの伝説- そらの珊 ...自由詩11*15-8-25
はじまり- かんな自由詩10*15-8-22
夕日- たもつ自由詩3515-8-1

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