夜空でフラミンゴが歌いながら
右足を差し出すとき
月影は大地をそっと染めながら
ガラパゴスウミガメは
まるで天球を月が
動く速さでゆったり
未来へと歩みを確かめる

  *

夢の ....
一人称についての
ダイアログをスキップして
夕日を抱けば恋をした
海で拾う貝殻に
耳を当てるたび頑なな自分を
否定した
ひりひりした
砂で顔を洗えば
いくつもの化粧は落ちていっ ....
夏のあいだ僕らは
危うさと確かさの波間で
無数のクリックを繰り返し
細胞分裂にいそしみ
新学期をむかえるころ
あたらしい僕らになった
けれど
ちっぽけなこの教室の
ひなたと本の匂いとザ ....
お母さん、私ね、学校にin loveなboyが八匹もいるんだよ

金魚に餌をあげていたら 
次女が後ろで不意に大きな声を出すものだから
目の前の水槽に
突然金魚が九匹飛び込んできて、
その ....
酒の自動販売機の前で
近所のおじさんは
ワンカップのボタンを押す

がたたん

おじさんは
しゃがみこむ

しばらくして
立ち上がったおじさんの手にあるのは
完全に飲み干され
 ....
時を放って
昇っていく夕日について思考する
青くときに淡い時代の切れはしのよう
葉が呼吸をする間に語り合う
そっと息を止めたりして
手紙に書くように丁寧に話をして
愛はとくべつ
 ....
安売りをしていたので
星をひとつ買った
命名権付きということで
相応しい名前を小一時間考え
以前飼っていた犬の名前をつけた

部屋の電気を消すと星は仄かに瞬いて
偽物みたいに綺麗だ ....
枝から青くふくらんだ
健やかなる実をはずす
茶色いしみのようでいて
何かを主張している風の
そんな模様を持つ実は
捨てた

捨てたあと
なぜかもう一度この手に取り戻し
親指と人さし指 ....
歩むにつれて足の先からとけていった
こんなだから冷たいアイスを食べよう
こんなだから冷たいアイスをたべよう

コンビニの涼しさにもぼくの溶解はとまらず
浴衣姿の店員がミンミンと鳴いて
鳴け ....
兄が建てつけの悪い窓を開けると
光がよいしょ、と部屋に入ってくる
光は物珍しげに
部屋の中を見渡して言う
「ずいぶんおかしな所に住んでるね
 一日中しめきって
 じめじめしてるし、かびくさ ....
     こんなひは
     ひんやりとした床で
     寝たふりをするより
     とったばかりのいんげんと
     てんぷら油の格闘に
     歓声をあげてみたり
  ....
男の手を美しいと思った。
私より一回り太い指と丸に近い爪。黄みの強い鮮やかな肌色。烏龍茶の入ったジョッキを掴むのを見ながら、男がその手で自身の性器を包むところを想像する。黒い前髪が左目にかかるのを、 ....
黄色いシーソーが二つ
同じ方を下げて
ならんで寝ころぶ恋人同士みたい 

ブランコも二つ
風にほんの少しだけこぎ出して
仲睦まじそう

のっぽの滑り台はひとり
空を見上げている 雨が ....
神様が作った骨の成り立ちを考えれば
猫背であることはとても自然な成り行きであるのだけど
猫背である自分をウインドウ越しにうっかり見てしまえば
あんまり素敵じゃなくて
ちょっとだけ無理をして背中 ....
 
 
人が笑っている
マユミが笑っている
マユミは母
オサムは父
オサムは死んでいる
 
首を洗って待ていろ、と
テルヒコに言われ
二十年、首を洗って待ち続けた
首だけがただ
 ....
自然にできたグループに分かれて
植民地時代のボストンの街並みを色画用紙で再現している
春陽に包まれた5年生の教室

その穏やかな空間に一瞬そよ風が吹いて
支援クラスに行っていた娘がひらりと入 ....
空をゆく鳥が止まっているのじゃないかって
思う時
あるよね

そんな言葉で恋が始まることもある
わたしたちが本当に見ていたのは
鳥でも
雲でも
小刀のような銀の波濤でも
ウインドサー ....
 
 
雨が降ってきた
それに加えて午後からは
槍まで降ってきた

雨が降ろうが
槍が降ろうが
必ず行くよ
と言っていた友人は
終に来ることはなかった

窓を開けると
代わり ....
「ねぇ なんで喋れないの?」

染めたこともないのだろう
黒髪に浮かぶ 天使の輪が揺れて
不思議そうに彼女が私を見た

ほんの気紛れだった

クラスメイトの誰とも関わらず
自分の ....
小さなへびかと思ったら
いつかちぎれた
しましま模様の靴紐だった
だとしてももう
それをくぐらせるズックの穴がない
わたしにはもはや必要ないものだったので
さよならを言って
立ち去るくら ....
何年も前の事だけど
「紀伊国屋なう」というメールを
貴方がくれた
その時は
電車に6時間も揺られなければ
紀伊国屋のあるその街へ行けない土地に
住んでいたから
「今その町に私がいれば、
 ....
境内につづく階段は長くて
手をつないでいると
歩きにくいのに
離したら二度と会えなくなりそうで
はじめて着た浴衣の
袂をゆらしていた
あれは
いくつの夏だっただろう

抱きかかえ ....
寝起きの熊のよう
ボンヤリ不機嫌
だぶだぶの部屋着
クロックスを引きずって

それでも花 
今朝 三つめ

ピンクのチューリップ
黄色い水仙
真っ赤な髪の少女
重そうにコンビニの ....
僕たちが
子どものように無心に
箱庭に玩具をならべて遊んでいるうちに
気づくと 世界が
すっかり終わってしまっていたんだ

だから僕たちは
僕たちの箱庭を新しい世界として
もう一度生ま ....
手袋をした手が 器から
大量の人を掬い上げていた
その指の狭間から 夥しい人が
こぼれて落ちていった

器の底から
呻き声や悲鳴や嗚咽が聞こえても
泡がはじけるように消されて ....
囲碁には(天元)の一手があるという。

運命の場所をそっと探るように
シナリオの無い未来を読むように
白と黒の石は…互いに音を立て
碁盤の升目を、埋めてゆく。

――碁石とは、天の星々の ....
平面の布に
針を刺していく
そうして出来た
糸の道を引くと
操られるように
現れる
立体の波は
少女の真新しい綿のスカートの裾を
縁取って踊った

風、曲面のゆらぎ
影とひかり
 ....
パンが食べたい


結婚して子供をもうけたが
三十過ぎに発覚した病が原因で離婚
その後は親もとで闘病生活の女性を担当している
駅前のマクドナルドで聞いた
きみの近況

脳下垂体の異常 ....
新緑の木漏れ日
雨上がりの朝
ひとの気配を飲む森
まぐわうように
愛をからませて吐く息
命の匂いに満ち満ちて止まない
そんな五月のように私たちが求めて止まないころ
得ようとしていたもの
 ....
つるーっと
玄関から入ってきた
ひとつのボール

丸いな
手にとるわたし
明日は晴れるのかな
お母さん

きっと晴れね
これ水色だもの
受けとるお母さん
夕ご飯は何 ....
平瀬たかのりさんのおすすめリスト(850)
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