淋しい椅子
リリー

 
 湖のほとりで 歓送迎会が宴たけなわ
 大広間のステージ台へ背もたれ向け座る
 センターから外れる円卓、
 あなたが 椅子に割り込んできた

 別の課へ異動していくあなたとは
 正式な交際に行き着かないまま
 優しく肩を寄せてきて
 ふたりきり 寄り添う後ろ姿
 そこに頭上から赤ら顔の課長と補佐が乗りかかり
 引っ剥がす様にして彼を
 連れて行ってしまう

 忘れ去られたグラス 
 は、まだ少し気が弾けていて 一口飲む
 もう冷たくないハイボールを音立てて置いた 
 
 そろそろ誰か戻って来るだろう
 卓上の大皿へ箸は伸び、親睦会費の元を取る
 あなたがいなくなった
 一人っきりの 椅子に座りながら


自由詩 淋しい椅子 Copyright リリー 2023-04-08 14:24:11
notebook Home 戻る