すべてのおすすめ
もう何年も前
遠い北国に{ルビ嫁=とつ}いだ姉が
新しい暮らしに疲れ{ルビ果=は}て
実家に帰っていた頃
日の射す窓辺に置かれた
白い植木鉢から緑の芽を出し
やがて赤い花を咲かせたシク ....
久しぶりに三人で手を繋ぐ
いつもより寒い冬
汗をかいた小さな掌は
どことなく妻に似ていた
歳を聞けば指で
三本や五本を出していたのに
今では両手の指すべてを使わなければならない ....
時間とともに わたしは
うしなわれる だから未来を
待ち望まない というのは嘘だ
明るいうちに できるだけ早く
きみのところまで たどりつきたい
大きめの緑のガラスの器
底にはサカナ
たっぷり透明 イモジョーチュー
そお 今日は
おおみそか
明日からの事は置いといて
思いっきり うしろ向き
どんな一年だったとしても
....
猫の顔した犬が居た
首輪に鈴つけ木に上げた
喉を鳴らして雀を捕った
三羽も捕らえて笑ってる
向こう岸にはヒヤシンス
誰が植えたか分からない
犬の顔した小父さんが
にこにこしなが ....
風は思いのほか近くから来る
雨はほぼ真上から
あなたの街は遠くて
僕は想うより他に知る事が出来ない
いつか
そこに立ったとき
僕は何を感じるのだろう
暑い暑い日差しに
....
こどもが歩いていた
老人も歩いていた
とおいところで
ぼくらは一人だった
がたがた震えているかもしれない
風のあとに目覚める
かわいた沈黙のなかで
心のなかの もう一つの身体は
泣いて ....
あても無く{ルビ彷徨=さまよ}う
芝生に伸びる私の黒影
丘の上に独り立つ
{ルビ只=ただ}
北風は{ルビ枯草=かれくさ}を揺らし
雲ひとつない空は澄みわたり
日の光の道を映す海は
....
とうめいのくま
くまくまと
ぼくのそばにきて
ほほえんだ
でも とうめいだから
そんなきがしただけ
とうめいのくま
くまくまと
さっていった
....
アマガエル
かわいい
きみどりいろで
ぼくはアマガエル
すごくすき
たくさんあつめて
ならべてみよう
アマガエル
アマガエル
....
木枯らしの中進む
池を進み 竹やぶを進み
時速10kmで登る未来
街はやがて
林になり 森になり 空になる
手が寒いので手袋をする
君に貰った優しさで出 ....
ある 退屈な 午後
片付けをして
掃除をして
昼寝もすんで
退屈な 午後
部屋の隅っこに座ってみる
目を閉じる
(3・2・1)
目を開けたらこの部屋は猫でいっぱ ....
いま たしかに
{ルビ身体=からだ}の中にあるコレを
どうにか言葉で写してみよう
すると ほら
もうおそい
色を変え かたちを変え
大きさを変えて
コレは
言葉の網をすり抜 ....
浮遊し切ったグレーの吐息は
眩しいほどの黒に溶けて
疲労しきった三日月を
粋な靴に押し込んだ夜
外は昨日の残骸が
そこらじゅうに転がっている
軋む肌に慣れた夜明け
....
月は地球のまわりまわる
ぐる ぐる
もし 月と地球のキョリ
2mくらいだったら
地上に月の道ができる
建物もよけてつくらなくちゃ
パッて飛びつけば
地球一周できちゃうぞ
....
僕はペンギンのおなかが気になる
あれはかたいの?
それともやわらかい?
ペンギンがやってきて
僕をみて ほほえんだ
おしてもいい?
ペンギンは駄目だという仕草をして
帰っていった
....
冷たい風と一緒に
クマが走ってきた
大きな目をまん丸にして
涙がポロポロ
首からさげた手ぬぐいで
目を拭きながら走ってくる
冷たい風が目にしみるんだね
冬眠するの 間に合わな ....
ぼくがあまえるには
きみはちいさくて
きみがあまえられるほど
ぼくはおおきくなくて。
だから
さみしいねって
くっついている
いつまでも
くっついてる
おんな ....
空と海
誰かがひいたあの線の
手前で競い合っている
砂利道ばかりの
僕の田舎は
海がきれいで
何も無かった
今にも泣きだしそうな青ばかりと
僕を飲み込ん ....
皮膚という薄皮の中に
なまあたたかい
生がある
そう思いこんでいる
骨にまとわりつく体を
巡っていく流れに
生がある
そう思いこんでいる
あなたとつない ....
山田くんは手を洗わない
一学期の終わりころから急に、手を洗わなくなった
購買のやきそばパンを食べるときにも
科学の実験をやった後でも
山田くんは手を洗わない
聞くとこ ....
ナマケモノ の
うごき は おそい
ナマケモノ を 思う とき
僕 は 息 を すって はく 回数 が 減る
そして
ナマケモノ の
ココロ を 思う とき
僕 は 窒息 し ....
遠くにいる人を想っている
列車は夜の手のひらをすべるように過ぎてゆく
舞い落ちる雪はその速度に蹴散らされて
散らされた後たいへん静かになり
静かに舞い落ちて
舞い落ちて
落ちて
落ち ....
ねこのひげ
のびる
のびる
どんどんのびて
からだじゅう ぐるぐるまき
ぱっとみ
でかいけむし
ねこのひげ
のびなくてよかった
ほんとうによかった
冬 葉が落ちた樹
ぴゅううううう
寒さに耐えて 立っている
・・・とみんな思ってるけど
僕は知ってる
あそこは留守で
地面の下でぬくぬくと寝てるってこと
そして僕は 公園の隅で ....
今日も遠い北のはずれでは
北風がつくられている
私は妹の手をとって歩きながら
「ごらん、あれが北風だよ」と
すり切れそうな雲の端を指さして言う
すると雲は
少しずつ形を変えなが ....
目覚めた昼
あくびと一緒に
昨日のもやもやを
眠る朝
子守唄は朝露の音色
枯葉を落としながら
心までも掻き回す
風の強い夜
秋は不思議
木々は なんだかにぎやかで
どんぐり坊やは 力強く歌っておどるし
風はやたら はやく はやくって。
僕はどうしたらいいのかな?
って くまがいうから
僕は おなかを洗ってもうね ....
空がきれいに青くて
たくさんの色々な形の屋根が続いた向こう側に
機嫌の良い雲がたくさん
そこはちょうど海の上
僕の町から ずっとまっすぐ下って行くと
海に出る
空と海が大好きだから ....
僕が転んだ
白い雲がながれていた
僕が転んだ
麦の穂を風が掃いた
僕が転んだ
膝に石を刺した
しんとした痛みを
ただこらえた
何も居ない
笑いごえもない
ひざを押さえた道端で ....
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