すべてのおすすめ
わたしは みにくい獣だ
鋭利な刃物を知っている
(わたしの爪はいつも)
鋭利な言葉を知っている
(やわらかな皮膚だけを)
鋭利な視線を知っている
(傷つける)
みよう ....
パーティーは散々だった
おやすみ、のあいさつの方角へと
だいだい色のシロップが
ゆっくりと流れて
しだいに
粘性を増してゆく、
夜の
水の底で ゆうべ、まき散らされて
わたし ....
いつまでも
どこまでも
そんなこと
どうでもいいくらい
まっすぐつづく
ぼんやりした
みちしるべ
ぽつり ぽつりと つづく
あぁ、
やわらかな こっかくに ひかる
....
なにげない
なつの ゆうぐれ
そんなに たかくは
とべやしない
ふうけいの なかの
いっこだけの てん
であるところの
わたしが
おさまりきれない
でかすぎる ゆうぐれ
あ ....
つよくつよく
いだいていたきもち
ふとしたしゅんかん
このどうしょうもない
スコール
おねがいです くものきれめを さがしているのです
たいようは
あたたかいことを
しって ....
午前10時の光が
この星の
この国の
この街角の
小さな女の子を照らしています。
午前10時の風が
この星の
この空の下の
このおもちゃ屋さんの
....
ふうせんのように
いっぱい いっぱい
つまっていて
ぷつりと
あながあくと
ただの
そとのかわ いちまいに
なります
だれかが いってます
だれも だれも いない
私はやはり、と
言わざるを得ない
やはりあの{ルビ畦道=あぜみち}を
脇目も振らず
私は歩いていたのだと
炎天、真昼、陽炎
夏が侵攻していた
それはいつも匂いから始まる
濃厚な ....
ある日、仕事を終えて
更衣室のロッカーを開くと
取り付けの小さい鏡の下に
お守りのようにぶらさげていた
5センチのくまのプーさんが姿を消していた
プーさんは
うまくいった日も
へまを ....
曇った窓ガラスに
家の印をつけて
それから
母の勤めている店の印をつけて
でたらめな道でつなげる
窓が汚れるから、と
後で怒られたけれど
それがわたしの初めて描いた
世界地図でした ....
それはすてきな
なつのそらを
かついでかえったのに
いない
なつくさのみどり
たっぷりと
しみこませたのに
いない
さっきとったトマト
しおかけて
きゅーっとうまいのに
....
君がぽかんと口を開けているのは
口の中で風が吹いているからだ
その正体が何であるのか
問う方法も知らないまま
ある日突然に
君は君であることに気づくだろう
そしてそれは
君が君で無いこと ....
わたしは宇宙人を見つけた
自分でそう言っていたから
たぶん宇宙人なんだと思う
宇宙人はロックバーのトイレで煙草を吸っていた
フロアが混みすぎていたからだと思う
ずいぶん痩せているから
....
私の葬式がささやかに執り行われ
友人らが久しぶりに集まった
青空には透明な道が果てしなく続き
新緑に人々の喪服が映えて美しかった
一滴の涙も流されず むしろ
想い出を懐かしむ声で
小さな式 ....
悪気などないのだから
だから尚更
優しいあなたは嘘つきになる
誰をも騙せなくて
自分を騙すことではじめて嘘つきになる
それがたとえ取り繕いの仮面であっても
優しいあなたは
....
かけおりた坂道のおわりには
ボーダー柄の、夏が
波のような顔をして
手をふっていた
それから、 と言ったあとの
あのひとの声が
ノイズにのまれて、ちらちらと
散ってしまったので
....
霧雨の降るぼやけた朝の向こうから
「夢の国行き」と{ルビ記=しる}されたバスが近づいて来る
後部座席の曇りガラスを手で拭くと
数ヶ月前に世を去った
認知症のゑみこさんが住んでいた{ルビ空家 ....
私は今まで通り過ぎて来た
広大な荒地の上に黒い血を吐いた
無数の遺体の傍らを
倒れかけた木造の家の
ベランダに干されたシャツが
突風に身をよじらせ
空に飛んでいく様を見ては
鈍い心 ....
結びかけた靴の紐が
切れた瞬間に
砂時計の砂は
落ちきった
海が燃える
紙飛行機の上で
くしゃみする
ひっかき傷のせいで
墜落す ....
玄関のドアを引く
駆け込むようにして進入してくる朝は
少しだけ暗い白
今日も天辺まで積み上がった世界で
濡れたままの人たちが歩いていく
傘を忘れたわけでもなく
濡れることに気付かないわ ....
わたしは、ほんとうは楽譜なのです
と 告げたなら
音を鳴らしてくれるでしょうか
指をつまびいて
すこしだけ耳をすましてくれるでしょうか
それとも声で
わたしを世界へと放ってくれるでしょうか ....
家具屋に行った
広いフロアを丹念に見て歩いたが
家具はどれも高くて
困ってしまった
結局小さな置時計をひとつだけ
買って帰ることにした
また時計を買ってきたの?
呆れ顔でそう言う妻に ....
こんにちは
頼りのない足取りの青年が囁く
こんにちは
つぼみのままの桔梗のようなからだが
治療病棟の個室に吸いこまれる
「若松さん。」
人の傷跡が残る廊下に ただよう消毒液のにおい
若松 ....
西の空の
あの薄桃色は
今日を
黙って許してくれる
と いうしるし
明日を優しく
連れてきてくれる
と いう約束
大きく大きく
愛されている
ぬくもり
光る機体が
傲慢に突 ....
とどがいます
打ち上げられました
寝ています
どこにも行けません
助けて
なんて頼まない
とどだから
なんだか疲れたので
しばらくここで休みます
ひとりです
ダイヤモンドダスト
....
コンクリートの丸いもようは、踏んじゃだめよ
って、
しあわせになれないから
って、
きみが言ったとき
さっき
二度ほど踏んでしまったぼくは
ちょっと泣きそうになって、あわてて
声をだし ....
〜夜明け〜
森の呼吸
白く霞む朝
誰かの声
遠く響く
満たされる
満たされる
静かに濡れた空気
新しい命
〜静かな午後〜
緩く開いた手のひらを上に向けて
目を ....
海の見えない
深い森の中で
事件は起きた
たまごから
孵ったばかりの
おたまじゃくしは
幼いから
なにも知らずに
鰓呼吸をする
木の葉が沈んだ
たまり水で育つ
藻を食べて ....
昨日、うちに迷い込んだ、
丸い目をした子猫が
夜の空の右側と
夜の空の左側を
不思議そうに交互に眺めていました。
空は相変わらず広いから
多少のものは描くことができ ....
夕暮れ時わたしは足元が見えなくなるまで歩いた
足元が見えなくなると笑いながら歌った
お腹が空いて寂しくなったので
知らないガチョウを食べた
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