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旅の終わりの夕暮れに
車窓の外を眺めたら
名も無き山を横切って
雲の鳥が飛んでいた
{ルビ黄金=こがね}色に{ルビ縁取=ふちど}られた翼を広げ
長い尾を反らし
心臓の辺 ....
スーツ姿のサラリーマンでいっぱいの
0時44分発の東武東上線
最終電車
隣の席に座った人たちは
大きなバッグと
沖縄土産を抱えていた
そうか
この人は今まで沖縄にいたん ....
流れる川の様な風の中で
月は太陽に嫉妬する
光があるから陰があり
太陽があるから月は輝く
あの子はじっと目を細め
息を殺す様にして遠くを見つめる
まるで
そこに何かが居る様に
....
その山はあまりにも高すぎて
今の自分では
登ってゆけそうにない
でも登ってゆかなければ
今の自分は今のまま
狭い世界しか見えない
山のふもとから
山の高さに文句を言っても
その ....
世界は相対的だから
手を広げ
舞い降りるものを受けとめる私が
空に上る
世界は相対的だから
行きなずみ
とどまる私が
宇宙をかけめぐる
世界が相対的なら
殺す ....
ともだちだって
しょうこをみせてって
メロスの本を閉じながら
あの子がいった
しょうこなんかないよ
しょうこなんかないから
ともだちなんだよ
ぼくはどもってそういった
そういうふう ....
ただある花の
ただある自分
色は淡く
微かにゆれる
ただある空の
ただある自分
雲は薄く
静かに流れる
ただある時の
ただある自分
脈は弱く
僅かに刻む
見るもの全 ....
私を心の奥底に繋いでいた鎖
戒めは解き放たれ自由を得る
自由を得るということは
自分の全てに責任を取るという事
どういう精神状態になろうとも
自分で制御し、舵取 ....
某国営放送で観たイカ釣り漁のようす
脱サラして漁師になった夫を
影に日向に支える妻のけなげな姿
あれって夫婦舟っていうのかな
なんだか憧れてしまう、わたしがいる
確か奥さんの実家は代々の漁師 ....
(かじって
すてて)
レタスを洗って
いたい
今日はずっと
レタスを洗って
一枚一枚
丁寧に
拭いて
いたい
今日はずっと
知るのがいやで
本当はもう ....
早朝
{ルビ浴衣=ゆかた}のまま民宿の玄関を出ると
前方に鳥居があった
両脇の墓群の間に敷かれた石畳の道を歩き
賽銭箱に小銭を投げて手を合わす
高い木々の葉が茂る境内を抜けると ....
秋の花は
野に咲き
心に咲き
夢に咲き
思い草
桔梗の声聞く
菊あざみ
紅葉ばかりが
秋ではなく
花も実も
身も心も
染めゆくは
秋の風
秋は野に咲き
心に咲き
....
ベッドの上で
二人向き合って
レモンを切った
そのナイフに
お前を映して
見ていた
ベッドの上で
二人向き合って
レモンを切った
そのナイフに
映ったお前は
....
ダチョウはいきなり
炎天の平原を走り出した
太い頑丈な足で
砂地を蹴立てて
彼の後ろには
砂埃が舞い上がり
動物たちは
砂つぶてをくら ....
「傷つく瞳の奥」
傷つき、静かに流れる君の涙
僕には何も出来なかった
流れる涙、瞳の中には何が見えるの?
怖くてとてもじゃないけど聞けない
けど、今はただ、君の ....
八月 二週 また 入院暮らし...
ガラスの塔のなかで、優しいひとらに、接しながら、病と添い寝して。
夏は、晩夏を迎えて、( もう、立ちつくし、亡くなっているのかも、しれない。 )
....
小さな窓に流れ来る
微かな風の匂う秋
去りゆく時の寂しさか
訪れ{ルビ来=きた}るうれしさか
僅かばかりの部屋の中
大きな空に染まりゆく
彩る色の魅せる秋
どこから{ルビ来=きた}る ....
秋が訪れれば またひとつ
目じりに刻まれる年輪のようなもの
早いもので開け放した窓の外では
秋の虫たちが鳴き始めている
この様に季節が巡るのであれば
歳を重ねてしまうのも致し方無い事
抗っ ....
ぼくたちは生きている。
これまでもこれからも、
そして今もぼくたちは生きている。
世界にはぼくたちがいる。
たくさんのぼくたちがいる。
たくさんの ....
あなたが書いた詩を読みたい
あなたは
詩を書いたことがなければ
詩を読んだことさえもないのかもしれない
だけど
あなたが一生懸命書いた詩を読んで
誰が笑うものか
あなたが書いた詩を読ませ ....
夕映えに長く伸びた影の
手足のしなやかに動くのを
美しいと見惚れた
サッカーボールが弾むたびに
視線が鋭く光るのも
伸びかけの髪をかきあげて
おどけて笑う口元も
....
教科書の世界に
自分は入ることができなかった
入口がどこにあるのかわからない
それでもさすがは教科書
わかりやすい標識と信号が
自分を中へ奥へと
自動的にぐんぐんと進ませてくれる
....
今日泣いても明日は笑おう
辛いのは自分だけではないのだから
自分よりももっと
苦労している人だって
自分よりももっと
悲しくて泣きたい人だって
いるのだから
泣きたいことは
た ....
東の空に日が昇る早朝
工事現場の低い土山の頂に
クレーン車が一台
運転席には裸の王様が{ルビ居座=いすわ}っていた
黄色と黒の{ルビ縞々=しましま}の
柵に囲まれた小さい世界の ....
テストの開始のチャイムが鳴った
ぼくは集中して
問題に取り掛かった
気合が入る
これでぼくの進路が決まるのだ
このテストはぼくにとって
大きな闘い
ぼくは強かった
どんどんと問 ....
いつの頃からそうなのか
わからないけれど
物心がついた時から
ぼくの家には屋根がない
どうしてなのと
親に聞いたら
そういうものだと諭された
友達の家にも
遊びに行くお店にも
....
わたしが遅めの初潮を迎えたとき
母がお祝いにとお赤飯を炊いてくれた
(今の子もそんなお祝いしてもらうのかな
膨らみ始めた胸の先が痛かったりして
ちょっとだけ…おとなになった気がした
それから ....
空に連なる白い花々が
青い大河に咲き誇り
そっと揺れはじめ
新しい季節が
空から舞い降りてくる
ふうと風が吹くたびに
花はなびき
ふと手に届くのかと想う
我に返れば
その飾ら ....
おのれの呼吸が
一つの音であるということ
それは
あまりにも気づき難くて
ともすれば
日々の暮らしの意味さえも忘れてしまう
月の満ち欠けは
暦の通りに
全く正しく空に映るの ....
傲慢で欲張りな男がいた
金貸しをしているその男は
期限を延ばすことは絶対にしなかった
金が返って来なければ
代わりの品を取り上げた
女、子供の時もあった
男の借金の為に首を括った者もあった ....
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