女は秋生まれ
ハーヴェストの季節に生まれ
だから私の構成する
断捨離を行ったシンプルな
ええいや、無味乾燥ともいえる
一室に馴染まなかった
すぐにノートや
ペンシルや
化粧品の類 ....
(実況中継)妊婦にぶつかったスマホをいじくっていた中年男は、でけぇ声で邪魔なんだよと怒鳴って優先席に座った。その瞬間わたし以外の全員は一瞬にして殺意の目になった。これは戦争時の共有感覚なんだよね
....
北の湖の{ルビ畔=ほとり}に
{ルビ春楡=はるにれ}の大樹が唸るように{ルビ聳=そび}えている
その根元にきみを置いて写真を撮りたい
そそぎこむ小川には姫鱒の求愛激しく
やがて ....
京都三条大橋の側にあった
六階建の大きな旅館
非常階段の踊り場から見下ろす
起き抜けの街の静けさが好きだった
あの頃は赤のマールボロを一日半箱吸っていた
廊下の重い鉄扉が ....
みあげると
竹月だった
なぜかよるの1時に目が醒めた
昼間の
ゆきかうくるまの音が
息を止める苦しさで
かき消えてしまっている夜空の下
たまに
長距離トラックの ....
その日の午後は
いっそう高気圧が張り出し
夏の残ったしめり気より日照りが勝った
まぶしすぎる陽光と
車で海岸線を走る
反射するひるまの海
キラキラキラ
それは水面に遊ぶ星と
まばたくさ ....
爆弾に利き手を奪われ
居場所と未来を塞がれた少女は
残された反対の手で
書割に居場所と未来を描く
現実の空間には絶望が渦巻いている
今この場所に立つために
夢は叶わないから描かない
書割 ....
ゆうらゆらゆうらゆら
何だかとっても今朝の
ゆうらゆらゆうらゆら
緑葉無数無限の揺れ
無限の揺れ森の揺れ
沈黙の中で想いを語り
)ぼわっとぽすっとずんずんずん
)なにかなんだかくるく ....
Ⅰ
僕は確かに、あなたを愛しています。
──あなたはそのような歩行を、発言を、{ルビ落涙=らくるい}をしない{ルビ筈=はず}です。
僕は、一体、あなたの何を愛しているのでしょうか。
やわら ....
Tとは小学生の頃からの付き合いだ
遊びに行くとTのお母さんが出迎え
関西弁で他愛もない話しをした
いつも1時間程
その洗礼を受けなければならなかったのだ
玄関の水槽には金魚が揺れて
猫 ....
「少年よ大志を抱け」、
伸びやかに大志をまっすぐに指ししめす、
羊ケ丘の博士の指先に、
少年としての視線が搭乗する、
そこに飛来してくる、
小さな飛行機の模型のようなトンボ、
なん台も博士 ....
父が自称詩人だと
分かったとき
母は半狂乱になって
台所から包丁を取り出し
父に襲い掛かりました
母の一太刀は
自称詩人の脳天に突き刺さり
血が噴水のように噴き出ていました
私はその光 ....
Let's meet in the sky
わたし暗い海の底を眺めてると丸い石を投げたくなるの
知らせがきて、いつもの浜辺を通り過ぎた ....
走ってる
走ってるよ
ただ走るために走ってる
ああ、明日が追いついてくるよ
影が手を伸ばしてるよ
もっとはやくしなくちゃ
とまったらだめだよ
立ち上がれなくなっちゃう
足がもつれて ....
泣きたい理由でもないのに ボロボロ涙があふれてる
悲しくもないのに 悲しい何かを探してる
退屈とため息と他には何もない 静まり返った部屋の中
置き去られた子どものように うなだれて膝を抱えた ....
もう生きていけない
世の中についていけない
しんどい
と思いながら携帯ショップへ
機種変更しにいくと
若い人が丁寧に対応してくれた
おじさんまだ生きられるか
....
声をかけようとして躊躇った
鬱蒼としているその背中は
家事の音を大きく立てながら
部屋中に電気柵を張り巡らせていた
薬缶のお湯が沸騰し湯気を吹いている
まだついていない嘘のシミュレー ....
悪夢の機械工場から
ひょいと伸びた手
人の自ら造り出す
無機物機械ノ 丿
ほら、ふっと立ち上がり
命を宿し息衝き自立し
恐るべき絶対悪と為り
世の人を襲い来る時に至ると 、
....
ぼんぼりが灯る参道すれ違う人のひとりがあなたのようで
いつだって食べきることができないでもて余すのに追憶を買う
はかなさとうつくしきこと金魚釣り尾ひれ胸びれ赤い焔よ
人波をぬければ路 ....
敵であり、
味方であり、
ボクの恋人であり、
油断の出来ない女だった
彼女が欲しいのは男らしさ
弱い男なんか目じゃない
心の傷を舐めてなどくれない
辛い時に、優しくもない
だけ ....
命が惜しいと老人は若者に、我慢を強いる
生徒は学校で教師の言うことを聞けず
夏は暑いからと過度にエアコンに頼る
お金が欲しいと子供達は、YOUTUBEに顔を出し
難しいことは考えたくないと、人 ....
窓ガラスの向こうは
灰みたいな霧雨
しっとり濡れたふたり
長い沈黙はお互いを窺っている
温かい珈琲をブラックで飲み
空気が微笑んだ途端に
外の世界は滅んでゆく
ドアの鍵を掛けたその手で
....
電線伝いに溜まった雨滴の群れ、無数無数
すぅうと膨らんではぽとっと落下していく
次々と、次々とまた膨らんでは落下して
繰り返し繰り返し
ベランダのキキョウやガーベラの花々
いっせいに ....
かたてそこ
僕の廻りにはあなたがいて
それでも僕はまわり続けている と あなたに問いかけた
....
やりたいことを
やり尽くしてしまったので
今日はもう
何もやることがありません
仕方ないのでキャスをしました
すると、若い女性から
彼氏がほしいと相談されました
はっきり言って上手い答え ....
一篇の詩は極まれり 画布をまたひるがえすのみ無名のひとよ
守一の猫たちどまる秋の雨いまだ降りをる窓を眺めて
だれに口惜しき過古ありぬ ぼくら係留場の反対にゐて
....
日めくりカレンダーが
風でパラパラとめくれ
ちぎれて飛んでいく
慌てふためく私を
置き去りにして
ひっくり返すことのできない
残り時間もわからない砂時計
私が生まれると同時に
....
あなたから滲み出る匂いを嗅ぎ
やっと呼吸をすることができる
冷えたコンクリートに囲われて
息を止めたまま凍りついていた
思考回路が野生化する花の香り
ひとりでは何をするにも未熟で
あなたの ....
朝に
自らの面を
洗う
雨、
打ち付ける
アスファルト、
濡れそぼつ
銀の色に
人影 映り、
滑落する時に拍車掛け
始まる一日、
新たに 告げ
響く声
内か ....
(番外編33)あの日にかえりたい (荒井由実)
要求された曲に丁度ぴったり収まる歌詞とは人の運命の出会いの様でこうなるのか
新しいミュージックにひこうき雲、卒業写真、いちご白書をもう一度 ....
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