「きょうのあなた」
昨日は 自動販売機
今日は ミルクせんべい
毎日変わる お気に入りを
クリームパンのような手で
かかえながら
まんまるくなっ ....
細かな砂利と一緒に寄せ
滑り落ちてゆく
向こう側へ
くるぶしまで濡らしては
かえすゆらぎ
見上げれば
三角形の
それぞれの頂点が
数万年の誤差で
瞬いている
誰かに取り残されたみたいな
町に住んでいる
夏が透けると思うのは
隣人の会話が
窓の枠を伝って来るから
生活の音に混ざる方便が
静寂という石灰を溶かして
水が流れるのを聞いている
背景 ....
1時限目の授業では線分だったのに、4時限目が始まる頃には、世界に見えない向きへと広がっていった。
すぐ近くにある日々が、どんな場所より遠くに感じるとき、
とても遠くの景色が、すぐ隣にあるように思う ....
絵心なんて欠片も感じられない
相応に絵の素質なんて持ってないだろう
公衆便所の個室の壁に書かれていた
下手くそな絵の落書きは
下品で卑猥だった
作者は用をたす前に書いたのか
用をし ....
水が引いたあとは、
ほるもんばかり。
「ホルモン」屋の店前には、
泥だらえの家具だらけ。
手動式、「レジスター」だけは
以前の水害でも泥だらけになったらしい。
洗って乾 ....
図書館で君は少し死んでいる
少し死んだ体で雑誌を読み本を選ぶ
本は死んでいるから
本を欲する君も少しだけ死ぬ
僕も図書館では少し死ぬ
少し死んだ体で本を借りるとき
僕たちこんな死んだ部分で ....
巨人になって
谷を飛び越すことがある
足裏に地上の凸凹を感じながら
足首に絡む電線や
田んぼのぬかるみを楽しんだり
街を念入りに踏み潰す
そんな時、人は
わずかな寒気を感じて振り返り
....
鶏の手羽みたいな女が
高いところにずっとぶら下がっている
肌は青いペンキを塗ったように真っ青で
裸足の爪まで青紫をしている
表情は暗くて見えない
垂れた乳房の横に穴が空いていて
そこから音 ....
子供の頃は
必ず縁日に行っていた
あの賑やかの中に居たかった
高校卒業後から行っていない
君と久しぶりに行ってみよう
新しいものはないけれど
昔と変わらないけれど
新鮮に感じさせ ....
生きているのが恥ずかしい
と思っていたら
服が溶けて全裸になった
すっぽんぽんになってから
服は着ていたのだと知った
生きてる場所が底辺も底辺だ
と思っていたら
突然 ....
いやだ。いやだ。いやだ。
梅雨はいやだ。 汗がいやだ。蒸し暑いからいやだ。 鬱陶しい髪もいやだしベタつく肌もいやだ。
枕もいやだね。 ベッドもいやだ。 畳は相当いやだ。まとわり ....
夏に買った
金魚鉢は
金魚を飼うための
金魚鉢なのに、
いまではもう
青空を飼ってしまっている。
いつか知らないうちに
金魚が青空に
溶けてしまったという、
嘘みたいな嘘 ....
目が覚めて
冷凍庫をあける
「指定のレベルをクリアして下さい」
つめたい印字 マシンガン 僕のトラクター・アート
寝そべって 知らない人たち それから
視力の悪い指導者 濡れた掲示板 パ ....
聞いてあげるから言ってごらん。
ほら、黙ってしまうでしょ。
だいたいのことは、
だいたいそんな感じ。
だから、寂しいときだけ
便利に使ってくれたらありがたいんです。
できる ....
婉曲な月が浮かんでいる
高橋留美子とつげよしはるが好きで
藤原新也と東京漂流する夢をみる
彼女の方程式は誰も試さないほうがよい
ゆれうごく等記号の
ちっちゃな解決なんてほっとけばよいのだ ....
日々、やることは
じぶんのからだをととのえ
じぶんの暮らしをととのえる
それだけ
じぶんにできることを、やる
ワタシヒトリに
できることと
できないことがある
この世のアク ....
青ざめた紙面の上に文字にできない言葉は蹲って
悲惨に陰った時のこの胸の奥には言葉に出来ない思いがひしめきあったりした
似てるようで寡黙と無口は違うから
普段は陽気で雄弁な人も
時には無言を ....
星の形のいるかがいるようなところに住みたいってきみは言ってたね。そういうことを聞くたびにげぼでちゃう、と思っていた。きみが何か得体の知れないきみ特有のユーモアをもってしておそらくは希求した果てに選びと ....
テレビ電話がリアルになってしまった
あの棺のようなディスプレイに写っている
人物の言葉より
その背後のほうが多くを語っている
たとえば本棚を背に選んだわけとは…
いったいなんぼで ....
むらさきの
山と山のあいだに
真っ黄色の
満月がみえる
ようかん
栗羊羹
爪楊枝で刺して
爪は刺さないように食べて
妖怪のフリして眼鏡を
牛乳瓶の底みたいに
し ....
教室のカーテンが
誰のために揺れているのか
分からなくなる夏休み
りんご飴の陰で愛を育み
輪郭を見るたびに大人になる
それは重力に逆らう
僕の夢みたいだな
まだ柔らかいから
パジャマを ....
今日高曇りの空の下、
肉を引き摺り歩いていた
春という大切を
明るみながら覚えていく
妙に浮わついた魂を
押し留めながら、押し留めながら
離れていかないように
剥がれていかないように ....
名前が
水たまりに落ちてて
のぞくと君が宿った
空のひろい方を
私は知った
朝起きて
カーテンを開ければ
片目の右は色を失い
半分白黒
週刊少年ジャンプ55ページみたい
左から右
スズメバチが私の視界を横断する
鮮やかな黄色の体躯
右に移れば
腹の濃い黒と薄 ....
裸足で砂浜に立つと
指先が消えちゃうから
どこか遠い所へ来たみたいだ
何も掴まずに何も拒まずに
水平線の向こうでも
似たような世界が続く気がする
海にはポストがないままでも
空の声は届く ....
夫が食器を洗ってくれている音がする
それを背中で聴いているのが好きだ
時々、夫は「よーしゃ」「うぉーし(ゅ)」と言う
それは私の心を思いきり健やかに笑わせてくれる
誰かを愛するために牛乳を買った
あなたを愛するために卵を買った
砂糖が一匙分も無かった
もう買い足す元気が無かった
ソファに寝そべって映画を観ていた
開始10分で涙が出てきた
牛乳をマ ....
妻は昨日より少し細長くなって
収まる場所がまだ見つからない
その隣では去年より手足の短くなった娘が
似合わないチェックの服ではしゃいでいる
息子はといえば三日前からトランクに入った ....
爆発した車輪を
くつわむしに食べさせる
ポケットには小さな輪ゴムがあるので
わたくしはそれを頂く
合掌と共に山茶花の歌
ちくびが取れた時のまなざし
斜陽と夕暮れの木漏れ日
今あな ....
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