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僕の魂の一部が
川面を流れて行く
自信がなかったので
側にいる人に聞いたら
あなたの魂の一部です
と、確認してくれた
魂の一部はこのまま海まで流れ
小さな生物に消化や分解をされ
....
妻は昨日より少し細長くなって
収まる場所がまだ見つからない
その隣では去年より手足の短くなった娘が
似合わないチェックの服ではしゃいでいる
息子はといえば三日前からトランクに入った ....
カメラが無くなってから
鞄が手放せなくなった
窓を開けると
春の風とともに入ってくる
都市の景色
潮風のように笑うけれど
指紋はすべて失効してしまった
鞄の中を探れば手に触れ ....
鉄を歩く
乗りもの置場の跡地
人は生きる
舌の根が乾く
抱きしめられたまま
父などは逝った
公民館に隣接している朝市で
複数のものを見る
入れるものがないのに
さっきからポケ ....
水に濡れたまま
雨にうたれている
妻が傘の下からタオルをくれる
いくら拭いても
濡れタオルだけが増えていく
妻は可愛い人
こんな時でも傘には入れてくれない
濡れタオル屋でもや ....
祖父の名前をふと思い出して
口にしてみると
聞こえてくる祖父の名前がある
祖父は他界する間際まで
新鮮な毛布にくるまれ
駆けつけた親戚たちは
その周りで酒や水を飲んだ
酒も水も飲めな ....
みかんの皮を剥く
皮が出てくる
剥いたはずなのに
と思って皮を剥く
皮が出てくる
ええっと、何だろう
と思って皮をむく
皮が出てくる
落ち着け、今までのは気のせいで皮など剥いてい ....
店員さんが運んできたコップの中に
凪いだ海があった
覗き込めば魚が泳いでいるのも見える
こんなにたくさんの海は飲めそうにない
先ほどの店員さんを呼ぼうとしたけれど
彼女なら里に帰 ....
砂漠で椅子を並べている僕の耳元で
佐々木さんがささやく
卒業生たちは丁寧に会釈をしながら
前方から順序良く着席していく
人は生きているとささやきたくなる
だからいつか人は死ぬの
....
デモ隊が行進をしている
何を言っているかわからないけれど
行進している
プラカードのようなものも持っている
何て書いてあるかわからないけれど
持っている
先頭が角を曲がる
何 ....
マツモトキヨシの片隅に
僕のマツモトが売っていた
僕のマツモトのはずなのに
どこかちぐはぐで僕には馴染まなかった
僕のキヨシは売っていなかった
僕の、どころか、
普通のキヨシすら売っていな ....
ワカメは波平とフネの娘
サザエを姉に、カツオを兄に持つ
ワカメ、増える
増えるワカメちゃん
アニメのワカメは小学三年生の設定
以降、歳を取らない
永遠に歳をとらない
永遠に増えるワカ ....
電車に乗ると自宅の電気が消えた
おかしいなと思い電車を降りて電気をつける
大丈夫そうなので再び電車に乗る
今度は台所の水が止まらなくなってしまい
電車を降りる
蛇口を逆にひねると水は止まり改 ....
海の部品が落ちていた
大事な部品を落として
海は今頃
どこで凪いでいるのだろう
行方を捜すにしても
持っている地図は改訂前のものだし
海に関係する友達も
親戚ももういない
海を作っ ....
郵便受けの側に男が立っていた
誰なのか聞くと
まぼろしです、と言う
最近のまぼろしは良く出来たもんだ
そう感心しながら
差し出された朝刊の尋ね人欄を見る
今日も僕は
行方知れずら ....
人の息と
息の間で
僕は
息をした
僕の息と
人の息の間で
君は息をした
僕の息と
君の息の間に
朝はあった
毎朝
朝があった
生きていれば良いこともあるさ ....