ぼくには海がある
山がある
大地がある
宇宙がある
じぶんに都合がいいところに行けばいい
深夜
腹痛で目をさまし
あなたのなまえを呼ぶ
神のなまえ
....
光の傾斜のよわいめまい
に
いななきも止んだ朝の膨らみ
秋は秋と重なって遠近を失くしながら
凧のように {ルビ空=くう}の{ルビ空=くう} 淡く燃え
無限の、 矛盾の、
存在の、 ....
西日の射す部屋で
裾に黒い炭を付けたレースカーテン
輝きながら汚されていくことを思う
私は寂しい
ベッドの位置から進むことも退くこともできず
手のひらに収まる程の空気の厚みにす ....
わたしはよく
遺書をしたためる
これから冬がきて
息凍るころ
体もしゃりしゃり
うごかなくなる
お布団に張り付く日々
いただいてばかりでいきていると
屋根つきぬけて
そらにか ....
眼を伏せて共犯者の名前を心に浮かべながら
水中にもぐる。
割れてしまった男の肖像画
同じ個所で歩き遅れた娘の写真に
結像さそうと試みるけれど
血液状に固まりを始めた無意味な水の
流れに ....
円錐形の反射が
カーテンの隙間から潜り込む
あれは外灯だろうか
あまりにも揺れていて
息づいているようだ
南に居る嵐のせいで
むせかえる夜中だ
はりついたシャツを ....
お月様が燃えている
先端を齧った苺から
液体が滴るように
金魚の尾鰭がゆらりと
鉢の中で弧を描く
血を垂れ流しているかのように
サクランボウに鷹の爪
カーネーションに
情熱 ....
見つめていた風が
いつのまにか
ぼく の頬に触れた
やがて
このまま 真っ直ぐ 下にある谷に
ぼく は抱かれるだろう
巨きな魚が蝶を呑むように
腹の中に
ぼく は消えてい ....
秋の花火/湿気る前に
秋の花火/湿気る前に
引き出しに入っていた
夏に使い切れなかった花火
力を持て余してるのに
発散する場所を知らない若者のように
袋の隅で数 ....
帰る人帰らぬ人と秋の夕
季節は構成されるものではなく
分析されるもの
世界中のすべてを持ち寄っても
季節を作り出すことはできない
ただ季節は解剖され
一人一人に細かく感知され
小さく分析されていくのみ
....
満ちながら欠けていく
あなたとわたし
いちたすいちは
この場合 いくつになるのですか
白と黒は
いつか交わり
違う色に生まれ変わる
ねえ
わ ....
二人の天使が私のために降りてくる、あの星空の彼方から。
一人は私を引き上げ、一人はそれを支えた。
感情の渦を通り抜け、感性の輪を広げ、創造の平野を飛び立った。
それを逃避だと誰が言 ....
寂しいから寂しくないふりを
しているなんてお見通しなの
寂しくないならどうして
そんな限界集落の無人駅に
会いに来ないかなんて言うのよ
あなたの孤独を映し出す
鏡のように澄んだ湖はもう ....
鉄の孑孑が
陽に吸い付く
山羊は飾られ 剥かれ
刎ねられる
空の管が鳴り
青は黙る
三方向に拡がる風景
外のちから 滴の影
淵の淵から
雨が掘り起 ....
青い看板に白い文字で
ビジネス
カジュアル
フォーマル
朝のだだっ広い駐車場
少しくすんだ 慎みの季節が
春に巣立った雛たちの 瞳にも
映って
....
庭に穴が開いた
直径五メートルほどの大きな穴だ
思いのほか深く底が見えない
家人は怖がって埋めたがるけれど
まあ待て、何かに使えるかもしれない
主人はそれを制止する
試しにいらないものを
....
誰も知らない海でした、(けしてあなたのほかには)
舟は出てゆく
夏の入り江、あなたの瞳の奥を
白い鳥は羽根を休めることなく
空にすべる手紙
返事はいらない、ただひとこ ....
もうなんども終わりにしようとしたことをはじめてしまうことは
波ににている 世界は波ににている
井戸の滑車がいつまでも回っているのに桶はとどかない夜の野原に咲く野薔薇に憩う虫の触覚がかんじる銀の ....
私はあしが遅いから
全力では走らない
前にだれもいない風景なんて知らない
だれもいなくなった風景なら知ってる
応援してくれる人はいないけど
なんにも言わない木や草花や
撫ぜていって ....
そうしてお腹を空かせては
仏の唇を食み、人の指を食らう
曼珠沙華咲く薄暮の川岸
醜い心をさらしては
とりとめもなく涙し
あてどもなく歩く
雲は燃えつきて微かな煙へ
吹かれゆく先の名残 ....
もしも真夜中がこれ以上長かったら
私は姿を変えて
あの街の塀の陰へ急ぐだろう
深海の鯨の死骸のような、
黒塗りの木のそばで、
優しい月を見つめ、
静かな排気のバイクで、
蛍光する速度制限 ....
私たちは望んだ
林檎の木のやせた小さな実を
うなだれて実をこぼす廃れた窓辺を
細い水のはねる汚れた低い蛇口を
あの庭から私たちは始まった
私たちは紫の実をつける香りのよい果物を欲しがった ....
銃身の鈍重さを仮装しながら
銃弾のようにすばやく生きるのだ
この秋の穏やかな一日は
最大限の速度で組み替えられていくから
この君の静止した生活も
信じがたい高速で雑踏に埋没していくから
....
どうしても選べないみどりいろの服着ている彼女どこか優って
雨の夜あしたを想う想い過ぎまたキッチンで珈琲点てる
部屋のなかまで連れてきてる自転車は世界で一つの自転車だから
....
うずくまっているので
その傍らに スミレの苗を置いた
少女は驚いたようにも
気づかないようにも
自在に
苗を抱きしめて帰っていった 夢のなかへ
赤い目をしていま
なにを読み
どこを跳ねるのか
あなたは謀った
{ルビ和邇=ワニ}たちの背を戯れ跳ねながら
目指すところへ近づいた時(それは幻想だった)
傲りと嘲りが
鈴のように ....
どぅわし、知てますか?
鼻毛を伸ばしたままのブラジルさんが尋ねてきた
どぅわしです
どぅわし?
瞬時に日本語検索を脳内で追いかけると前頭葉あたりがホカホカしてきたので
帽子を ....
まるで時が止まったようだ
少し酔っぱらって空を眺めている
今夜も雨模様・・・
私は何を求めているのか
何を求めていたのか
憧れを追い続け
何時かは理想に ....
雨のおとが体に刺さって下に抜けて行く
その先のまちで
男が酒を飲んで煙草を吸い
女が風呂に入り石鹸の香りを嗅ぐ
花は季節に散る
どうということもない
あたたかな食卓が
どれだけに ....
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