メノウのような波
渚にかききえる泡たち
たゆたっているのだ

だきとめたかった
欠けてしまったからだを
小さく、小さく、まるめて

原石の真珠
秘められたままでいい
このまま眠るか ....
彼女はピアノの歩調
酔ったように濡れながら
街角を幾つも曲り公園の
裸婦像の前

肉と骨の鳥籠に
冷たい火ひとつ
切りつけるナイフではなく
やわらかな雨

胸のジッパーを下ろす
 ....
真珠はだれに殺された
孫娘に殺された。

 (はないちもんめ あの子が欲しい)

孫娘は泣いている
おうちに帰りたいと
泣いている
真珠の背中のぬくもりが
帰るおうちよ
ほたほた落 ....
 花瓶の近くに置かれた姉の唇が燃えてゐる。

 うす紫色の炎が小さく上がつてゐて、読んでゐる文庫本に今にも火が移りさうだ。

 目を細めて見ると、表紙に「菜穂子」と書かれてゐた。
 ....
雨は解かれる時間
こどもたちの声の重なり
散る 花のモザイク
煙は祈り 空は響かず
水は光を乗せて黒く笑う
蛇のように去る なめらかに


井戸に落ちた人
井戸が歩いている枯渇した
 ....
 低気圧が近付いてゐる午後。

 少年が鉛筆を削つてゐる。

 室内に、新しい芯の匂ひが満ちる。

 「隆、下りてらつしやい」

 と、羊羹を切り終へた母の声が階下から聞こ ....
{引用=(*筆者より――筆者が本フォーラムでの以前のアカウントで投稿した作品はかなりの数になるが、アカウントの抹消に伴ひそれら作品も消去された。細かく言ふと二〇一五年十二月から二〇一七年二月までの間に .... 夏をひとつぶ紙袋
開いた黒目も傷つけず
眠りの汀を照らすように
灰にならない書置きの
名前も知らない泥の中
前世と呼び馴らせば遠くて近い
五色の風の靡く音に
言葉転げて追っては失くし
 ....
 詩は生きるために必要なものではない。

 例えば貧しく混乱した世の中では人々は生きていくことに必死で、詩どころではない。豊かで平和な世の中になると今度はしなくてはならないことが多すぎて、やはり詩 ....
{引用=(*筆者より――筆者が本フォーラムでの以前のアカウントで投稿した作品はかなりの数になるが、アカウントの抹消に伴ひそれら作品も消去された。細かく言ふと二〇一五年十二月から二〇一七年二月までの間に .... 近所の曲がり角
夜の雨に濡れて煉瓦と
あたたかく帰る人を待つ街灯の
そのひかりが
煉瓦を光らせていたのは冬のことだったか
春がもう きている
梅の花びらがあたたかな煉瓦の上に
白く舞って ....
{引用=*筆者より―― 旧稿を見返してゐて、本フォーラムに掲載してゐなかつた作品があることに気付いた。以前のアカウントを消して以降、復帰するまでの間にかいたものは随時掲載していた積りだつたがどういふわ .... 最近ヤモリは現れなくなった
夜のはめ殺しの天窓に映させている
流線形のシルエットが好きだった
イモリだったかもしれない
それとも風に導かれて降り立った
小さな神様だったのかもしれない
便宜 ....
「モラトリアム」

貝殻の中で

海の響きに耳を澄ませていた

澱んだ温かさの中で

海の響きは一筋の救いのよう

澱んだ温かさの中で

貝殻の砕ける日を待っていた
 ....
失うことここで
そう喪失を得て
3と7の鬩ぎ合い昼と夜の
揺らめく結び目シルクのワルツに不規則な鞭を入れる
朝顔たちの禁欲の裂け目から
積み重ねた箱の中の比喩は脚の多い生き物がマネキンの
 ....
誰もがそれとわかるように
名前をつけてみましょうか

花と名前をつけます
蜂と名前をつけます
光と名前をつけます

だけれど君がそれを指さすとき
花と戯れる蜂や蜂と戯れる花を
輝かせ ....
この花は永劫の畔にゆれている。
あまたのうつろいをながめ
蕾という名の一輪となって。

風よりもとうめいなあなたの声が、
水面をやわくなでている。
どことも知れずに吹いてきては。

 ....
夢の中となりに座ったあなたと話すことが出来なかった
夢でもいいから会いたいと願ったあなたがすぐ横にいて
あなたはもはやあなたではなくわたしの心の影法師なのに
あなたを知りあなたの心を慮ることで虚 ....
雪のふりつもる音を
私の耳はとらえているのだろうか

青い夕暮れに白い雪ぱらぱらふるふるもっとふれふれ
夜 雪は少しの光を乱反射してほのかに明るく
しずかに しずかになっていくけれど

 ....
左側の
下から二本目には
幼い過ちが
絡みついている

右側の
上から四本目には
小狡い鳥が
棲みついている

左側の
上から三本目に
温かい実を
結びつけてくれた人
 ....
{引用=(*筆者より―― 昨年暮れ辺りに自分のかくものがひどく拙くなつてゐることに気付き暫く充電することに決めた。その拙さ加減は今回の投稿作をご覧になる諸兄の明察に委ねたいが、ともあれかいてしまつたも .... りんごを
横にスライスしていくと
星の形が現れた
こんなところに
ひっそりと
神様がいたことを
初めて知った
冬の日

湯気みたいな嬉しさを
胸であたためて
いっとき
死を忘れ ....
美しい本と空と地面があった
あるいてあるいて
夜空や
咲いている花を
吸い込んでいくと かさかさになったこころが
嬉しがっているのを 感じた
雨の日には 本を読んだ
子どもらのあそぶ
 ....
わたしの椅子に
誰かが座っていたから
夜の浜辺に座っている

冬の日本海が
風邪をひいたように
ぐずっているから

ハーモニカを吹いてやる
いつまでも吹いてやる

なぜなぜ泣くの ....
いとしいといわない
愛しさ
さみしいといわない
寂しさ

祖母と行く畦道
ふゆたんぽぽを摘みながら

手は
手とつながれる

枯れ野には
命の気配がして

墓所には
命だ ....
 

群れを離れたコヨーテなら
後足の
仕留め損ねた獲物に嚙まれ
血を流し続ける傷など舐めるな

私はお前の獲物ではない
まして谷底の
河原の土に掘られた巣穴に
敷かれた生暖かい毛 ....
晴れた港の
防波堤を歩いた

コンクリートのひび割れから
小さな花は灯る
テトラポットは
夜ごと
組み替えられている
それらが
いつか砂粒になるまで
続いていくとしても
さかなの ....
久しぶりに近くの森林公園へ家族みんなで出かけた
元競馬場であった公園は楕円形で木々に囲まれ
その中は芝生が一面に覆っている

車椅子を出し細い女性を乗せ
二才の息子を負ぶって歩き始めた ....
「あかちゃん 一」
あかちゃん
春先の木の芽だよ
さくらの けやきの えださきの
まあるくって これから
うん っと ひらこう

「あかちゃん 二」
ひかりのあかるい
つめたなひるの ....
一月一日、お正月。軒さきを小さな人がとほつた。

岬の根元にある町の上に、夏の海のやうな空がひろがつてゐる。

中学校の音楽室で、若い先生がバッハのオルガン曲をひいてゐる。
春には結婚す ....
白島真さんのおすすめリスト(1354)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
真珠- 新染因循自由詩6*19-4-7
窓辺の思考- ただのみ ...自由詩6*19-4-7
花真珠のくびかざり- 田中修子自由詩1219-4-3
菜穂子- 石村自由詩19*19-4-3
潤むモザイク- ただのみ ...自由詩9*19-3-31
室内- 石村自由詩21+*19-3-24
旧作アーカイブ2(二〇一六年一月)- 石村自由詩13*19-3-18
壁画- ただのみ ...自由詩5*19-3-17
なぜ詩を書くのか- 石村散文(批評 ...14*19-3-15
旧作アーカイブ1(二〇一五年十二月)- 石村自由詩14*19-3-11
人でなし- 田中修子自由詩519-3-6
最終電車- 石村自由詩19*19-3-5
ヤモリ- そらの珊 ...自由詩1219-2-28
思い出- 田中修子自由詩619-2-18
貧者の踊り- ただのみ ...自由詩4*19-2-17
沈黙のなかで- 帆場蔵人自由詩18*19-2-14
永劫の蕾- 新染因循自由詩13*19-2-14
あなたの夢をはじめて見た- ただのみ ...自由詩16*19-2-11
言雪<ことゆき>- 田中修子自由詩1419-2-9
肋骨- nonya自由詩17*19-2-9
秘法(第一巻)ほか九篇- 石村自由詩18*19-2-1
りんごの神様- そらの珊 ...自由詩13*19-1-25
置手紙- 田中修子自由詩1719-1-21
行き場のない夜に- 帆場蔵人自由詩419-1-21
小さな散歩- そらの珊 ...自由詩2019-1-18
憧憬- Lucy自由詩13*19-1-15
冬のパズル- そらの珊 ...自由詩17*19-1-7
森林公園- 羽根自由詩15*19-1-6
春さんやあ- 田中修子自由詩619-1-5
一月一日のバッハ(再掲)- 石村自由詩18*19-1-2

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