すべてのおすすめ
扉のそとの明るい闇に
つっかけ一つで飛び出すと
石焼きいも屋さんがいた
おいちゃん、わたし千円持ってる
三つあげよう 特に美味しいのを選ぶからね
家には人間は一人しか待っていなかったけれ ....
まだまだ先のことのように感じているひともいるかもしれません
けれども冬はどんどん泣き虫になっていきますよ
この日が終わればこの日はもう過去
次は海での陽の出でしょうか
あるいはお祭りのような喧 ....
心はどこにあるのだろう
心は海にあるのだろう
今朝の静かな{ルビ潮=うしお}には
わたしが隠れているのだろう
そこでは無数のお魚が
シャンパン色の夢みてる
そこでは一人の{ルビ ....
そこにこどもの姿はなく
おとなたちだけが殉ずるかのように
黄葉のかがやきが干からびた胎児の如く打ち捨てられる頃
までの林檎飴の祭りはいつも 日没をしる港にて
時雨れるまでは兆しのない福音 ....
あなたがさやかな{ルビ詩=うた}をというなら
二歳の心にリボンを掛けて
あなたがかなしみをと望むのなら
わたしは{ルビ現在=いま}を隠さない
あなたが絶望のかたちをと、
それならわた ....
しなくちゃいけないことを
「ぼんやりと思う」の引き出しにしまってく
そして冷蔵庫から夢を取り出して有難くいただく 美味い。
これだから夢はやめられない、と遠くをみながら
眠り羊のラムネをさ ....
わたし何も見えなくなればいいのに
聞こえなくなればいいのに
云えなくなればいいのに
感じなくなるのが一等いい(たとえば空腹)
そんなことばかりを考える鴉は
鴉のなかでも異端で
おんなじ黒い ....
なぜこんな……
そう鳴いて(とても驚いて)
どこかの彼方に隠れに行った鴉が一羽
鏡過ぎるガラスの前でつい美味いもんみつけて
さてしあわせいっぱいで首を伸ばしたら
真っ黒で歪なこれが自分なのか ....
チャルメラが聴こえたので
最後の千円札を掴んで飛び出した
台の上にロー引きの小袋がたくさん並んでいる
一つ、と云うと
千円。
と小母さんは応じる
く、っと差し出したら
三つくれた
泣き ....
花野の無垢なそよぎに打たれ
綴じることができなかった
ごめんね雪が降ってきた
埋もれてゆくよつめたさに
みえなくなってほんとは
それは隠したかったかなしみ
信じ続けたい透明な愚か わたしの ....
夕陽は語ってくれる
今日の抒情を余すところなく
そっとほがらかに やがてしんみりと
燃えながら終わりながらやがてほんとに 死ぬ まで
自らの何すらを惜しむこともなくて
この町の誰に向 ....
夕陽はきっと溶けるように
水平線に抱擁されて 海の底
人魚の里で明日を孕むのだと思う
そこでは どんな哲学をさかのぼっても
たどり着けないとわをしる風が
淡水の泉を可愛がっている
つぎつぎ ....
約束の泉には夜明けに着いた
けれど女神の姿どころか風一つなく
さざなみも ない
すでにくちゃくちゃの手紙をポケットから引っ張り出し 確かめる
と ふいにどこかで少女の声が云った
「金の毒と銀 ....
どうしても選べないみどりいろの服着ている彼女どこか優って
雨の夜あしたを想う想い過ぎまたキッチンで珈琲点てる
部屋のなかまで連れてきてる自転車は世界で一つの自転車だから
....
うずくまっているので
その傍らに スミレの苗を置いた
少女は驚いたようにも
気づかないようにも
自在に
苗を抱きしめて帰っていった 夢のなかへ