けれども雲はいつも太陽を仰いでいる
暗雲だから項垂れて地を見下ろしているとは思うな
幸福を見つけた者が全てを置き去りにするように
地のことなど顧みはしない
どれだけ雨が降ろうが雪が積もろうが
 ....
夕陽を抱いた木々の裸は細く炭化して
鳥籠の心臓を想わせるゆっくりと
いくつもの白い死を積み冬は誰を眠らせたのか
追って追われる季節の加速する瞬きの中
ゆっくりと確かになって往く単純なカラクリに ....
聖書をよく焚いてから飴玉を投げ上げてください。
反転します。


 落下しない
 林檎
 蜜柑
 それから
 檸檬。


安物です、この宇宙は。

{引用=( ....
年末年始の休みは若い二人にとって
一緒にいるだけで十分だった

ただ大晦日の大掃除の時は派手な喧嘩もしたが
弾ける二人に年越し蕎麦なんて関係もなく
ましてはおせち料理なんて気にもしな ....
寄せては返す波に
少しずつ後ずさりする

わたしたちは些細な願望や欲望を叶えて
どうにか生きながらえているね、平成

何か言い訳をしたくて仕方ないだけなら、
たとえば、あの鐘を撞いてみれ ....
古物が集積された
墓場のようなビルの前
フェンスにもたれて
剥げた手足を
褪せた顔を
晒しながら
途方に
暮れて
きみは空を斜めに
見つめている

いつか駅にいたきみ
もうなに ....
朝露のかがやく
翠陰にいこう
ぼく

そよ風のかおる
草原にもゆる
あす

目にうつる
景色は


蒸発のない
刹那は
老人はおまえに
ものを
放りこむ
赤々とした
その口へ

おまえの頭上で鍋が笑っている
数限りない夕餉の匂いがおまえに
染み付いている、また酒の芳しい香りと
血の流れと涙は静かに漂っ ....
おとぎ話の中の国は もう
わたしのことをおぼえてゐません

キセルをくはへたお爺さんは もう
わたしのことをおぼえてゐません

アコーディオンをかかへた青年と
まきばで働 ....
くらい 翼をひろげて
古い調べから とほく紡がれ
凍てついた 水を恋ふ
しづかな もの

ひとの姿を 失つた日
ひとの心を おそれた日
雪を待つ 地へと降り立ち
ひそや ....
真夜中に広い低気圧が去り
黒雲は静かに消えていく
雨で成長した植物は何も答えることはない

太平洋に発生する温暖な高気圧は
ゆっくりと白雲と共に動き出し
隠れていた生物を無言で白 ....
暮れて行く秋
まつすぐな道
銀杏の葉のそよぎ

感じてごらん
たつた今うしなはれた
いくつもの命の分だけ
透けて行く風を

たつた今うまれた
いくつもの命の分だけ
 ....
手紙がある

うす桃いろの
手ざはりのよい 小ぶりな封筒の
崩した文字の宛て名も品が良い
封を切つて なかを開けるに忍びなく
窓際の丸テーブルに置かれてゐる

さて 何がか ....
「黄色い傘」

きいろい傘が咲いていて
わたしのうえに 屋根になっている

かさついた
この指は
皿を洗い刺繍をし文字を打ち

自由になりたくて
書いていたはずの文字に
とらわれ ....
右の頬を叩かれ
左の頬も叩かれ
まったく叩かれてばかりだ
女に叩かれ振られ
男に目つきが悪いと叩かれ
ふらふらして肩がぶつかり叩かれ
まったく叩かれてばかりの人生だが
ぼくだって毎日地球 ....
波の跡が
空に残って
だけど
いつのまにか風が消していく
秋の雲はことさら
はかなげで
明日にはもう
冬のものになってしまうだろう

空は
海のなれのはて

今はもう絶滅した海 ....
埋もれた一粒の麦のことを
考えている

踏み固められた大地から
顔も出せず
根をはることもなく
暗澹とした深い眠りのなかで
郷愁の念を抱いているのか
夏天に輝く手を伸ばし
希望の歌が ....
  けだもの


ひとの声がする

空がなく
土もない
紙の色の月がうすく照らす
このわづかな世界に

やさしく
神々しく
いつくしみ深く
ひとの声がする

《祈りなさい ....
ほら、わたしの胸のまん中に光をすいこむような闇があいていて、
そのうちがわに、花が咲いているでしょう。

ときたま目ぇつむってかおりに訊くんだ、
ああ、この花がうつくしく咲いているのはね
わ ....
   羽


 とんぼが旗竿の先にとまつてゐる。

 セルロイドのやうな羽の一枚が、半分切れてゐる。

 緑の縞の入つた黒い胴を一定のリズムで上下させ、三枚半の羽を震はせながら、とんぼは ....
死ぬ時は死ぬ時の
風が吹くのではないですか
内側の草むらが騒ぎ
いくつかの虫が飛び上がるのでしょうか
あれは何? 毛布?
黒い毛布を吊るしてカーテンにしてください
瞼の上から光が眩しすぎる ....
遠い声を聞いた 海の底のようなはるかな声だ
耳に残る 今はおぼろげな記憶のようだと
貝殻の奥にある秘密の旋律のようだと


遠い道を歩いて抱いてしまった憧れに逢いに行く
人々が集って来る  ....
見たところ肝臓のようだ。中学校の階段の踊り場の高窓から差し込む夕日に照らされて、赤黒い肉塊が落ちている。まるで今しがた体内から摘出したばかりとでもいうようにてらてらと艶めかしい輝きを放って、よく見れば ....  よく晴れた十月の午前
 山の上の一軒家にひとりで住んでゐる松倉さと子さんのところに
 郵便局員がたずねてきた。

「ごめんください、お届けものです」
「あら、何でせう」
「どうぞ ....
愛しく思う感情に
唯一の心を込めて


知らない色が付いたように錆び始めた指輪のこと

あなたは気づいてる?


夏と冬が交互に戯れているような日々
手を繋いでる暇なんてなかっ ....
  或る秋


切り取られた空が

造り酒屋の軒先にひつかかつて

はたはた ゆれてゐる

おかつぱの姉さんと

坊主頭の弟が

口をまんまるにして

それを見つ ....
  お月見


少女は青い服を着て

ひと晩ぢゆう恋文をかかずにゐた

姉さんの形見のコーヒーカツプに

月をうかべて


{引用=(二〇一八年九月二十五日)}

 ....
いつぽんの川がながれてゐる。

川べりの道は夏枯れた草に覆はれてゐる。

川はゆつたりと蛇行して その先はうつすらと 野のはてにきえ

太古の記憶へとつづいてゐる と村びとたち ....
わたしのみていた きれいなそらを だれもがみていたわけではない と
おしえてくれた ひと がいる

お金もなく居場所もなくからだ しかなく
ゆびさきはかじかんでいて いつもうまれてしまったこと ....
誰が私に声をかけなかつたのかわからない。

葱の花がしらじらとした土の上でゆれてゐる。

その下に妹の骨がうめられてゐる。

捨ててしまはなくてはならない。


丘をこえて夜 ....
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きれいなそらの_かげ- 田中修子自由詩1218-9-13
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