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その鍋に火を入れよ
その朝を始めよ
倦怠は凛凛と暁の空を巡り
焦燥は烈々と白髪を靡かせる
緩い歯茎は寒冷なる蒼天の下
せわしくその切れ端を鳴らし
火を抱える膝頭は既に下る階段を
斜め ....
また一枚
ふるさとから剥がれ
影のように
うっすら電車に乗る
私たちから
離れて行って
やがて
立ち止まる
立ち止まる
点々とする縁石の上で
淡い硝子戸の
上がり口の前で ....
雪
のけぞる
空
雪 降りまして
全天 ががが
震えます
ががが
滑らかに
雪 行くときの
滑りゆく雪
卑屈な川
雪 舞い
目頭が
あ ききき
痛む
....
わたしが眠れないとき
眠れないことを
わたしは
よく噛んでいる
わたしが眠れないとき
曲がった中指の先の届く距離に
耳の史蹟を
置く
わたしが眠れないとき
花花が群青色の香り ....
庭の柴木の陰に
たくさんの夜がこぼれていた
薄い産毛の生えたまだ若い夜から
硬く曲がった血と血の夜から
とりどりの夜が
折れて重なる か細い枝の隙間に
埋まっていた
空の低いとこ ....
雪の無人駅
雪を掃く係りのものが雪を掃く
何でもないコンクリートの踏み板の上を掃くものがある
待合室の歌謡ショーのポスターからさびしさのしたたり
掃き残した埃と雪の混じった少し硬いものをさらに ....
雨降りの停車場を訪ねる
あなたを
鈍く光る雨降りの停車場
仰向けの自転車
あなたの指先の雨だれ
写真のように話しかけてください
雨降りの停車場
の人影
遠くから遠くを
ポケッ ....
私たちは望んだ
林檎の木のやせた小さな実を
うなだれて実をこぼす廃れた窓辺を
細い水のはねる汚れた低い蛇口を
あの庭から私たちは始まった
私たちは紫の実をつける香りのよい果物を欲しがった ....
この窓から
杉の梢の 老いた枝が何本も
風で揺れているのを見た
生きてるみたいだった いつも
枝の間を透かして
鈍く光る雲と 色あせた青空が
微塵になっていた
昨日がまた昨日みたいだ ....
わたしたちは小さな生き物です
(小さな生き物)
どの程度かというと
気にさわるほどの
空き缶の下 おっと
踏まないように ちょっと
たたらを踏む
あなたのつま先にさしさわるほどの
....